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【注目点・感想】私とは何か「個人」から「分人」へ:平野啓一郎(著)

2022年4月23日

本「私とは何か」アイキャッチ画像

〈本当の自分〉は一つじゃない! 恋愛・職場・家族… 人間関係に悩むすべての人へ

著者は「一人の人間は、複数の分人のネットワークであり、そこには『本当の自分』という中心はない」と述べています。

個人とは、個性とは、自分とは、他者とは、を考え直すきっかけを与えてくれる本です。

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介します。

本の概要

書誌情報

著者紹介

著者の平野 啓一郎さんは、小説家。1999年、在学中に文芸誌「新潮」に投稿した「日蝕」により第120回芥川賞を受賞。以後、一作毎に変化する多彩なスタイルで数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。(公式サイトより一部引用)

著者が伝えたいこと

著者は「本書の目的は、人間の基本単位を考え直すことである」と述べています。

そして「分人とは何か? この新しい、個人よりも一回り小さな単位を導入するだけで、世界の見え方は一変する。むしろ問題は、個人という単位の大雑把さが、現代の私たちの生活には、最早対応しきれなくなっていることである。」と言います。

本の目次

この本の目次を引用して紹介します。

  • まえがき
  • 第1章 「本当の自分」はどこにあるか
  • 第2章 分人とは何か
  • 第3章 自分と他者を見つめ直す
  • 第4章 愛すること・死ぬこと
  • 第5章 分断を超えて
  • あとがき
  • 補記 「個人」の歴史

もっとくわしく見たい場合は、本の目次(詳細版)が記事の最後にあります。

注目点

この本を読んで注目した点を紹介します。

一人の人間は、複数の分人のネットワーク

1つ目の注目点は、「一人の人間は、複数の分人のネットワーク」です。

著者は「分人とは、対人関係ごとのさまざまな自分のことである。恋人との分人、両親との分人、職場での分人、趣味の仲間との分人、...それらは、必ずしも同じではない。」と述べています。

そして、「分人」という概念を以下のように説明しています。

一人の人間は、複数の分人のネットワークであり、そこには「本当の自分」という中心はない。

個人を整数の1とするなら、分人は、分数だとひとまずはイメージしてもらいたい。

私という人間は、対人関係ごとのいくつかの分人によって構成されている。そして、その人らしさ(個性)というものは、その複数の分人の構成比率によって決定される。

分人の構成比率が変われば、当然、個性も変わる。個性とは、決して唯一不変のものではない。そして、他者の存在なしには、決して生じないものである。

平野啓一郎. 私とは何か 「個人」から「分人」へ (Japanese Edition) (p.5). 講談社. Kindle 版.

他者とは生身の人間でなくても構わない

2つ目の注目点は、「他者とは生身の人間でなくても構わない」です。

著者は「分人は一人ひとりの人間が独自の構成比率で抱えている。そしてそのスイッチングは、相手次第でオートマティックになされている」と述べており、相手(他者)について補足しています。

また、他者とは必ずしも生身の人間でなくてもかまわない。

ネット上でのみ交流する相手でもかまわないし、自分の大好きな文学・音楽・絵画でもかまわない。あるいは、ペットの犬や猫でも、私たちは、コミュニケーションのための一つの分人を所有しうるのだ。

平野啓一郎. 私とは何か 「個人」から「分人」へ (Japanese Edition) (p.52). 講談社. Kindle 版.

私たちの人格そのものが半分は他者のお陰

3つ目の注目点は「私たちの人格そのものが半分は他者のお陰」です。

著者は分人という単位を採用すると何が変わるのかに対して「私が最も変わったと実感しているのは、他者に対する見方である。」と述べています。

分人が他者との相互作用によって生じる人格である以上、ネガティブな分人は、半分は相手のせいである。

(中略)裏返せば、ポジティブな分人もまた、他者のお陰なのである。そう思えば、相手への感謝の気持ちや謙虚さも芽生える。人は一人では生きてはいけない、ということもよく言われるが、それは、何かの時に助けてもらえるというだけではなく、私たちの人格そのものが半分は他者のお陰なのである。

このように分人という視点を導入すると、過度に卑屈になったり、傲慢になったりすることなく、自己分析が可能になる。同時に、他者の存在を自然と承認できるようになる。

平野啓一郎. 私とは何か 「個人」から「分人」へ (Japanese Edition) (p.75). 講談社. Kindle 版.

感想・口コミ・書評記事

感想

私はこの本で「分人」という概念を知ってから自分や自分の周りの見え方が変わりはじめました。

1つ目の注目点「一人の人間は、複数の分人のネットワーク」は、本のまえがきに書かれていて、私がいままで考えたことがない概念だったので印象に残りました。

自分の人生を振り返ってみたところ、学校や職場で接する相手によって自分の色々な分人が生まれてきて、分人の構成比率が変わりながら個性も変わってきていること、そしてそこには他者の存在があることを実感できました。

2つ目の注目点「他者とは生身の人間でなくても構わない」は、分人の概念についてより実感できるようになったので印象に残りました。

文学・音楽・絵画、それ以外にも、使う道具や訪れる場所など自分の周りにあるものすべてが自分の分人を形成する上で関与しているということを、これから意識していきたいと思いました。

3つ目の注目点は「私たちの人格そのものが半分は他者のお陰」は、他者やモノへの考え方を再考することになったので印象に残りました。

これまで接してきた他者やモノとの関係が、ネガティブな分人を作ったのか、ポジティブな分人を作ったのかを振り返ってみると、客観的に捉えることが出来て、これから注意しなければいけないことが見えてきました。

口コミ

書評記事

書評・感想 平野啓一郎『私とは何か「個人」から「分人」へ』 | タケダノリヒロ.com

『私とは何かーー「個人」から「分人」へ』 |状況に埋め込まれたブログ

書評『私とは何か――「個人」から「分人」へ』”本当の私”という”呪い”からの解放 - 淡青色のゴールド

参考文献

ドーン:平野 啓一郎(著)

著者は「ドーン」の中で、文化多元主義と多文化主義の問題にヒントを得て、分人多元主義と多分人主義という二つの概念を登場させています。

平野 啓一郎(著)岡井 カツノリ(ナレーション)講談社(出版社)2012/5/15(発売日)656P(ページ数)

メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界:バーチャル美少女ねむ(著)

「第4章 アイデンティティのコスプレ」の「分人主義」の説明で引用されています。

この本の注目点や感想、本の目次などをブログ記事で紹介しています。

バーチャル美少女ねむ(著)技術評論社(出版社)2022/3/19(発売日)320P(ページ数)

メタバース革命 バーチャル経済圏のつくり方:動く城のフィオ(著)

「Chapter3 バーチャル空間の技術環境とカルチャー」の「アバター文化と『分人』」で引用されています。

この本の注目点や感想、本の目次などをブログ記事で紹介しています。

動く城のフィオ(著)扶桑社(出版社)2022/9/18(発売日)224P(ページ数)

メタバースがわかる本おすすめ

まとめ

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介しました。

〈本当の自分〉は一つじゃない! 恋愛・職場・家族… 人間関係に悩むすべての人へ

著者は「一人の人間は、複数の分人のネットワークであり、そこには『本当の自分』という中心はない」と述べています。

個人とは、個性とは、自分とは、他者とは、を考え直すきっかけを与えてくれる本です。

本の目次(詳細版)

この本の目次をくわしく引用して紹介します。

  • まえがき
  • 第1章 「本当の自分」はどこにあるか
    • 私たちはキャラを演じ分けているのか
    • 新旧の友人が同席したとき
    • ネットの中では別人?
    • 「本当の自分」幻想がはらむ課題
    • 「個性の尊重」
    • 匿名性というより匿顔性 etc.
  • 第2章 分人とは何か
    • 社会的な分人 ステップ1
    • グループ向けの分人 ステップ2
    • 特定の相手に向けた分人 ステップ3
    • 八方美人はなぜムカツクか
    • 分人の数とサイズ
    • 個性とは、分人の構成比率
    • 足場となる分人
    • 一人でいる時の私は誰? etc.
  • 第3章 自分と他者を見つめ直す
    • 悩みの半分は他者のせい
    • 他者もまた、分人の集合
    • 大切なのは分人のバランス
    • 分人化を抑えようとする力
    • 分人主義的子育て論
    • 自分を好きになる方法 etc.
  • 第4章 愛すること・死ぬこと
    • 「恋愛」、つまりは「恋と愛」
    • 分人主義的恋愛観
    • 分人と嫉妬
    • 片思いとストーカー
    • 愛する人を失ったときの悲しみ
    • 死後も生き続ける分人 etc.
  • 第5章 分断を超えて
    • 遺伝子要因の影響
    • 分人は他者とは「分けられない individual」
    • 文化の多様性をヒントに考える
    • 分人は融合すべきなのか? etc.
  • あとがき
  • 補記 「個人」の歴史

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