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【注目点・感想】平均思考は捨てなさいーー出る杭を伸ばす個の科学(文庫:ハーバードの個性学入門):トッド・ローズ(著)

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テレビや仕事でよく耳にする「平均」という言葉。つい気になってしまう「平均」と自分との違い。

平均とは何なのか?平均は何のために発明されたのか?

一方、個性とは何なのか?個性を活かすためにはどうしたらいいのか?

企業の人事・教育部門、政府や行政の政策・施策部門、教育・学校機関のビジネス・パーソンや、子どもの才能を活かしたい人、個性を活かす社会を考えている人に、一読をおすすめする本です。

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介します。

本の概要

書誌情報

Kindle版、単行本

トッド・ローズ(著)小坂 恵里(翻訳)早川書房(出版社)2017/5/25(発売日)336P(ページ数)

文庫本

トッド・ローズ(著)小坂 恵里(翻訳)早川書房(出版社)2019/3/20(発売日)336P(ページ数)
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原著

Todd Rose(著)HarperOne(出版社)2016/1/19(発売日)256P(ページ数)

著者紹介

トッド・ローズ(Todd Rose)

ハーバード教育大学院で心/脳/教育プログラムを主宰する心理学者。同大学のNPO(個人の機会最大化のためのセンター)共同設立者で、「個人学」の推進者。(amazon.co.jp書籍情報より引用)

現在は、ボストンを拠点とするシンクタンクであるPopulaceの共同創設者兼社長。(Wikipediaより引用)

著者が伝えたいこと

著者は「はじめに」で、1940年代、アメリカ空軍の飛行機コックピット設計で起きた事例を紹介し、「平均的な人間に基づいて設計されたシステムは最終的に失敗するという結論で、これは本書の大前提にもなっている。」と述べています。

そして著者はこの本で明らかにすること、著者の活動、読者への願いを以下のように述べています。

「実のところ、平均的な人間という今日の観念は数学的事実ではなく、一世紀半前に二人のヨーロッパ科学者が、当時の社会問題を解決するために発明したものである。」

「私はこの10年間、個性学という学際的で斬新な学問分野に関わってきた。この分野は、個人を理解する際に平均を主要なツールとは見なさず、個性に正しく注目してこそ理解は得られるという立場をとっている。」

「何か新しい事柄を学ぶ際に最も難しいのは、新しいアイデアを受け入れることではない。古いアイデアを手離すことだ。本書を通じ、皆さんが平均という独裁者から完全に解放されるよう心から願う。

本の目次

この本の目次を引用して紹介します。

  • はじめにーーみんなと同じになるための競争
  • 第1部 平均の時代
    • 第1章 平均の発明
    • 第2章 私たちの世界はいかに標準化されたか
    • 第3章 平均を王座から引きずりおろす
  • 第2部 個性の原理
    • 第4章 才能にはバラツキがある
    • 第5章 特性は神話である
    • 第6章 私たちは誰もが、行く人の少ない道を歩んでいる
  • 第3部 個人の時代
    • 第7章 企業が個性を重視すると
    • 第8章 高等教育に平均はいらない
    • 第9章 「機会均等」の解釈を見直す

もっとくわしく見たい場合は、本の目次(詳細版)が記事の最後にあります。

注目点

平均人と有能者・低能者を発明した2人

1つ目に注目した点は、「第1章 平均の発明」に書かれている、平均人と有能者・低能者を発明した2人、です。

1人目の人物、アドルフ・ケトラーについて著者は以下のように述べています。

「アドルフ・ケトレーは、1796年に生まれ、天文の測定値を平均する発想を人間の平均値の解釈に応用し、個々の人間は誤差を伴うが平均的な人間は真の人間の象徴だと宣言した。」

「ケトレーはできるかぎり多くの特質に関してデータの計算に乗り出し、身長・体重だけでなく、結婚した年齢、年平均出産数、貧困層の平均数まで算出し、ケトレー指数ーー今日ではボディマス指数(BMI)として知られるーーを発明した。」

2人目の人物、フランシス・ゴルトンについて著者は以下のように述べています。

「フランシス・ゴルトンは、ケトレーのほとんどのアイデアに賛同したが、ひとつだけ、平均人は造物主の理想の姿だというアイデアは例外だった。」

「ゴルトンは人類を14の異なった階層に分類した。底辺は「低能者」、中間は「凡人」、いちばん上は「有能者」からなる階層である。これをきっかけに平均の持つ意味は決定的に変わり、正常は凡庸という概念に置き換えられた。」

そして、この2人の発明が今日に与える影響を以下のようにまとめて述べています。

ケトレーが1840年代に社会物理学を発明したときに始まって今日に至る平均の時代は、ふたつの前提に支えられており、それが社会のほぼすべてのメンバーによって無意識に共有されていると言ってもよい。

平均人に関するケトレーのアイデアと、ランク付けに関するゴルトンのアイデアのふたつだ。

ケトレーと同じく私たちは全員、正常さを判断するうえで平均は信頼できる指標だと信じるようになった。

肉体的な健康、精神的な健康、個性、経済的地位に関しては、特にその傾向が強い。

その一方、狭い範囲での成果をランク付けすれば、人びとの才能を評価するための手がかりになるとも信じる。

今日では世界各地の教育制度、雇用慣習、従業員の業務評価制度において、このふたつのアイデアが大前提としておおむね機能している。

トッド ローズ. 平均思考は捨てなさい──出る杭を伸ばす個の科学 (Japanese Edition) (p.50). Kindle 版.

人間を平均、そして複数の階層に分類するという考え方は、150年前の時代背景に始まったものであることを知り、「わずか150年」という思いと「150年も変わっていない」という思いを感じ、今の時代背景に合った考え方に変える必要を感じた。

個性の3つの原理

2つ目に注目した点は、「第2部 個性の原理」に書かれている、個性の3つの原理です。

著者は「第4章 才能にはバラツキがある」の中で、個性に関する第1の原理「バラツキの原理」について以下のように述べています。

「バラツキがあるのは人間の体のサイズだけではない。才能、知性、性格、独創性など、私たちが重視する人間と特質のほぼすべてに、実はバラツキが認められる。」

著者は「第5章 特性は神話である」の中で、個性に関する第2の原理「コンテクストの原理」について以下のように述べています。

「コンテクストの原理によれば、個人の行動はコンテクストすなわち特別の状況に左右されるもので、コンテクストから切り離して説明することも予測することもできない。一方、コンテクストがおよぼす影響は、当事者がどんな特性の持ち主かによって異なってくる。」

著者は「第6章 私たちは誰もが、行く人の少ない道を歩んでいる」の中で、個性に関する第3の原理「迂回路の原理」について以下のように述べています。

「人間の体、精神、モラル、職業など、いかなるタイプの成長についても、たったひとつの正常な経路など存在しない。人生のあらゆる側面において、そしていかなるゴールを目指そうとも、同じゴールにたどり着く道はいくつもあって、しかもどれも妥当な方法であり、最適な経路は個性によって決定される。」

著者は第6章の後半部で、高校を中退してから大学をオールAで卒業するまでの著者自身が歩んできた道を述べたあと、以下のように述べています。

私のストーリーを聞かされても、特殊なケースにしか思えないかもしれない。

しかし実際のところこれは、個性に関する原理の核心である。

私たちは全員が特殊なケースなのだ。

個性に関する一連の原理を理解すれば、あなたはこれ以上ないほどうまく人生をコントロールできるようになる。

平均が押し付けてくる型にこだわらず、ありのままの自分と向き合えるようになるからだ。(中略)

あなたに最もふさわしいのは、足を踏み入れた人が少ない道の方だ。

さあ、勇気を出して新しい道に一歩を踏み出し、まだ誰も進んだことのない方向を目指そう。

平均的な経路をたどるよりも、成功する可能性は確実に高くなる。

トッド ローズ. 平均思考は捨てなさい──出る杭を伸ばす個の科学 (Japanese Edition) (p.180). Kindle 版.

これまで周りの人たちの状況から自分が目に見えない「平均的な生き方」に無意識にとらわれていたことに気づかされた。

「あなたに最もふさわしいのは、足を踏み入れた人が少ない道の方だ。」という言葉を忘れないようにしたい。

平等なフィットが平等な機会を生み出す

3つ目に注目した点は、「第9章 『機会均等』の解釈を見直す」に書かれている、平等なフィットが平等な機会を生み出す、です。

著者は、どんな体型にも合わせて調整できる飛行機のコックピットを例に挙げ、「フィットすれば機会は創造されるという教訓が得られる。」と述べています。

著者は平等な機会について、平均主義の「平等なアクセス」の考え方を以下のように述べています。

「平均の時代においては、機会は『アクセスの平等』として定義され、誰もが確実に同じ経験にアクセスできることが重視された。」

「しかし、平等なアクセスにはひとつ大きな欠点がある。標準化された同じシステムに誰もが確実にアクセスできるように、個人の機会が平均的に最大化されることを目指すのだ。システムが個人にフィットするか否かは実際のところ考慮されない。」

これに対して、著者は平等な機会について「平等なフィット」の考え方を以下のように述べています。

しかしいまや私たちは、平均的な人間など存在しないことを理解しているし、機会への平等なアクセスの欠点もわかっている。

平均的な人間が存在しないのならば、平均的に平等な機会などあり得ない。

平等なフィットだけが、平等な機会を生み出すのだ。(中略)

もはや私たちは、柔軟性に欠けて標準化されたシステムに人びとを従わせる必要がない。

いまでは、個性に配慮した制度を構築するための科学や技術が発達しているからだ。

トッド ローズ. 平均思考は捨てなさい──出る杭を伸ばす個の科学 (Japanese Edition) (p.230). Kindle 版.

どんな体型にも合わせて調整できる飛行機のコックピットのように、各自の個性が発揮できる「平等なフィット」という考え方を念頭において、これから相対するものごとを見て考えていきたい。

感想・口コミ・書評記事

感想

この本は以前読んだ本「多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織」(ブログ記事)の参考文献に挙げられていたので手に取って読んだ本です。

改めて「多様性の科学」を読み返すと、「平均値の落とし穴」の事例として、この本の平均値で設計された飛行機のコックピットが事故の原因であった事例を取り上げて、平均値を疑う目を持って人間の多様性を活かすことの重要性だけでなく、「平等なフィット」を実現している事例が書かれており、理解を深めることができた。

個性に関する第2の原理である「コンテクストの原理」の説明で、ワシントン大学の正田祐一教授の「条件と帰結のシグネチャー」を引用しており、「たとえば、ジャックという名まえの同僚に理解したければ、もしもジャックがオフィスにいるときならば非常に外交的であり、もしも大勢の他人のなかにいるときならばやや外交的で、もしもストレスを感じている時ならば非常に内向的、という具合だ。」と説明している。

この説明を読んで個性について、平野啓一郎(著)「私とは何か『個人』から『分人』へ』(ブログ記事)で「一人の人間は、複数の分人のネットワーク」だと言っていたことを思い出し、同じ考え方であることに気が付いた。

平均主義と個性学のアプローチの違いも興味深い。「平均主義は、集計してから分析する方法を大前提としており、個性学では分析してから集計する方法を大前提としている。」「個性学のアプローチははるかに多くのデータが必要とされる欠点があるが、いまやデジタル時代となり大量のデータを蓄積して操作する能力が手に入っているが、不足しているのは積極的に利用する心構えだけだ」と著者は述べている。

約100年前に発明された平均主義はその時代の科学と技術を反映した考え方であり、科学と技術が進歩したこれからの時代においては個性学のアプローチが重要となり、個性を活かす企業が生き残り、教育は「平等なフィット」の考え方を取り入れていくといった方向性が分かった。

口コミ

書評記事

ASAMANA manager's-blog : 書評 『ハーバードの個性学入門-平均思考は捨てなさい』

【書評】『平均思考は捨てなさい 出る杭を伸ばす個の科学』トッド・ローズ 小坂恵理:訳 早川書房 - ゆとりの休日

【書評】平均思考は捨てなさい 出る杭を伸ばす個の科学

参考文献

動画

The Myth of Average: Todd Rose at TEDxSonomaCounty

著者のトッド・ローズがこの本について「TEDxSonomaCount」で講演したビデオです。

The Myth of Average: Todd Rose at TEDxSonomaCounty

TEDx】平均値の神話。 TEDxSonomaCountyでのトッド・ローズ - VoiceTube 動画で英語を学ぶ

TED「ビデオによる教育の再発明」:サルマン・カーン

第6章 「進歩のペース」の中で、非営利の教育機関「カーン・アカデミー」がネットを通じて「世界水準の教育を誰にでもどこでも無償で」提供することを理念として掲げている、と引用されています。

サルマン・カーン「ビデオによる教育の再発明」

書籍

多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織:マシュー・サイド(著)

この本(平均思考は捨てなさい)が参考文献として引用されている本です。

ブログ記事を書きましたので参考にしてみてください。

マシュー・サイド(著)ディスカヴァー・トゥエンティワン(出版社)2021/6/25(発売日)366(ページ数)

世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法:ピョートル・フェリクス・グジバチ(著)

「第4章 才能にはバラツキがある」で、当初グーグルは名門校で修士号以上の学位を取得した社員ばかり採用していましたが、採用された社員の多くは経営陣が期待したほどの実績を上げられず、分析するために多くの時間とお金をかけたという話が紹介されています。

グーグルが組織活動を科学的に分析した「プロジェクト・アリストテレス」から得られたチームづくりの方法が書かれた本です。

ピョートル・フェリクス・グジバチ(著)朝日新聞出版(出版社)2018/8/20(発売日)248P(ページ数)

Dark Horse 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代:トッド・ローズ(著)

著者(トッド・ローズ)が次に出版した本です。

amazon.co.jp書籍情報より引用
「『ダークホース(型破りな成功をした人)』たちの最大の共通点は『本来の自分であること(=充足感)』を追い求めていたらいつの間にか成功していたということ。学歴もこれまでの経験も関係ない!誰でも活用できる新しい時代の「成功への地図」が今、ここに明かされる!」

トッド・ローズ , オギ・オーガス(著)大浦 千鶴子(翻訳)伊藤 羊一(解説)三笠書房(出版社)2021/8/20(発売日)320P(ページ数)

リスキリングがわかる本おすすめ

まとめ

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介しました。

テレビや仕事でよく耳にする「平均」という言葉。つい気になってしまう「平均」と自分との違い。

平均とは何なのか?平均は何のために発明されたのか?

一方、個性とは何なのか?個性を活かすためにはどうしたらいいのか?

企業の人事・教育部門、政府や行政の政策・施策部門、教育・学校機関のビジネス・パーソンや、子どもの才能を活かしたい人、個性を活かす社会を考えている人に、一読をおすすめする本です。

トッド・ローズ(著)小坂 恵里(翻訳)早川書房(出版社)2017/5/25(発売日)336P(ページ数)
トッド・ローズ(著)小坂 恵里(翻訳)早川書房(出版社)2019/3/20(発売日)336P(ページ数)
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本の目次(詳細版)

この本の目次をくわしく引用して紹介します。

  • はじめにーーみんなと同じになるための競争
    • 見当違いの理想
    • 平均という隠れた暴君
    • 個性が約束する未来
  • 第1部 平均の時代
    • 第1章 平均の発明
      • 社会を支配する数字
      • 平均人
      • 有能者と低能者
      • 平均主義者の台頭
    • 第2章 私たちの世界はいかに標準化されたか
      • 始めに組織ありき
      • マネージャーの誕生
      • 教育という工場
      • 優等生と劣等生
      • タイプやランクが支配する世界
    • 第3章 平均を王座から引きずりおろす
      • エルゴード性の罠とスイッチ
      • 個性学
      • 分析してから集計する
      • 個性は重要である
  • 第2部 個性の原理
    • 第4章 才能にはバラツキがある
      • バラツキの原理
      • 相関関係は常に成立するわけではない
      • 才能を隠している覆いを取り払う
      • 知られざる才能について理解する力
    • 第5章 特性は神話である
      • コンテクストの原理
      • 条件(イフ)と帰結(ゼン)のシグネチャー
      • あなたは正直、それとも不正直?
      • 才能は特別なコンテクストで発揮される
      • 他人のありのままの姿を知る
    • 第6章 私たちは誰もが、行く人の少ない道を歩んでいる
      • 迂回路の原理
      • 進歩のペース
      • 発達の網の目構造
      • 成功までの道なき道
  • 第3部 個人の時代
    • 第7章 企業が個性を重視すると
      • コストコにおける忠誠心の秘密
      • ゾーホーはいかに巨人の成果を上回ったのか
      • モーニングスターでイノベーションを促す
      • ウィンウィンの資本主義
    • 第8章 高等教育に平均はいらない
      • みんなと同じことで秀でる
      • ディプロマではなく、資格証明書を授与する
      • 成績ではなくコンピテンシーで評価する
      • 教育の進路を学生に決定させる
      • 個人の時代の教育
    • 第9章 「機会均等」の解釈を見直す
      • うまくフィットする
      • 夢を回復する
  • 謝辞
  • 訳者あとがき
  • 原注

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