暗号資産(仮想通貨)について、通貨や資産としての機能、金融を超えて社会に与える影響、さらに暗号資産のリスクと課題まで、簡潔な文章と図解でわかりやすく解説している本です。
暗号資産についてはじめて学ぶ人、暗号資産について短時間で要点を押さえてもっと知りたい人に一読をおすすめします。
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介します。
本の概要
書籍情報
著者紹介
開米 瑞浩(かいまい・みずひろ)
難解な技術情報の論理構造を整理し図解説明する技術の教育研修プログラムを開発し、2003年から独立し企業人材教育を手がける。テクノロジー、サイエンス分野のライターや教材開発も手がける。
本の内容
この本の内容を出版社サイトから引用して紹介します。
暗号資産と呼ばれるようになった仮想通貨。
代表的なビットコインは2017年の第1次ブームのあと、コロナ禍の影響で再び高騰します。
近年、暗号資産はイーサリアムの備えるスマートコントラクト技術で、メタバースなどWeb3における金融として注目されています。
デジタル・コンテンツの唯一性を担保するNFT、中央銀行デジタル通貨(CBDC)など、新しい構想も続々登場しています。
本書は基盤となるブロックチェーン技術からはじめ、通貨や資産としての機能、さらにリスクと課題までやさしく解説します。
ブロックチェーンが金融を超えて社会に与える影響を含め、いま知っておきたい暗号資産にかかわる情報を網羅しています。
出版社サイトより引用
本の目次
本の目次を引用して紹介します。
- Part1 ビットコインの枠を超える 投機から実用へ! 暗号資産の最前線
- Part2 ブームを超えて注目される理由 暗号資産を読み解く7つの視点
- Part3 お金の成り立ちから探る 暗号資産は「通貨」となるのか
- Part4 マーケットでの売買のしくみ 暗号資産の取引方法を知ろう
- Part5 デジタル・コンテンツの流通を変える 暗号資産/NFT技術とは何か?
- Part6 暗号資産の枠を超えて広がる ブロックチェーンが社会を変える
- Part7 リスクと将来性を正しく理解する 暗号資産の課題と未来
- 付録 〈本文中で紹介した組織・サービスのURL一覧〉
- 索引
もっとくわしく見たい場合は記事の最後に、本の目次(詳細版)があります。
注目点
この本はどのようなことが書かれているのか?読んでみて注目した点を3つ紹介します。
モノとしての価値がなくても「資産」は成り立つ
1つ目に注目した点は「Part2 ブームを超えて注目される理由 暗号資産を読み解く7つの視点」に書かれている「モノとして価値がなくても『資産』は成り立つ」です。
著者は、歴史をひもとくと「モノとしての価値がなくても、希少なものを所有していると公認されればそれは資産となる」ことがわかる、と述べています。
そして、暗号資産の場合は、テクノロジーによって「希少性」と「公認性」が成り立つしくみが作られている「資産」と考えて良いでしょう、と述べています。
歴史的に「資産」とみなされたものの例を、以下のように挙げています。
素材 | 分割譲渡 | 地域・時期 |
---|---|---|
貴金属 | 容易 | 世界各地 |
石貨 | 不可 | 20世紀初めまでのヤップ島 |
貝貨 | 容易 | アジア、アフリカ、オセアニア |
チューリップ | 容易 | 17世紀のオランダ |
不動産 | 困難 | 世界各地 |
「通貨」がお金として通用する理由とは?
2つ目に注目した点は「Part3 お金の成り立ちから探る 暗号資産は「通貨」となるのか」に書かれている「『通貨』がお金として通用する理由とは?」です。
著者は、「そもそも法定通貨もなぜそれがお金として通用するかを改めて考えると不思議です。1万円札もしょせんは印刷された紙切れにすぎず、製造コストは30円以下なのになぜ1万円として通用するのでしょうか?」と問いかけています。
そしてその答えは、要するに「みんなが『ありがたい!』と思うから」であって、それ以上でも以下でもありません、と述べています。
これらを踏まえて暗号資産についての考え、を以下のように述べています。
たとえばビットコインは「マイニングという苦労をして獲得するもの」であり、「ビットコインが通用するコミュニティへの貢献の証拠」と考えることができます。
そのコミュニティに属さない人には理解不能ですが、そもそもお金というのはそういうものなのです。
開米 瑞浩. 60分でわかる! 暗号資産 超入門 (Japanese Edition) (pp.77-78). Kindle 版.
裏付けのない資産の長期保有は価格変動に注意
3つ目に注目した点は「Part7 リスクと将来性を正しく理解する 暗号資産の課題と未来」に書かれている「裏付けのない資産の長期保有は価格変動に注意」です。
著者は「暗号資産は通常のお金(貨幣)と同じ交換媒介機能・価値貯蔵機能を持っているわけではないことに注意しましょう。」と述べています。
そして、暗号資産は基本的に「誰もその価値の維持に責任を持たない」ものですから長期間誰にでも通用する保証・実績はありません、と述べています。
実物、現金、暗号資産が長期間広く通用すると期待できるか?について以下のように説明しています。
実物(貴金属、宝石等) | 長期間、国境も越えて広く通用すると期待できるが価格変動はある |
現金(法定通貨、紙幣、貯金) | 通常は長期通用するが、発行国の国内のみ(例外あり) |
暗号資産(非ステーブル) | 長期広域通用する保証・実績はない。価格変動も大きい。 |
暗号資産(ステーブル) | 長期広域通用する保証・実績はない。価格変動は発行体の管理に依存する。 |
感想・口コミ・書評記事
感想
「暗号資産」がタイトルに含まれている最近の本であり、暗号資産に対してフラットな立場で解説されている本のようだったので購入した。
本全体を通じて、暗号資産にまつわる全部で68個の「問い」を投げかけて、それに短い文と図表で答えていくような形式で、簡潔に要点を押さえて解説されているので、ひとつひとつテンポ良く興味深く読むことができた。
特にわかりやすかったのは、暗号資産を既存の資産や通貨と対比して、同じところと違うところを解説している点です。
たとえば「024 現代の通貨はすべてある種の仮想通貨である」について、ビットコインなど狭義の仮想通貨の4つの特徴を説明して、円やドルのような法定通貨の銀行預金も同じ4つの特徴を備えているので「広義の仮想通貨である」と述べていることなど。
それぞれの章の最後にコラムがあり、そこでは筆者の体験談が率直に書かれていて、解説部分とのギャップもあり楽しく興味深く読みました。
気になった文の一つに「実のところ世界初の暗号資産であるビットコインは、交換媒介機能を念頭に設計されたと考えられます。」があり、それ以上の解説はなかったので、別の書籍などでさらに調べてみようと思う。
この本を読んでみて、暗号資産のみならず、資産・通貨・貨幣の歴史や未来により興味・関心をおぼえるようになった。
はじめて暗号資産について学ぶ人はもちろん、ある程度知識があると思っている人も現状の理解度をチェックするために、この本を読むのもおすすめです。
口コミ
書評記事
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参考文献
この本には参考文献に記載されていなかったので、暗号資産に関連する本を紹介します。
暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない:坂井 豊貴
この本の概要、注目点、感想・口コミ、目次などをブログ記事で紹介しています。
お金の未来:山本康正, ジェリー・チー
ビットコイン・スタンダード:S・アモウズ
暗号資産がわかる本おすすめ
まとめ
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、次のステップ、を紹介しました。
暗号資産(仮想通貨)について、通貨や資産としての機能、金融を超えて社会に与える影響、さらに暗号資産のリスクと課題まで、簡潔な文章と図解でわかりやすく解説している本です。
暗号資産についてはじめて学ぶ人、暗号資産について短時間で要点を押さえてもっと知りたい人に一読をおすすめします。
本の目次(詳細版)
この本の目次(詳細版)を引用して紹介します。
- Part1 ビットコインの枠を超える 投機から実用へ! 暗号資産の最前線
- 001 1BTC=700万円超えの衝撃
- 002 エルサルバドルがビットコインを法定通貨に加えた理由とは
- 003 コロナ禍が加速したチェコのデジタル通貨プロジェクト
- 004 中国人民元など世界各国中銀がデジタル通貨発行を計画
- 005 運用残高10兆円を超えた分散型金融「DeFi」とは
- 006 デジタル・コンテンツ取引に使われるNFTとは
- 007 暗号資産のムーブメントが生まれた背景とは(1)
- 008 暗号資産のムーブメントが生まれた背景とは(2)
- 009 「仮想通貨」が「暗号資産」に変わったのはなぜ?
- 010 無数の暗号資産が乱立するのはなぜ?
- 011 高額落札が続出するNFTはバブルなのか?
- 012 投資・投機対象としての暗号資産・NFT
- 013 ビジネス実務を回す手段としての暗号資産・NFT
- 014 ブームの陰で拡大する副作用・悪用への警戒
- Column 高額NFTはポトラッチ?
- Part2 ブームを超えて注目される理由 暗号資産を読み解く7つの視点
- 015 モノとしての価値がなくても「資産」は成り立つ
- 016 暗号資産なら銀行に頼らず金融取引ができる?
- 017 暗号資産を成り立たせているブロックチェーン技術とは
- 018 ブロックチェーンの本当の意味は「分散台帳による低コストな情報共有」
- 019 暗号資産とブロックチェーンが社会を変える、その理由とは
- 020 暗号資産の拡大がもたらす新たな問題とは
- 021 暗号資産を管理統制しようとする動きとは
- Column テクノロジーが人を救う?
- Part3 お金の成り立ちから探る 暗号資産は「通貨」となるのか
- 022 「通貨」がお金として通用する理由とは?
- 023 通貨には裏付け資産が必要なのか?
- 024 現代の通貨はすべてある種の仮想通貨である
- 025 通貨には「尺度」「交換」「貯蔵」の機能がある
- 026 デジタル通貨、電子マネーと暗号資産の違いとは
- 027 デジタル通貨にはトークン型と口座型がある
- 028 暗号技術によってデジタル通貨の仕組みが作れるワケ
- 029 暗号資産の取引は経済統計に表れない
- Column この木切れがお金です?
- Part4 マーケットでの売買のしくみ 暗号資産の取引方法を知ろう
- 030 暗号資産取引に使う秘密鍵・公開鍵・アドレスとは?
- 031 暗号資産取引にはウォレットが必要
- 032 ウォレットを作る方法にはどんなものがある?
- 033 「取引所」の利用者同士で売買する
- 034 「販売所」を通じて暗号資産交換業者との間で売買する
- 035 注文方式を理解して売買する
- 036 暗号資産の価格動向に気を配る
- 037 ウォレットを管理するために注意すべきことは
- 038 取引方針を決めて運用する
- Column 利食いで急いで損伸ばす?
- Part5 デジタル・コンテンツの流通を変える 暗号資産/NFT技術とは何か?
- 039 「トークン」は何らかの価値の「印(証拠)」となるもの
- 040 IDつきリソースにひもづけられたトークンは非代替性
- 041 NFTの「複製不可」性をどう担保する?
- 042 買ったはずのNFTがなくなってしまうことはある?
- 043 NFTマーケットプレイスの役割とは?
- 044 NFTクリエイターにとって有利なしくみ?
- 045 メタバースの展開に役立つNFT
- 046 投機的マーケットと持続的マーケットは別物と理解しよう
- Column バズワードで投資をあおる奴は無視しよう
- Part6 暗号資産の枠を超えて広がる ブロックチェーンが社会を変える
- 047 国際送金がとても面倒くさいそのワケは
- 048 リップル:迅速・安価な国際送金ソリューション
- 049 暗号資産のしくみは地域通貨と相性が良い
- 050 美術品情報を登録して不正取引を防止
- 051 キャラクタを育成して販売できるNFTゲーム
- 052 物流網の偽造品対策への応用
- 053 食品トレーサビリティシステムへの応用
- 054 電気自動車(EV)バッテリー再利用を促進
- 055 サプライチェーンの拡大・高効率化
- 056 行政手続きのプラットフォームになる
- 057 電子契約のプラットフォームになる
- 058 IoTのプラットフォームになる
- 059 エンタープライズ・ブロックチェーンへの展開
- Column ブロックチェーンの用途、広すぎない?
- Part7 リスクと将来性を正しく理解する 暗号資産の課題と未来
- 060 暗号資産の裏側にあるさまざまなリスクとは
- 061 裏付けのない資産の長期保有は価格変動に注意
- 062 ハッキングや事故・災害によるウォレット盗難・消失に注意
- 063 決済プラットフォームとしての弱点とは
- 064 そのNFTは本当に価値あるもの?
- 065 法規制の強化は成長の証拠
- 066 グリーン経済の流れに逆行するエネルギー消費への批判
- 067 暗号資産決済が広まっても銀行はなくならない
- 068 マネーロンダリング対策は国際的な義務
- 付録 〈本文中で紹介した組織・サービスのURL一覧〉
- 索引