この本は、web3、メタバース、NFTというテクノロジーによって、
- 個人・地域・社会・日本・世界がどのように変わるのか?
- 変化の過程で起こりえる課題は何か?
- これからの日本人はどのように取り組むべきか?
を考えさせてくれる本です。
はじめてweb3、メタバース、NFTについて学ぶ初級者から、すでに学んでいる中級者・上級者まで一読をおすすめする本です。
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介します。
本の概要
書誌情報
著者プロフィール
伊藤 穰一(いとう・じょういち)
デジタルガレージ 取締役
共同創業者 チーフアーキテクト
千葉工業大学 変革センター センター長
デジタルアーキテクト、ベンチャーキャピタリスト、起業家、作家、学者として主にテクノロジーの変革に取り組む。
民主主義とガバナンス、気候変動、学問と科学のシステムの再設計など様々な課題解決に向けて活動中。
2011年から2019年までは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの所長を務めた。(著者略歴より引用)
本の目的
インターネットが誕生して、約半世紀。世の中に普及して20年余り。
ほとんどの人にとって、「インターネットなしの生活」はもはや、考えられないでしょう。
web3、メタバース、NFTも、そうなっていく可能性が高い。
「これがない時代があったなんて信じられない」「これを使いこなせない人はすごく困る」というほどの劇的な変化が、いま、新たに起ころうとしているのです。
「働き方」「文化」「アイデンティティ」「教育」「民主主義」……大変化の波は、あらゆる領域に及びます。
誰も、逃れることはできません。その大変化とは、いったいどのようなものか?
──それをわかりやすく解明するのが本書です。
伊藤 穰一. テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる (Japanese Edition) (pp.3-4). Kindle 版.
本の目次
本の目次を引用して紹介します。
- 序章 ー web3、メタバース、NFTで世界はこうなる
- 第1章 働き方 ー 仕事は、「組織型」から「プロジェクト型」に変わる
- 第2章 文化 ー 人々の「情熱」が資産になる
- 第3章 アイデンティティ ー 僕たちは、複数の「自己」を使いこなし、生きていく
- 第4章 教育 ー 社会は、学歴至上主義から脱去する
- 第5章 民主主義 ー 新たな直接民主制が実現する
- 第6章 すべてが激変する未来に、日本はどう備えるべきか
もっとくわしく見たい場合は、本の目次(詳細版)が記事の最後にあります。
注目点
この本を読んで、特に注目した点を3つ紹介します。
ニューロダイバーシティとメタバース
著者は「第3章 アイデンティティ」でメタバースには、バーチャルリアリティともう一つ重要なキーワード「多様性」があると述べ、「ニューロダイバーシティ」を紹介しています。
ニューロダイバーシティ(Neurodiversity、神経多様性)とは、経済産業省の記述から引用すると「Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)という2つの言葉が組み合わされて生まれた、脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方です。
自閉症やADHDなど発達障害とされる人は、目を合わせて言葉を交わしたり相手の思考や感情を読み取りながら自分を表現する、といった人との対面でのコミュニケーションが苦手な場合が多いが、メタバースに入るとコミュニケーションが変わる、と著者は述べています。
以前、ニューロダイバーシティ(神経構造の多様性)研究の第一人者である歴史社会学者、池上英子さんとの対談で、非常に興味深い話を聞きました。
(中略)
ところがメタバースに入ると、そういう「コミュニケーションに障がいがある」とされる人々が、生き生きと、スムーズに他者とコミュニケーションをとりはじめるそうです。
こうした事例に触れて改めて振り返ってみると、この現実世界は、僕たちが認識している以上に不平等なコミュニケーション空間なのかもしれません。
伊藤 穰一. テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる (Japanese Edition) (p.98). Kindle 版.
池上英子さんのニューロダイバーシティに関する書籍を参考文献に掲載しています。
クリエイティブ・コンフィデンスとweb3
著者は「第4章 教育」で、今後の教育で重要になってくる「クリエイティブ・コンフィデンス(自分の創造性に対する自信)」を挙げています。
「自分はダメな人間だ」という自己意識が形成されて、たとえ意見やアイデアがあっても自信を持って表現できなくなってしまうと、トップダウンの指示をこなすことだけは得意な、しかし、発想力に欠けた人間になってしまう恐れがある、と著者は述べています。
web3のDAOに代表される分散型(非中央集権型)社会では、「私はこんなことができます」「こういうのはどうでしょうか」と自分から手を挙げることが必須です。
クリエイティブ・コンフィデンスのない人が活躍するのは難しいでしょう。
クリエイティブ・コンフィデンスは、周りから応援されることで身につくといいます。
伊藤 穰一. テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる (Japanese Edition) (p.123). Kindle 版.
クリエイティブ・コンフィデンスに関する書籍を参考文献に掲載しています。
透明性の確保と衆愚政治の予防
著者は、「第5章 民主主義」で、ガバナンスの民主化・透明化によって、コミュニティの意思決定が衆愚的になってしまう恐れ、を述べています。
情報がすべて見えていても、その情報が意味することがわからなければ、表面的なところばかり見る人や周囲の意見に左右される人が出てきて、投票の際に本当にふさわしい判断ができず、ポピュリズム(大衆迎合型政治)になるかもしれない、と著者は述べています。
著者は、透明性の確保と衆愚政治の予防をバランスする解決策を以下のように述べています。
たとえば、知識を持っていて信頼できるメンバーに投票権を委ねるというのは1つの解決策です。
他者に判断を委ねることにはなりますが、少なくとも直接、思いを伝えられますから、既存の代議制よりは透明性が保たれます。
ほかには、専門家が集まる「サブDAO」をDAO内につくり、重要事項の意思決定はそこで行われるようにするなど、すでに様々な議論が進められています。
伊藤 穰一. テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる (Japanese Edition) (p.131). Kindle 版.
著者は、web3ではこれまでの世界ではできなかった壮大なガバナンスの実験が行われており、憲法学者のローレンス・レッシグさんがweb3でもっとも興味深いところだと話していたことを述べています。
感想・口コミ・書評記事
感想
これまでweb3、メタバース、NFTについて数冊の本を読んできて、なんとなく分かっていたことや疑問に感じていたことが、この本で整理されズバリ言語化されて書かれていたので、とても有意義だった。
- NFTはバイヤーやアーティストの新たな収入源になることを利点として説明されることが多いが、本質的には「好きだから買う」というアーティストと所有する人との関係性が変わることに価値がある、と述べていること。
- web3によって働き方や民主主義が、個を主体とした柔軟な組織形態で運用することが可能になるが、これからの私たちの行動や私たちが望むものによっては「新たな支配者」が現れるだけで「真の民主化」は叶わないかもしれない、と述べていること。
web3、メタバース、NFTを学び、社会で実現していく人にとって、この本は本質的なことが凝縮されているので、出てくる言葉、事例、考え方について、読み返して関連する情報を調べて学んだり実際に行動してみることが、この本を十二分に活用することになると感じた。
はじめてweb3、メタバース、NFTについて学ぶ初級者から、すでに学んでいる中級者・上級者まで一読をおすすめしたい本だ。
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書評Web記事
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【読書感想】テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる ☆☆☆ - 琥珀色の戯言
【書評】エンジニア必読!テクノロジーが予測する未来 | 黒ふくろうの森
参考文献
ニューロダイバーシティ by 池上英子
「第3章 アイデンティティ」で、ニューロダイバーシティ(神経構造の多様性)について引用している、池上英子の著作です。
池上英子さんと伊藤穰一さんのポッドキャスト対談も聴いてみてください。(音声書き起こしテキストで読むこともできます)
クリエティブ・コンフィデンス by デイヴィッド・ケリー, トム・ケリー
「第4章 教育」で、クリエイティブ・コンフィデンス(自分の創造性に対する自信)について引用している書籍です。
著者(デビット・ケリー)の動画(11分30秒)「自分のクリエイティビティに自信を持つ方法」もご覧ください。
パーパス・ベース・ラーニング by オードリー・タン
「第4章 教育」で、パーパス・ベース・ラーニング(目的からはじまる学び)についてオードリー・タンとの話を紹介しています。
パーパス・ベース・ラーニングとは、たとえば、「いい空気の環境で暮らす」「きれいな水を飲めるようにする」という目的が先にあって、そのためには何が必要かと考え、そこからプロジェクトが発足し、必要なことを学んでいく、というコンセプトであると筆者は述べています。
オードリー・タンは台湾のデジタル担当政務委員を努めて民主主義とデジタルの融合を推進しており、以下の書籍が参考になります。
オードリー・タンさんと伊藤穰一さんのポッドキャスト対談も聴いてみてください。(音声書き起こしテキストで読むこともできます)
- Joi Ito's Podcast - 変革への道 - #6 就任から5年を迎えたデジタル担当大臣オードリー・タン。その功績から、我々が学ぶべきものとは?
- Joi Ito's Podcast - 変革への道 - #7 台湾デジタル担当大臣オードリー・タンに伺う、ニッポンのデジタル政策に関するアドバイスとは?
Web3がわかる本おすすめ
メタバースがわかる本おすすめ
NFTがわかる本おすすめ
まとめ
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介しました。
この本は、web3、メタバース、NFTというテクノロジーによって、
- 個人・地域・社会・日本・世界がどのように変わるのか?
- 変化の過程で起こりえる課題は何か?
- これからの日本人はどのように取り組むべきか?
を考えさせてくれる本です。
はじめてweb3、メタバース、NFTについて学ぶ初級者から、すでに学んでいる中級者・上級者まで一読をおすすめする本です。
本の目次(詳細版)
この本の目次をくわしく引用して紹介します。
- 序章 ー web3、メタバース、NFTで世界はこうなる
- Web1.0、Web2.0、そしてweb3は、どんな革命を起こしたか
- web3のキーワードは「分散」
- 世界はディストピア化する?
- 2022年はなぜ、「web3元年」になったのか
- 加速するクリプトエコノミーへの人口移動
- web3とは、「トークン」が行き交う世界
- 「通貨」でしかないビットコイン、「コミュニティありき」のイーサリアム
- Web1.0は「読む」、Web2.0は「書く」、web3は「参加する」
- 新経済圏で、社会問題が解決する
- 「メタバース」はどこにあるのか
- 世界はこれから、こうなる
- 第1章 働き方 ー 仕事は、「組織型」から「プロジェクト型」に変わる
- ビジネスは「映画制作」のようになる
- プロジェクトは「パズルのピース」を組み合わせるものへ
- より手軽に、より強く結びつき、成し遂げる
- DAOで、「株主、経営者、従業員」の構図が崩れる
- 働き方は、勤め先に縛られなくなる
- 仕事は、おもしろいことに「本気で参加する」ものになる
- 報酬、配当、権利を「トークン」が司る
- DAOは万能なのか
- 「お金に換算できないトークン」の価値
- 仕事の「内容・場所・時間」からの解放は、格差是正につながるか
- 第2章 文化 ー 人々の「情熱」が資産になる
- ブロックチェーンで実現した真贋・所有証明
- 「NFTバブル」の次に来るもの
- 「かたちのない価値」が表現できるようになる
- アーティストが事業者になる
- NFTが環境を破壊する?
- 文化は「消費するもの」から「コミュニティに参加するもの」になる
- 「D to F」で変容するファンコミュニティ
- 「好きだから買う」ことにこそ意味がある
- 「売れそうなNFT」だらけのウォレットはダサい
- 何をNFT化したらおもしろいか
- たとえば「宗教的行為」「学位」をNFT化する
- 「BANKLESS」ー銀行なしで生きる若者たち
- 第3章 アイデンティティ ー 僕たちは、複数の「自己」を使いこなし、生きていく
- 人類は、「身体性」から解放される
- ニューロダイバーシティー「脳神経の多様性」が描く未来
- バーチャル空間の「自分の部屋」でできること
- web3で、人はふたたび「所有の主体」になる
- 自分の「評判」をマネジメントする
- 場ごとの文脈に沿った自己として存在する
- 「本当は何者なのか」が関係ない世界
- 第4章 教育 ー 社会は、学歴至上主義から脱去する
- 学歴以上に個人の才能を物語るもの
- 学びと仕事が一本化する
- 学ぶ動機が情熱を生むーweb3がもたらす「参加型教育」
- 文系・理系を分けるナンセンス
- 「下請け」に甘んじてきた技術者を解放せよ
- web3は役に立つかー答えは自分のなかにある
- 本物の「アントレプレナーシップ」を育てる
- 第5章 民主主義 ー 新たな直接民主制が実現する
- ガバナンスが民主化する
- 衆愚政治に陥らないために
- 既存の世界は、新しい経済圏を敵視するか
- 加熱し続けるクリプトエコノミー
- 必ず知っておくべきリスク
- 「新たな支配者」が現れるか、「真の民主化」が叶うか
- DAOに見る、環境問題解決への道筋
- 新時代のメリットを享受できる人、できない人
- web3参入のファーストステップ
- 第6章 すべてが激変する未来に、日本はどう備えるべきか
- 最先端テクノロジーが、日本再生の突破口を開く
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