著者が実体験した日本でのオキュラス創世記エピソードやVR(バーチャル・リアリティ、仮想現実)で生活や社会がどのように変わるのかを具体的に知りたい人におすすめする本を紹介します。
著者はこの本を「いずれVRという技術そのものが空気のような存在になって、未来の人々の生活・娯楽・ビジネスその他すべてを変えてしまうだろう…ということを僕なりに予測して書いた本です。」と述べています。
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考情報、を紹介します。
本の概要
書誌情報
著者紹介
著者のGOROman(ごろまん)氏は、2010年株式会社エクシヴィを立ち上げ現在も代表取締役社長を務める。日本にVRを広めるために2014年〜2016年Oculus Japan Teamを立ち上げ、Oculus VR社の親会社であるFacebook Japan株式会社で国内のVR普及に務める。個人でも”GOROman”として、VRコンテンツの開発、VRの普及活動を広く行う。
この本は、著者が2018年4月に出版した「ミライのつくり方2020-2045 僕がVRに賭けるわけ」を加筆・再編集したものです。
著者はこの本を「いずれVRという技術そのものが空気のような存在になって、未来の人々の生活・娯楽・ビジネスその他すべてを変えてしまうだろう…ということを僕なりに予測して書いた本です。」と述べています。
本の目次
この本の目次を引用して紹介します。
- 改訂版のためのまえがき
- はじめに
- VR体験の手引き
- 第1章 こうして僕は「GOROman」になった
- 第2章 日本にVRを!
- 第3章 すべてを支配する「キモズム」理論
- 第4章 VRで生活はこう変わる
- 第5章 VRは社会をこう変える
- 第6章 ミライの答え合わせ・2020年版
- おわりに VRのなくなる日.....
- 改訂版のためのあとがき VRで広がる世界
もっとくわしく見たい場合は、本の目次(詳細版)が記事の最後にあります。
注目点
「ミライをつくろう!VRで紡ぐバーチャル創世記」を読んで注目した点を3つ紹介します。
不便を解消できた時にキモズムを超える
1つ目の注目点は「不便を解消できた時にキモズムを超える」です。
著者はマーケティング理論でのアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある溝「キャズム」を超えるということを「キモズム」と述べています。
新技術は滑稽かつキモく見える。便利とキモいの間にある溝。これが「キモズム」。キモいと思う人より便利という人が増えた場合にこの溝は埋まる。
……という風に考えると、キモズムの坂を上り、溝を超えて向こう側に行くための条件も見えてきます。
要は「人々の不便を解消できるかどうか」。ある程度テクノロジーが生活に溶け込んで「これはキモくない、便利なものだ」と一定数に認知された瞬間、モテにシフトしていく。これは、様々なテクノロジーの歴史を振り返ってみれば、明らかな事実です。
GOROman. ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記 (Japanese Edition) (p.129). Kindle 版.
マーケティング理論でのキャズム超えることを、「キモズム(これはキモくない、便利なものだ)」と表現し直したのは分かりやすく印象に残りました。
会社の中でのパソコンの普及、電車内でのウォークマン・スマートフォンの普及を思い出してみると、確かに初めは会社内や電車内で数人しか使っていなかった状態から、ある日気がつくと半分以上の人が使っている状態を体験しました。将来VR/AR機器がキモズムを超える日が楽しみです。
ARは「足していく」もので、VRは「代替していく」もの
2つ目の注目点は「ARは『足していく』もの、VRは『代替していく』もの」です。
著者は、ARとVRの違いについて自分の向いた方向や位置を把握し、視界に映像を重ねるという意味では、共通の技術を使っている、と述べています。
ARは現実に「情報を足す」技術です。VRは視界を全部一度遮断して、そこに表示される映像へと「代替する」技術といえます。ですから、技術が十分に進歩すれば、両者の違いは小さなものになります。
例えば、カメラで実際の映像を取り込みつつ、その映像を「VR」として表示したらどうでしょう?そして、そこから実際の映像をどんどん消していったら?ARなのかVRなのかは「現実をどれだけ混ぜるか」「現実がどれだけ透過しているか」という違いでしかありません。街中を歩いている時は現実がより多く見えていないと危険ですけど、電車の中では「現実60パーセント、VR40パーセント」くらいでいいかもしれない。自宅に戻ったら「VR100パーセント」になってもいい。将来は、そういう「透過度」を場合に合わせて自動で切り替えてくれるようになるかもしれません。
GOROman. ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記 (Japanese Edition) (pp.140-141). Kindle 版.
ARとVRの違いについて、このように本質的に簡略な言葉を聞いたのは初めてで、とても分かりやすかったので印象に残りました。
この他にも、ノイズキャンセリング型のヘッドホンは「音のVR」のようなものであり、外部音取り込みモードは「音のAR」のようなものと説明しているのは初めてで、なるほどと思いました。
「空間パラダイム」で生活激変
3つ目の注目点は「『空間パラダイム』で生活激変」です。
著者は、OSがVRに対応することによって「ペーパーパラダイム」の時代が終わって、「空間パラダイム」の時代がやってきます!、と述べています。
本来なら誰もが、広げた資料を見ながらブレインストーミングをしてみたい。そこからなにか新しい発想を思いつくことも、あると思うんです。
VRが登場して、ようやく我々は「画面の枠=フレーム」という呪縛から解き放たれます。紙を入れ替えて作業をすることの模倣から始まった「ペーパーパラダイム」がやっと終了し、空間全体を作業に使える「空間パラダイム」へと変化するんです。
GOROman. ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記 (Japanese Edition) (p.152). Kindle 版.
机の上で紙に作業していたことがパソコンになっても「ペーパーパラダイム」に変わりはなかったのが、VRでは「見えているものがすべてディスプレイ」になり、重力などの物理的な制約とは無関係に空間に情報をいっぱい出して自分で視線を動かして作業ができるようになる、というのは劇的な変化なので印象に残りました。
将来は固定されている物理的なモノやデバイスが減って、VRの空間を切り替えることで集中したりリラックスしたり集まったり出来るようなイメージが湧いてきました。
感想・口コミ・書評記事
感想
著者がOculus Riftの開発版をクラウドファンディングで入手し、日本のVRエバンジェリストとして活動し、オキュラス・ジャパンを設立し、Facebookの買収を経験したエピソードは、ジェットコースターに乗るように展開が変わって予測できない話で、この本の中で最も引き込まれて読みました。オキュラスのパルマー・ラッキーがそのままオープンさを保って自由な開発を続けている姿も見てみたかった。
スマートフォンの先駆けとして出てくる「Palm Pilot」は、私も当時購入してグラフィティという手書き入力を覚えてとても気に入って使っていたので、当時を懐かしく思い、筆者の考えに共感を覚えました。その他にも、パソコン通信、モデム、ニフティサーブ、Wiiリモコンのハッキング、Altoなど、私も経験したことが書かれていて技術の変化をたどることができ、これから5年、10年の間に登場する技術や製品が楽しみになった。
この本にはコロナ禍での移動自粛やビデオ会議などを経験した筆者が、今後のVR/ARの用途について意見を述べていて、未来をイメージするために参考になった。
"VRの父”と呼ばれているジャロン・ラニアーの本「万物創生をはじめよう--私的VR事始」を読んだが、いずれもVRの可能性に魅せられたVRエバンジェリストの熱い想いと困難に立ち向かう姿が伝わってくる本だった。
この本を見つけたきっかけは、史上初のVR本を復活させた本「VR原論--人とテクノロジーの新しいリアル」で加筆された鼎談に著者が参加していたことからであった。この本を読んでみてVR原論の鼎談に参加するべき人であることが理解できた。
口コミ
Twitter口コミを紹介します。
書評記事
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【VR本】『ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記』徹底レビュー | Ryo's blog
参考文献
著者の情報
【体験レポ】VRCアワード個人部門 最優秀賞受賞『Mikulus』 | Mogura VR (2017/6/13)
美少女に変身!誰でもバーチャルキャラになれる配信システムが登場 | Mogura VR (2018/1/24)
書籍
メタバース革命 バーチャル経済圏のつくり方:動く城のフィオ(著)
「Chapter1 メタバース転生」の「『バーチャル空間に国を作る』発言との出会い」で引用されています。
この本の注目点や感想、本の目次などをブログ記事で紹介しています。
VRがわかる本おすすめ
まとめ
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介しました。
著者が実体験した日本でのオキュラス創世記エピソードやVR(バーチャル・リアリティ、仮想現実)で生活や社会がどのように変わるのかを具体的に知りたい人におすすめする本を紹介します。
著者はこの本を「いずれVRという技術そのものが空気のような存在になって、未来の人々の生活・娯楽・ビジネスその他すべてを変えてしまうだろう…ということを僕なりに予測して書いた本です。」と述べています。
本の目次(詳細版)
この本の目次をくわしく引用して紹介します。
- 改訂版のためのまえがき
- はじめに
- VR体験の手引き
- 第1章 こうして僕は「GOROman」になった
- パソコン通信がすべてを変えた
- GORO-NET誕生
- インターネットへの渇望
- シェアウェア開発から「プロ」の世界へ etc.
- 第2章 日本にVRを!
- ゲームプログラマーの道へ
- すごい技術を人に伝える方法
- オキュラス・リフトの衝撃
- 会社そっちのけでエヴァンジェリストに
- オキュラスを「おま国」にしないために
- パルマー・ラッキー来襲
- え、フェイスブックに買収?!
- 「オキュラス・ジャパン」になったのに.....
- フェイスブックとオキュラス etc.
- 第3章 すべてを支配する「キモズム」理論
- キャズムとキモズム
- パソコンを使う姿が「キモい」!?
- モテそうになった時、キモズムは超えられる
- 不便を解消できた時にキモズムを超える etc.
- 第4章 VRで生活はこう変わる
- 2020年から始まるVR革命
- 「空間パラダイム」で生活激変
- 空間が変わると「エンタメ」も変わる
- バーチャルYouTuberは未来の先駆け
- 第5章 VRは社会をこう変える
- VRが生み出す新しいビジネス
- 人が「クリエイティブ」になるとはどういうことか
- 学びや人との関係はどう変わる?
- VRで僕らは「国」から自由になる
- 第6章 ミライの答え合わせ・2020年版
- オキュラス・クエストはなにをもたらすか
- 大手プラットフォーマーの動向と音のAR
- ビデオ会議とVR登壇、テレイグジスタンス
- 身体をあまり動かさないUIが主軸
- VTuberは人間よりお金がかかる
- 便利さに慣れた人間は元に戻れない
- おわりに VRのなくなる日.....
- 改訂版のためのあとがき VRで広がる世界