メタバースの仮想空間と拡張現実で利用できるモノとカネの交換を実現するのがWeb3(NFT、暗号資産)だという、メタバースとWeb3の連続した関係を解説している本です。
メタバースやデジタルツインのビジネスモデルに主に興味関心があり、さらにWeb3のトークンエコノミーや技術も学んでみたい人に一読をおすすめします。
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介します。
本の概要
書誌情報
著者紹介
長橋 賢吾(ながはし・けんご)
フューチャーブリッジパートナーズ株式会社 代表取締役。
経営の視点から、企業戦略の策定、経営管理、IR支援、M&A、資金調達を実施する。野原ホールディングス株式会社取締役グループCFO、ジオコード株式会社社外取締役、ネットスターズ株式会社社外取締役。(著者紹介より一部引用)
著者が伝えたいこと
著者はこの本を通じて伝えたいことを以下のように述べています。
「本書のテーマは、メタバースとWeb3です。最近話題になっているメタバースといえばVRのような仮想空間と、一見してWeb3とは関係がないように思われるかもしれませんが、実は密接な関係があります。その関係を一言で表せば、『連続性』です。」
「この『連続性』の最初の一歩は、メタバースです。メタバースはVR(バーチャルリアリティ:仮想空間)のサービスを提供します。(中略)どんな仮想空間でも利用できるモノとカネの交換、これを実現する世界がWeb3であり、その要素としてのNFT(非代替性トークン)、暗号資産です。」
「本書の狙いは、こうしたメタバースそしてWeb3の『連続性』を解きほぐすことです。」
本の目次
本の目次を引用して紹介します。
- はじめに
- 第1章 メタバース・Web3とは何か?
- 第2章 メタバースのプレイヤー ーメタとエヌビディア
- 第3章 メタバースのビジネスモデル
- 第4章 NFTとWeb3
- 第5章 世界のWeb3企業
- 第6章 日本企業に向けたメタバース・Web3活用 ー5つの提言
- おわりに
もっとくわしく見たい場合は記事の最後に、本の目次(詳細版)があります。
注目点
この本にはどのようなことが書かれているのかについて、注目した点を3つ紹介します。
メタはリアリティラボ事業を収益化できるか?
1つ目に注目した点は、「第2章 メタバースのプレーヤー メタとエヌビディア」に書かれている「メタはリアリティラボ事業を収益化できるか?」です。
著者は、メタバースプラットフォームの成功は、ヒト、モノ、カネのエコシステムを構築できるかであるとし、フェイスブックとホライゾンの比較を以下の表のように示しています。
要素 | テーマ | フェイスブック | ホライズン |
ヒト | ユーザの拡大 | いいね!、シェアによる口コミ、ネットワーク効果 | Meta Quest2によるVR体験、コミュニケーション |
モノ | デジタルコンテンツの流通 | ユーザの興味あるコンテンツの表示 | Oculus QuestストアによるVRゲーム、アプリ |
カネ | マネタイズ手段 | ターゲットユーザへの広告出稿、成約 | コンテンツ流通手数料、将来的にはNFTも視野 |
著者は、ホライズンのマネタイズについて以下のように述べています。
ホライゾンでのユーザ数の拡大、さらには、使えば使うほど利便性が上がるといったネットワーク効果が働くようになれば、コンテンツの流通、マネタイズ手段も大きく発展するでしょう。(中略)
ただ、前述のように現状30万人というユーザ数では、コンテンツ流通、マネタイズ手段も限定的であり、まずはどこまでユーザ数を増やすか、これがホライズンの課題と言えるでしょう。
長橋賢吾(2022)図解入門ビジネス 最新 Web3とメタバースがよ~くわかる本. P.58
OpenSeaにみるNFTの課題
2つ目に注目した点は「第4章 NFTとWeb3」に書かれている「OpenSeaにみるNFTの課題」です。
著者は、NFTマーケットプレイスOpenSeaの代表的なNFTであるBored Ape Yacht Club(BAYC:ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)を例にあげ、PAYC(パンキーエイプヨットクラブ)といったキャラクターが左向きである以外、顔、帽子、服などがそっくりなNFTがミント・販売されるといった、剽窃(ひょうせつ:他人の成果物を無断で取り込むこと)が課題である、と述べています。
著者は、このようなマネ・剽窃を取り締まりながらも、自由にデジタルコンテンツをミント・販売・購入できる環境を提供できるかが、OpenSeaに問われている大きな課題であると述べ、課題解決のアプローチを以下のように述べています。
この課題解決の一つのアプローチはAI(人工知能)の活用でしょう。AIの特徴は学習にあります。たとえば、正当なNFTであるBAYCのパターンを学習して、孔子た画像を本物として学習します。そして、剽窃であるPAYC、PHAYCがアップロードされたら、偽物と判断する方法です。
長橋賢吾(2022)図解入門ビジネス 最新 Web3とメタバースがよ~くわかる本. P.142
アバターを自動作成するレディプレイヤーミー
3つ目に注目した点は「第5章 世界のWeb3企業」に書かれている「アバターを自動作成するレディプレーヤーミー」です。
著者は、写真からアバターを作成するサービスであるReadyPlayerMeは、単純なサービスではあるが、今後のNFTの展開を見据えた事業の発展が見込まれる、と述べています。
レディプレイヤーミーは、ウェブサイトにアクセスして、カメラを起動し写真を撮ると、その写真をもとにアバターが自動作成され、肌の色、目、髪、服などを選択して、アバターを完成させることができるようです。
作成したアバターは、他のメタバースサービスへのアバター利用や、3Dモデリングファイルにダウンロードして他のサービスで利用することもできるようです。
著者は、レディプレイヤーミーのビジネスモデルについて以下のように述べています。
そのポイントは、パートナー戦略です。レディプレイヤーミーならびにその開発運営会社であるエストニア企業Wolf3D社は、2014年から3Dスキャン・プリンターの技術開発を手掛けてきました。(中略)
レディプレイヤーミーではこのアバター作成技術をSDK(Software Development Kit、ソフトウェア開発キット)をパートナーに提供、テンセント、HCLといった大手のパートナーからは収益を得ています。
長橋賢吾(2022)図解入門ビジネス 最新 Web3とメタバースがよ~くわかる本. P.157
感想・口コミ・書評記事
感想
この本のタイトルは「Web3とメタバースがよ〜くわかる本」であるが、読んでみるとメタバースがメインでWeb3がサブの内容だったので、どちらかと言えば「メタバースとWeb3がよ〜くわかる本」の方がタイトルとして適切かな、と感じた。
著者は執筆の経緯についてWebサイトに記事を投稿しており、メタバースのビジネスモデルであるヒト・モノ・カネに着目している中で、Web3のトークンエコノミーがカネの部分のブレイクスルーになることに気づいたという趣旨のことを述べていて、この本の内容を振り返ってみて著者の考えが理解できた。
表紙のデザインとタイトルだけ見ると初級者向けと感じていたが、実際に読んでみると中級者以上向けの内容だったので、購入を検討している人は、購入する前に目次の詳細を見て判断するか、書店で実物を見てから購入を判断した方が良いと思う。
メタバースのビジネスモデルは、B2CのメタバースプラットフォームとB2Bのデジタルツインプラットフォームの2つがあるとして、デジタルツインプラットフォームについてエヌビディア社の戦略である「オムニバース」について解説している内容は初めて知ったので興味深かった。
メタ・プラットフォーム、エヌビディア、ロブロックス、ユニティ、サンドボックス、ディセントラランド、コンセンシス、アクシー・インフィニティといった多くのメタバースやWeb3企業のビジネスモデルについて、図表や数字を使って解説されていて、他の本にはない内容だったので参考になった。
世界のWeb3企業として「セカンドレイヤーを実現するポリゴン(Polygon)について、Plasma(プラズマ)という技術やMap Reduce(マップ・リデュース)による並列処理といったことが詳しく解説されていることも、他の本では記述されていなかったので参考になった。
メタバースやデジタルツインのビジネスモデルに主に興味関心があり、さらにWeb3のトークンエコノミーや技術も学んでみたい人におすすめする本です。
口コミ
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書評記事
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参考文献
この本の参考文献や関連する本を紹介します。
バーチャルリアリティ入門:舘 すすむ(著)
「第1章 メタバース・Web3とは何か?」の「02 メタバースプラットフォームとデジタルツインとは?」の中で、「仮想現実(VR)においては、VRを実現する3要素、3次元空間、実時間相互作用、自己投射の3つを満たすことが必要であることが指摘されている」と引用しています。
Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」:亀井 聡彦, 鈴木 雄大, 赤澤 直樹(著)
Web3というインターネットの転換点と、その背景にあるDAOという新しいコミュニティについて、概要・本質・哲学を、インターネットの歴史を振り返りながら解説している本です。
この本の注目点や感想、本の目次などをブログ記事で紹介しています。
世界2.0 メタバースの歩き方と創り方:佐藤航陽(著)
この本の注目点や感想、本の目次などをブログ記事で紹介しています。
Web3がわかる本おすすめ
メタバースがわかる本おすすめ
まとめ
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介しました。
メタバースの仮想空間と拡張現実で利用できるモノとカネの交換を実現するのがWeb3(NFT、暗号資産)だという、メタバースとWeb3の連続した関係を解説している本です。
メタバースやデジタルツインのビジネスモデルに主に興味関心があり、さらにWeb3のトークンエコノミーや技術も学んでみたい人に一読をおすすめします。
本の目次(詳細版)
この本の目次(詳細版)を引用して紹介します。
- はじめに
- 第1章 メタバース・Web3とは何か?
- 01 メタバースとは何か?
- 02 メタバースプラットフォームとデジタルツインとは?
- メタバースのビジネスモデルとは?
- メタバースプラットホームとセカンドライフのちがいは?
- Web3とは?
- 第1章 まとめ
- コラム メタバースと自由時間シェア
- 第2章 メタバースのプレイヤー ーメタとエヌビディア
- 01 メタバースのプレイヤー
- 02 メタによるメタバースプラットフォーム
- 03 メタが定義するメタバースプラットフォームの要素
- 04 メタはリアリティラボ事業を収益化できるか?
- 05 デジタルツインとエヌビディア
- 06 オムニバースとデジタルツイン
- 第2章 まとめ
- 第3章 メタバースのビジネスモデル
- 01 メタバースプラットフォームのビジネスモデル
- 02 デジタルツインプラットフォームのビジネスモデル
- 03 ロブロックスのビジネスモデルその1 ヒト
- 04 ロブロックスのビジネスモデルその2 モノ・カネ
- 05 デジタルツインプラットフォーム ーユニティのビジネスモデル その1
- 06 デジタルツインプラットフォーム ーユニティのビジネスモデル その2
- 第3章 まとめ
- コラム 仮想通貨・NFTの盗難はなぜおきる?
- 第4章 NFTとWeb3
- 01 メタバースからWeb3へ
- 02 非代替性トークンとブロックチェーン
- 03 サンドボックスとNFTのプレーヤー
- 04 トークンエコノミーからDAOへ
- 05 Web3とOpenSea
- 06 OpenSeaにみるNFTの課題
- 第4章 まとめ
- 第5章 世界のWeb3企業
- 01 世界のWeb3企業
- 02 デジタルコンテンツを展示するディセントラランド
- 03 アバターを自動生成するレディプレイヤーミー
- 04 セカンドレイヤーを実現するポリゴン
- 05 MetaMaskを運営するコンセンシス
- 06 育成ゲーム アクシー・インフィニティ
- 第5章 まとめ
- コラム イーサリアムの柔軟性
- 第6章 日本企業に向けたメタバース・Web3活用 ー5つの提言
- 01 メタバース・Web3を活用する5の提言
- 02 メタバース・Web3活用提言1 ーデジタルツインはCPSから
- 03 メタバース・Web3活用提言2 ーバーチャルは避けて通れない、身近なところから
- 04 メタバース・Web3活用提言3 ー土地選びはトークンの賑わいを測るところから
- 05 メタバース・Web3活用提言4 ーNFTは次のECに ハイブリッド型NFTから
- 06 メタバース・Web3活用提言5 ーステーキングは新しい運用手段に
- 第6章 まとめ
- コラム Webの進化に思う
- おわりに
- 参考文献
- 索引