書籍「ノンファンジブルミー メタバース時代の私は何者か」は、2035年のWeb3メタバース上の仮想都市コミュニティを舞台として、最新のWeb3・メタバース・AIなどのテクノロジーが浸透した12年後の未来予測を踏まえて制作された、ノンフィクション小説です。
登場人物がメタバース間や現実を行き来する人生・社会を描きながら、「メタバース上の私は、現実の私と何が違うのか」という問いがテーマです。
Web3やメタバースに興味関心がある人や、テクノロジーの進化による社会の変化に興味がある人が、未来をイメージできる物語になっています。
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介します。
本の概要
書籍情報
タイトル | ノンファンジブルミー メタバース時代の私は何者か |
著者 | 天羽 健介 |
出版社 | 朝日新聞出版 |
発売日 | 2023/4/24 |
単行本ページ数 | 296 |
著者紹介
天羽 健介(あも・けんすけ)
コインチェック株式会社常務執行役員。web3領域の事業責任者としてNFT事業、メタバース事業などをリードする。
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)NFT部会長
著者が伝えたいこと
著者はこの本を通じて伝えたいことを以下のように述べています。「はじめに」から一部引用。
「メタバース上の私は、現実の私と何が違うのか」という問いも自然に生まれるだろう。その感覚をナラティブに表現するため、本書では小説形式のフィクションとして表現する次第となった。
舞台は2035年のweb3メタバース上の仮想都市コミュニティで展開される。
本書のストーリーは、それら2023年現在の情勢を踏まえ、ときに実在する名称や技術、そしてある種のオマージュも織り交ぜながら、最新のweb3テクノロジーが浸透した12年後の未来予測を踏まえて制作していった。
挑戦的な試みではあるが、これからweb3時代を生き抜く事業者やビジネスマン、クリエイター、若者にとって、そんな未来を具体的にイメージしてもらうきっかけや羅針盤のような存在になったらこの上なくうれしく思う。
本の目次
本の目次を引用して紹介します。
- はじめに
- PROLOGUE 2035年、渋谷
- Chapter1 NFT時代のコミュニティ
- Chapter2 ホモ・サピエンスの恋
- Chapter3 AIの限界
- Chapter4 マルチバースの私と現実の私
- Chapter5 実験解放区へ
- Chapter6 実験解放区からM2Mへ
- Chapter7 NFT Holder Only
- Chapter8 インナーチャイルド
- Chapter9 バーチャル自然とSDGsの関係性
- Chapter10 51%アタック
- Chapter11 大組織の歯車とDAOの中心の間で
- Chapter12 マルチブレイン計画
- Chapter13 設計書NFTのプライバシー
- Chapter14 闘争か逃走か
- Chapter15 メタバース戦争
- Chapter16 シードフレーズを求めて
- Chapter17 謎解きはメタバースとリアルで
- Chapter18 ノンファンジブルミー
- EPILOGUE 2035年、東京拘置所
- あとがき
注目点
この本はどのようなことが書かれているのか?読んでみて注目した点を3つ紹介します。
XRコンタクト
1つ目に注目した点は「Chapter1 NFT時代のコミュニティ」に書かれている「XRコンタクト」です。
著者は、メタバースデバイスがゴーグル、ヘッドセット、ARグラスと進化していき、2035年(フィクション)にはさらに超小型化した「XRコンタクト」が登場するとして、以下のように説明しています。
マイクや出力スピーカーも超小型化したため、ウェブやメタバースへのアクセスはもちろん、音声通話やボイスチャット機能などもコンタクトレンズに集約されている。
近年では、XRコンタクトを角膜に直接埋め込んで取り外しができないようにすることが主流になった。
ほとんどの人がXRコンタクトからクラウド上のウォレットにアクセスし、そのウォレットに自分のIDを保管するなど、身元証明や決済などもXRコンタクトをベースに行われる。
天羽 健介. ノンファンジブルミー メタバース時代の私は何者か (p.14). Kindle 版.
大型の自動運転車
2つ目に注目した点は「Chapter3 AIの限界」に書かれている「大型の自動運転車」です。
著者は、「あらゆる物価が上昇し貧富の差が絶望的なまでに拡大した2035年の東京では、安価なカフェやレストランなどはあまりない。それらは高級施設になってしまい、若者が気軽に利用することができない。」と、2035年(フィクション)の状況を描写しています。
そして、若者がロットルというマッチングアプリで、マッチングした相手とデートする場合に使用する、「大型の自動運転車」を以下のように説明しています。
大型車の中には一・五畳ほどの個室が六つ入っている。
個室には小さな正方形のテーブルと横並びの二脚の椅子。
軽食やドリンクも用意されており、ここで小一時間、会話を楽しんでおたがいを知ってくださいという設計だ。
もちろん完全自動運転なので運転を気にする必要はない。
手動運転車は人間の体調や運転技術などに左右されて危険なので、先進国の都市部では数年前に条例で全台乗り入れ禁止となった。
天羽 健介. ノンファンジブルミー メタバース時代の私は何者か (pp.35-36). Kindle 版.
人を外見から自由にした世界
3つ目に注目した点は「Chapter6 実験解放区からM2Mへ」に書かれている「人を外見から自由にした世界」です。
著者は、「メタバースの実験解放区にあるラブ・ゾーンは、人種や性別を超えて出会いの機会を創出する場所で、誰かと出会ったり、出会ったもの同士がたがいの相性を確認したりする場所として利用されている」と2035年(フィクション)の状況を描写しています。
そして、「生身の身体ではなくアバターとして出会うメタバースでは、みんながアバターをカスタマイズするから、誰もがトップモデルか有名俳優のようだったり、動物や架空の生き物だったりして、現実世界での外見や若さはほとんど無意味だ」と述べて、「人を外見から自由にした世界」を以下のように説明しています。
外見を自由に設定・変更できる世界では、個々の考えや美的センスは反映されても、外見そのものがアドバンテージになることはない。
アドバンテージになるのは、見返りを求めない利他的な姿勢や自主的で協力的な行動、多様な価値観や違いを受け入れる柔軟性など内面的なもの、つまり心のあり方だ。
天羽 健介. ノンファンジブルミー メタバース時代の私は何者か (p.65). Kindle 版.
感想・口コミ・書評記事
感想
Web3やメタバースが普及した、2035年を舞台にしたノンフィクション小説、という面白そうな内容だったので読んでみました。
読み終えてみての全体的な感想は、主人公の状況を想像しながら、クライマックスではドキトキハラハラしながら、ノンフィクション小説として面白く読むことができました。
本文の中で、「ウォレット」「NFT」「マルチバース」など、Web3やメタバースに関連するキーワードが数多く登場して、どのように使われているのかを説明しながら物語が進んでいきます。各Chapterの最後にキーワードの解説ものっているので、わかりやすい内容になっています。
Web3やメタバースに関連するキーワードだけでなく、自動運転車、AI老人ホーム、ブレインテクノロジーなど、10年後に実用化が予測されるテクノロジーも登場するので、未来予測としてさらに興味深い内容になっていました。
著者がこの本への想いとして「未来を具体的にイメージしてもらうきっかけや羅針盤のような存在になればうれしい」と書かれていますが、読み終えてみて、まさに、Web3やメタバースに取り組んでいる人たちが未来をイメージし、あるべき姿を対話するための共通の物語になる、と感じました。
Web3やメタバースに関する知識がなくても、テクノロジーの進化による社会の変化に興味がある人やSF小説が好きな人は、楽しめる内容になっています。
口コミ
書評記事
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参考文献
この本の参考文献に記載されている本や関連する本を紹介します。
私とは何か「個人」から「分人」へ:平野啓一郎(著)
「Chapter13 設計書NFTのプライバシー」の中で、『分人』という言葉が使われています。
『分人』とは、平野啓一郎氏が提唱している分人主義という考え方であり、くわしくはブログ記事で紹介しています。
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メタバースがわかる本おすすめ
まとめ
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介しました。
書籍「ノンファンジブルミー メタバース時代の私は何者か」は、2035年のWeb3メタバース上の仮想都市コミュニティを舞台として、最新のWeb3・メタバース・AIなどのテクノロジーが浸透した12年後の未来予測を踏まえて制作された、ノンフィクション小説です。
登場人物がメタバース間や現実を行き来する人生・社会を描きながら、「メタバース上の私は、現実の私と何が違うのか」という問いがテーマです。
Web3やメタバースに興味関心がある人や、テクノロジーの進化による社会の変化に興味がある人が、未来をイメージできる物語になっています。
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