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【注目点・感想】ビットコインの歩き方: 世界の今を知るとビットコインが見えてくる:Alex Gladsteinほか(著)練木照子(翻訳)

2023年3月25日

本「ビットコインの歩き方」アイキャッチ画像

世界の国々でいま起きており、将来起きるかもしれないお金がかかえている問題、その問題を解決するために生まれたビットコイン、ビットコインで変わる政治、経済、社会、そしてビットコインがあなたの将来に与える影響について説明し、考えるきっかけを与えてくれる本です。

ビットコインに興味を持っているビットコイン初心者だけでなく、ビットコインに対して懐疑的な人にも一読をおすすめします。

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介します。

本の概要

書籍情報

日本語版

Alex Gladsteinほか(著)練木照子(翻訳)2021/9/7(発売日)122P(ページ数)

原著(英語版)

著者紹介

著者8名について、「著者について」から一部引用して紹介します。

Timi Ajiboye

アフリカ各国通貨とビットコインを売買できる取引所BuyCoinsの共同創業者。

Luis Buenaventura

新興国で安全なアマプラ取引プラットフォームを提供するフィリピンのスタートアップBloomXの共同創業者。

Alex Gladstein

シンギュラリティ大学講師として、ビットコインが政治に及ぼす影響について世界中の学生に学生に講義するとともに、TIME、CNN、ビットコインマガジンなどのメディアに技術と自由の関係を論じる記事を多数投稿。

Lily Liu

空き時間を活用してビットコインを稼ぐためのプラットフォームEarn.comを共同創業。2018年にEarn.comをCoinbaseに売却。

Alexander Lloyd

2008年にAccelerator Venturesを創設。2016年にHuman Right Foundationの委員会に加わる。

Alejandro Machado

閉鎖的経済圏、ハイパーインフレ国に暮らす人々の購買行動を研究するNPO、Open Money Initiative創始者。ベネズエラでビットコイン普及活動に従事。

Jimmy Song

ビットコインコア開発者、教育者、起業家。『プログラミング・ビットコイン』の著者。

Alena Vranova

2013年に世界初のビットコインハードウェアウォレット、Trezorを発売。その後Casaの戦略責任者として、ビットコイン自己管理ソリューションを開発。個人の経済主権回復を支援。

著者が伝えたいこと

著者はこの本を通じて伝えたいことを以下のように述べています。

(「序文」、「日本語版への序文」より一部引用)

本書を通して、あなたが毎日使っているお金が抱える問題、その問題を解決するために生まれたビットコイン、ビットコインで変わる政治、経済、社会、そしてビットコインがあなたの将来に与える影響について、ぜひ考えてみてほしい。

この本の内容もビットコインと同様に普遍的である。
ビットコインになぜ価値がついているのか?を分かりやすく解説する本書は、ビットコイン初心者だけでなく、ビットコインに対して懐疑的な人にもぜひ読んで欲しい。

本の目次

本の目次を引用して紹介します。

  • 序文
  • 著者について
  • 日本語版への序文
  • 第1章 お金は壊れている!?
  • 第2章 ビットコインとは?
  • 第3章 ビットコインの価格に影響を及ぼす要因
  • 第4章 ビットコインと人権の深い関係
  • 第5章 2つの未来
  • 第6章 ビットコインに関するよくある質問
  • 付録
  • 用語集
  • 謝辞
  • 訳者あとがき
  • 訳者について

もっとくわしく見たい場合は記事の最後に、本の目次(詳細版)があります。

注目点

この本はどのようなことが書かれているのか?読んでみて注目した点を3つ紹介します。

デジタル世界の非中央集権的希少性

1つ目に注目した点は「第2章 ビットコインとは?」に書かれている「デジタル世界の非中央集権的希少性」です。

著者は、デジタル世界での希少性とビットコインの革新性について、以下のように述べています。

  • データ複製が容易なデジタル世界で、希少性を創り出すことは不可能だと長年考えられており、電子マネーの発行と決済には中央管理体の介在が必須とされた
  • 2008年10月31日、サトシ・ナカモトがこの常識をくつがえし、デジタル世界の希少財とも言える「素数」に突破口を見出した
  • 希少数字を探す競争、これがデジタル世界では不可能とされた非中央集権的希少性を創造する鍵であり、ビットコインの革新性でもある

ビットコインの誕生以前、希少性には金や銀が持つ自然希少性と、ブランドバッグやアートのように中央管理体が供給管理する人工希少性の2種類しかなかった。

デジタルデータは無限に複製可能なため、希少性を維持するには、AppleやSpotifyなどの中央管理体の介在が必須だった。

ビットコインとは、金や銀が持つ非中央集権的な自然希少性を中央管理体の関与なしに維持できる史上初のデジタルデータなのだ。

Alex Gladstein,Timi Ajiboye,Luis Buenaventura,Lily Liu,Alexander Lloyd,Alejandro Machado,Jimmy Song,Alena Vranova. The Little Bitcoin Book: Discover Bitcoin by getting to know the current state of the world (Japanese Edition) (pp.36-37). Kindle 版.

インフレに対する自衛手段

2つ目に注目した点は「第4章 ビットコインと人権の深い関係」に書かれている「インフレに対する自衛手段」です。

著者は、ベネズエラの独裁政権の状況を以下のように説明しています。

  • ベネズエラでは、無節操な紙幣増刷、組織的な汚職の蔓延、誤った経済政策などにより、2018年に物価が230万%も上昇し、政府の失態のつけがすべて国民にまわされ、現金や預貯金は数時間で価値がなくなる
  • ハイパーインフレだけでなく、ベネズエラの独裁政権は20年も前から国民に厳しい資本規制を課しており、亡命先のコロンビアからベネズエラに残る家族に国際送金する場合、送るのも受け取るのも非常に難しい

ビットコインを使えば、危険をおかす必要がなく、コロンビアから送金したビットコインは、ほんの数十分後にはベネズエラの家族の元に届くし、手数料は安く、銀行に送金を差し止められたり、国境管理官に没収される心配もない、と著者は述べています。

連日、この方法で数百万ドル相当のビットコインがベネズエラの国境を通過する。

経済が破綻した国に暮らす人々にとって、ビットコインとは最後の頼みの綱なのだ。

米ドル、ユーロ、日本円のように価値が安定した通貨を使う人々には、ビットコインの値動きは激しいと映るかもしれない。

しかし、価値が1年に230万%も暴落したボリバルの使用を強制されるベネズエラの人々には、ビットコインの価格は安定していると映るだろう。

Alex Gladstein,Timi Ajiboye,Luis Buenaventura,Lily Liu,Alexander Lloyd,Alejandro Machado,Jimmy Song,Alena Vranova. The Little Bitcoin Book: Discover Bitcoin by getting to know the current state of the world (Japanese Edition) (p.58). Kindle 版.

2,100万ビットコインしかないのに国際基軸通貨になれるの?

3つ目に注目した点は「第6章 ビットコインに関するよくある質問」に書かれている「2,100万ビットコインしかないのに国際基軸通貨になれるの?」です。

著者は、「ビットコインは1億分の1の小単位に分割できる。この小単位はビットコイン発明者サトシ・ナカモトに敬意を表し、satoshi(sat/satsと省略されることもある)と名付けられた。」の述べています。

この「satoshi」単位と、現在の米ドルの総供給量を比較した場合について、以下のように述べています。

つまり、ビットコインの総供給量は2,100兆satsである。

ちなみに、本書執筆時、米ドルのM2マネーサプライは1,500兆セントだ。

2019年時点で発行済みビットコインを世界人口70億人で割ると、一人当たり約30万satsになる。

すなわち、ビットコインはグローバル経済を支える国際基軸通貨として十分機能するということだ。

Alex Gladstein,Timi Ajiboye,Luis Buenaventura,Lily Liu,Alexander Lloyd,Alejandro Machado,Jimmy Song,Alena Vranova. The Little Bitcoin Book: Discover Bitcoin by getting to know the current state of the world (Japanese Edition) (pp.101-102). Kindle 版.

感想・口コミ・書評記事

感想

ビットコインについて、技術解説や暗号資産取引の投資指南ではなく、難しい技術用語、経済学用語を使わずに、世界でいま起きていることとビットコインの関係に気づくきっかけになるような本、という書籍紹介があったので読んでみました。

「第1章 お金は壊れている?!」では、フィリピン、ナイジェリア、ベネズエラでのインフレによって国民の生活が困窮している問題や、独裁国家での法定通貨の増刷による富裕層と庶民の富の格差の問題、米ドルが世界の標準決済通貨である脆弱性が書かれており、日本に暮らしている中では実感できないことばかりであり、ビットコインが必要とされている世界的な背景を知ることができました。

「第3章 ビットコイン価格に影響を及ぼす要因」を読んで、日々のニュース記事でビットコイン価格の上下動といった短期的な要因が報じられていますが、そのようなニュース記事ではわからない中期的、長期的な要因や、法定通貨との違いを理解できました。

「第4章 ビットコインと人権の深い関係」では、もともとはトランザクションの処理能力を向上する目的で開発された「ライトニングネットワーク」が副次的にトランザクションの秘匿性を高めて、利用者のプライバシーを守るというメリットを持つ、と解説されていてライトニングネットワークに興味を持ちました。

これまでビットコインの本質について、現在の日本を前提としていたために理解できていなかった、ということに読んで改めて気づきました。まさにこの本の副題「世界の今を知るとビットコインが見えてくる」を実感しました。

ビットコイン初心者だけでなく、ビットコインの技術や暗号資産取引について知っている人も改めて、ビットコインの本質を知るためにおすすめできる本です。

Alex Gladsteinほか(著)練木照子(翻訳)2021/9/7(発売日)122P(ページ数)

口コミ

書評記事

「ビットコインの歩き方」を読めばビットコインがすぐに分かる!【書評】|お布団マンブログ

「ビットコイン の歩き方」のレビュー — YUTO

書評「ビットコインの歩き方: 世界の今を知るとビットコインが見えてくる Kindle版」 - メシメリブログ

参考文献

この本で引用されていたり、参考文献に記載されている本などを紹介します。

ブラック・スワン:ナシーム・ニコラス・タレブ(著)

「第4章 ビットコインと人権の深い関係」の「ビットコインのプライバシー技術」の中で引用されています。

ナシーム・ニコラス・タレブ(著)望月 衛(翻訳)ダイヤモンド社(出版社)2009/6/19(発売日)312P(ページ数)

サピエンス全史:ユヴァル・ノア・ハラリ(著)

「第4章 ビットコインと人権の深い関係」の「ビットコインのプライバシー技術」の中で引用されています。

ユヴァル・ノア・ハラリ(著)柴田 裕之(翻訳)和村 康市(ナレーション)河出書房新社(出版社)2016/9/8(発売日)

ビットコイン・スタンダード:S・アモウズ(著)

「訳者あとがき」の中で「ビットコインを貨幣制度ととらえ、経済学的観点から論じた本」と紹介されています。

S・アモウズ(著)J・モーリス(その他)練木 照子(翻訳)ミネルヴァ書房(出版社)2021/7/20(発売日)274P(ページ数)

ビットコインがわかる本おすすめ

まとめ

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介しました。

世界の国々でいま起きており、将来起きるかもしれないお金がかかえている問題、その問題を解決するために生まれたビットコイン、ビットコインで変わる政治、経済、社会、そしてビットコインがあなたの将来に与える影響について説明し、考えるきっかけを与えてくれる本です。

ビットコインに興味を持っているビットコイン初心者だけでなく、ビットコインに対して懐疑的な人にも一読をおすすめします。

Alex Gladsteinほか(著)練木照子(翻訳)2021/9/7(発売日)122P(ページ数)

本の目次(詳細版)

この本の目次(詳細版)を引用して紹介します。

  • 序文
  • 著者について
  • 日本語版への序文
  • 第1章 お金は壊れている!?
    • お金にまつわる物語
    • そもそも、お金って何?
    • お金の仕組み
    • 世界経済の単一障害点
    • プライバシーの危機
    • 壊れたお金は直せる?
  • 第2章 ビットコインとは?
    • ビットコインの誕生
    • 希少性の種類
    • 貨幣に非中央集権性が求められる理由
    • デジタル世界の非中央集権的希少性
    • ビットコインマイニング
    • ビットコインの送金の仕組み
    • ビットコインの通貨政策
    • ブロックチェーン技術をめぐる狂騒
    • ビットコイン以外の暗号資産
    • 結論
  • 第3章 ビットコインの価格に影響を及ぼす要因
    • 短期的要因
    • 中期的要因
    • 長期的要因
    • 結論
  • 第4章 ビットコインと人権の深い関係
    • 銀行に依存しない新しい金融システム
    • インフレに対する自衛手段
    • 金融サービスへの平等なアクセス
    • キャッシュレス社会の不都合な真実
    • 悪用される個人情報
    • ビットコインのプライバシー技術
  • 第5章 2つの未来
    • 2039年
    • 2039年 もう一つの未来
    • ビットコインが貨幣制度になった世界
      • 国境は消え、真のグローバル経済が実現
      • 終わりなき戦争のからくりが露呈
      • 独裁国家の弱体化
      • 資産投機バブルの回避
      • 労働者待遇が改善
      • 銀行と大企業の影響力が低下
      • 監視社会の終わり
      • 個人主権の回復
    • まだ始まったばかり
    • 未来を選ぶのはあなた
  • 第6章 ビットコインに関するよくある質問
    • サトシ・ナカモトって誰?
    • ビットコインは誰が運営しているの?
    • なぜビットコインの値動きは激しいの?
    • ビットコインの価値の裏付けは?
    • ビットコインは信用できる?
    • ビットコインは安全なの?
    • なぜ取引所のハッキングが相次ぐの?
    • ビットコインは犯罪に利用されているって本当?
    • ビットコインはネズミ講詐欺?
    • ビットコインはバブルなの?
    • テザーって何?ビットコインにどんな影響を与えるの?
    • ビットコインを禁止する国が出てくるのでは?
    • ビットコインは合法なの?
    • ビットコインマイニングは環境に悪いって本当?
      • マイニングは余剰電力の有効活用法
      • マイニングでクリーンエネルギー普及促進
      • 誰もが使える金融サービスの安全性を担保するのがマイニング
      • 技術革新とエネルギーと文明の関係
    • 量子コンピュータはビットコインにとって脅威なの?
    • なぜネットワークの分散性が大事なの?
    • ビットコインは秘匿性が高いの?
    • ビットコインは全世界70億人の金融ニーズに対応できるの?
    • 初期投資家と富裕層がビットコインの大半を所有しているって本当?
    • 2,100万ビットコインしかないのに国際基軸通貨になれるの?
    • ビットコインは高すぎて庶民には手が届かない?
    • ビットコインはどうやって入手するの?
      • マイニングする
      • 購入する
      • 稼ぐ
    • ビットコインウォレットって何?
  • 付録
  • 用語集
  • 謝辞
  • 訳者あとがき
  • 訳者について

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