書籍「ChatGPTと語る未来」は、リード・ホフマンとGPT-4の対話によって、AIの潜在的なメリットとリスクを深く検討しながら、人間の可能性を最大限に引き出すために、どのようにAIを使うかというビジョンを提示している本です。
ChatGPTのメリットとリスクに興味がある人や、人間とAIが共存する未来に興味ある人、そしてChatGPTの能力を引き出す使い方に興味ある人、などに一読をおすすめします。
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介します。
本の概要
書籍情報
日本語版
タイトル | ChatGPTと語る未来 AIで人間の可能性を最大限に引き出す |
著者 | リード・ホフマン, GPT-4 |
翻訳 | 井上 大剛, 長尾 莉紗, 酒井 章文 |
出版社 | 日経BP |
発売日 | 2023/7/6 |
単行本ページ数 | 248 |
原著(英語版)
著者紹介
Reid Hoffman(リード・ホフマン)
リンクトイン、Inflection AIの共同創業者で、ベンチャー投資会社Greylock Partnersのパートナー。ChatGPTを開発するOpenAIの元取締役。
ポッドキャスト「Masters of Scale」「Possible」ではMCを担当。
著者が伝えたいこと
著者はこの本を通じて伝えたいことを以下のように述べています。「はじめに」より一部引用。
きれいにまとまった「本らしい」本である必要はない。これはある種の「旅の記録」であり、肩ひじ張らずに探究と発見を試みるものであって、多くの選択肢のうちから私(とGPT-4)が選んだ1つの道のりの記録に過ぎない。
人間がGPT-4を助手やパートナーとして扱うことでその能力ははるかに上がる。GPT-4の文章生成能力、効率性、合成能力、拡張性と、人間の創造性、判断力、指導力が融合するのだ。
私がこうしてこの旅の記録を書いているのは、みなさんにこの考えを受け入れてもらうためでもあり、こう考えることがどのような結果をもたらすかを一緒に探ってもらうためである。
本の目次
本の目次を引用して紹介します。
- はじめに 気づきの瞬間
- 第1章 教育
- 第2章 クリエイティビティ
- 第3章 司法と正義
- 第4章 ジャーナリズム
- 第5章 ソーシャルメディア
- 第6章 仕事が激変する
- 第7章 仕事で駆使する
- 第8章 ハルシネーション(幻覚)
- 第9章 知識人との対話
- 第10章 ホモ・テクネーー技術を生み出し使える人間
- まとめ 21世紀の分岐点
もっとくわしく見たい場合は記事の最後に、本の目次(詳細版)があります。
注目点
この本はどのようなことが書かれているのか?読んでみて注目した点を3つ紹介します。
もっと、もっと!問いがメディアの価値をさらに引き出す
1つ目に注目した点は「第4章 ジャーナリズム」に書かれている「もっと、もっと!問いがメディアの価値をさらに引き出す」です。
著者は、「従来型のウェブベースのパーソナライゼーションは、ウェブサイトがつねに視聴者の行動を監視しつづけることで機能しているのに対し、GPT-4とChatGPTは、ユーザーの質問やプロンプトに対して、関連の深い情報をリアルタイムで返しているだけだ。」と述べています。
そして、「ここには、LLMの動作の特徴がかなり明確に現れていると言えるが、同時に(いまのところ)十分には評価されていない点でもある。」と指摘し、GPT-4とChatGPTによるユーザ体験を以下のように表現しています。
特定の商品や政治家などを宣伝するために設計されたチャットボットなどとは違って、GPT4とChatGPTは、あなたの話したいことがどのようなものであれ、そのテーマを掘り下げることが「可能」なだけでなく、「信じられないほど積極的に」話を進めてくれる。
このような特徴が、高度にパーソナライズされたユーザー体験を生み出す原動力になる。
リード・ホフマン,GPT-4. ChatGPTと語る未来 AIで人間の可能性を最大限に引き出す (p.108). Kindle 版.
自分の役割は大工ではなく、映画監督だと考える
2つ目に注目した点は「第7章 仕事で駆使する」の「3つの便利な基本原則」に書かれている「自分の役割は大工ではなく、映画監督だと考える」です。
著者は、GPT-4を自分の仕事に使おうとするなかで発見した、3つの便利な基本原則を紹介しています。
- [原則1]GPT-4を全知全能の神ではなく、大学生の研究助手のように扱う
- [原則2]自分の役割は大工ではなく、映画監督だと考える
- [原則3]とにかくやってみる!
そして[原則2]について、「GPT-4を使うのは、物理的な道具を操って予測可能な計画済みの結果を出すというよりも、映画のワンシーンを演出するのに近い」と述べて、以下のように解説しています。
もちろんGPT4は人間の俳優ではないが、指示の仕方には近いものがある。
望む結果を得るために、監督が同じシーンを何度も撮影するのと同じように、特定のプロンプトを少しずつ調節しながら何度も試す必要があるかもしれない。つまるところ、これは共同作業なのだ。
リード・ホフマン,GPT-4. ChatGPTと語る未来 AIで人間の可能性を最大限に引き出す (p.163). Kindle 版.
ガリレオとチューリングによる「対話」論
3つ目に注目した点は「第9章 知識人との対話」に書かれている「ガリレオとチューリングによる「対話」論」です。
著者は、「太古の昔から、人間は文明の中で『対話』という形式を使って、重要なテーマを公的に掘り下げてきた。」と述べて、GPT-4に有名な知識人同士の対話をシミュレーションさせて、GPT-4がどれくらい幅広く、深い、巧みな回答を返せるかを試しています。
ホフマン:(17世紀の科学者)ガリレオ・ガリレイと(20世紀のイギリスのコンピューター科学者)アラン・チューリングによる、ガリレオの「科学的対話」とAIによるプロンプトへの応答の違いをテーマとした対談を書いてほしい。
このプロンプトに対してGPT-4が回答した「ありえたかもしれない対話」の一部は以下のような内容です。
ガリレオ:ジョークや比喩、たとえ話や具体例を入れることで、生き生きとしたウィットに富む対話になるようにしました。また、好奇心や疑い、いら立ちや感心、皮肉など、話し手の人間としての感情やモチベーションなども表現するように心がけました。読者には、ただ本を読んでいるというよりも、本物の会話を聞いているような気分になってもらいたかったのです。
チューリング:ガリレオさんの卓越した技量と創造力に敬服します。あなたの著書は、文学作品としても科学書としてもすばらしいものだと思います。ここで私自身の仕事について少しお話しさせてください。あなたの作品とどこか通じるところがあります。私は、機械が人間のように考え、コミュニケーションを取ることができるかに関心があります。そして、その能力を測るために、チューリングテストというものを考案しました。
リード・ホフマン,GPT-4. ChatGPTと語る未来 AIで人間の可能性を最大限に引き出す (pp.221-222). Kindle 版.
感想・口コミ・書評記事
感想
この本は、各章のテーマについて著者のリード・ホフマンが自身の考えを提案し、そこから生まれる質問をGPT-4にぶつけてみて、その回答からまた思考を深めて、気づきを得ていく、という、対話の過程が記録されています。
これまでに読んだことがない形式の内容で若干読みにくい面があるが、人間とGPT-4(ChatGPT)が共同作業でテーマ(課題)について思考を深めていくプロセスが記録されており、GPT-4の能力を活かす方法としてとても参考になりました。
この本で使われているプロンプトをいくつか実際にChatGPT(GPT-4)に入力してみたところ、おそらく記載されていないプロンプトがあるために本の文章とは違う内容が回答されました。そのことから、この本で取り上げているテーマや問い(質問)を参考にして、自分自身でもChatGPT(GPT-4)と対話して思考を深めていくという使い方もできそうだと感じました。
第1章から第10章にわたる内容については、今まで読んだChatGPTや生成AIの未来に関する書籍よりも一段と深い考察がされているようでした。
特に「第10章 ホモテクネ」でのホフマンとGPT-4の対話のやりとりは、両者の知識と洞察が重なり合い、考察が深まっていくように感じられました。
著者の社会とテクノロジーの歴史についての幅広い知識と経験をもとにして、ChatGPT(GPT-4)の能力を引き出しながら対話を重ねていくと、人間とテクノロジーの未来にどのようビジョンが描けるのか、を知ることができるとても興味深い書籍です。
口コミ・レビュー
Twitterの日本語感想
ChatGPT Plusによる英語レビュー要約
ChatGPT Plus + LinkReaderプラグインを使って、英語レビューを調べてみました。
プロンプト:「Impromptu: Amplifying Our Humanity Through AI」について、英語で書かれているレビュー記事を5件読んで、箇条書きで要約を作成してください。
ChatGPT(GPT-4)の回答は以下の通りです。
以下は、「Impromptu: Amplifying Our Humanity Through AI」についての英語で書かれたレビュー記事の要約です:
- レビュアーは、AIと人間の行動の交差点を探るリード・ホフマンによる本書を「思考を刺激する」と評価しています。本書の最もポジティブな側面は、よく研究され、よく書かれていることです。しかし、本書は時折、AIの広告として機能しているように感じられるとの指摘もあります。
- 本書は、AIと人間性を増幅するための「興奮する」読み物であり、AIの将来の使用例を含むAIに関連する肯定的および否定的なコメントをすべて包括しています。著者は、生成的AIがどのような仕事のカテゴリーにも超研究助手として機能すると主張しています。
- レビュアーは、本書が「旅行記」のようであり、ホフマンとChatGPTとの会話を示していると評価しています。また、ホフマンが人間をホモ・テクネ(技術を使う人間)と見なす考え方を評価しています。
- 本書は、AIが私たちの世界をどのように変え、私たちの生活を改善する可能性があるかを詳しく学びたい人にとって、間違いなく読む価値があるとレビュアーは述べています。また、本書は、GPT-4が本書の多くの対話に貢献し、AIの潜在能力を示し、その効率を説得するだけでなく、日常生活でのその有用性を示すツールとして使用されています。
- レビュアーは、本書が「魅力的で興味深い」ものであり、AIのポジティブな側面とネガティブな側面をすべて包括していると評価しています。また、本書は、GPT-4とリード・ホフマンとの間で行われたさまざまなレベルの会話を読むことが「非常に満足感があり、スリリング」だったと述べています。
以上の要約は、各レビューの主要なポイントを抽出したものであり、本書の評価はレビュアーにより異なることをご理解ください。
書評記事
生成AIという道具は人類をどう変えるかーー『ChatGPTと語る未来』を読む|岩佐 文夫
OpenAI創業者の1人、リード・ホフマンの最新刊「ChatGPTと語る未来」:海外速報部ログ:オルタナティブ・ブログ
参考文献
この本の参考文献に記載されている本や関連する本を紹介します。
スタートアップ的人生(キャリア)論:リード・ホフマンほか(著)
「第6章 仕事が激変する」の「AIのアドバイスでキャリア戦略が変わる」の中で引用されています。
ChatGPTがわかる本おすすめ
生成AI(ジェネレーティブAI)がわかる本おすすめ
まとめ
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介しました。
書籍「ChatGPTと語る未来」は、リード・ホフマンとGPT-4の対話によって、AIの潜在的なメリットとリスクを深く検討しながら、人間の可能性を最大限に引き出すために、どのようにAIを使うかというビジョンを提示している本です。
ChatGPTのメリットとリスクに興味がある人や、人間とAIが共存する未来に興味ある人、そしてChatGPTの能力を引き出す使い方に興味ある人、などに一読をおすすめします。
本ブログサイトでは以下の記事も紹介しています。
本の目次(詳細版)
この本の目次(詳細版)を引用して紹介します。
- 日本語版序文 伊藤穰一
- はじめに 気づきの瞬間
- 未来旅行が始まる
- 意識を持たない新しい機械、GPT-4
- 「気づき」を受け入れる
- 第1章 教育
- 大規模言語モデルで学生にレポートの書き方を教える
- 初等・中等教育での大規模言語モデルの活用法
- 人生の明暗を分けるほど教育は重要
- AIが低所得エリアの学校教育をサポートする
- 格差を埋める圧倒的な教育ツールか、単なる自動化ツールか
- 第2章 クリエイティビティ
- AIはクリエイティブな仕事で不可欠になる
- AIはクリエイターの想像力を拡大する
- AIによる悪影響を避ける方法
- AI生成物は誰のものか
- 第3章 司法と正義
- よりよく使うために必要な議論
- 過ちではなく正しく使うために
- 身体装着型カメラ?AIのメリットとリスク
- 一般人にもリーガルサービスが使いやすくなる
- 刑務所での受刑者教育、再犯率の低下にも役立つ
- 知能犯の摘発にもAIが活躍する
- AIで思いやりのある司法制度に
- 第4章 ジャーナリズム
- AIで報道を加速せよ!
- GPT-4との対話はウェブ検索とはまったく違う成果をもたらす
- もっと、もっと!問いがメディアの価値をさらに引き出す
- フェイクニュースをつくるAI、見破るAI
- ジャーナリスト無くしてジャーナリズムなし
- 第5章 ソーシャルメディア
- AIがクリエイターをパワーアップさせる
- 私はボットなのか?それとも人間なのか?
- 全員がチャットに参加するようになる
- ソーシャルメディアAIーー新世代がやってくる
- 第6章 仕事が激変する
- AIのアドバイスでキャリア戦略が変わる
- 社員のやる気を引き出すマネジメントの強い味方
- 営業ーー生産性が上がり雇用が減る可能性も
- 法曹界ーーAIが退屈な作業から弁護士を解放する
- 経営コンサルティングーー高付加価値を提供できないコンサルは苦境に
- 第7章 仕事で駆使する
- 代理執筆はかなりのレベルに
- 慈善活動をAIはどう変えるのか
- 起業家コミュニティ「Endeavor」の場合
- 就職支援の非営利団体「Opportunity@Work」の場合
- AIへの投資先は2分野に
- 第8章 ハルシネーション(幻覚)
- AIが生成する幻覚は4種類
- 「間に合わせの知識」が大きな力をもつ
- ルール整備や調整で大きく改善できる可能性もある
- LLMよ、事実だけか?
- 第9章 知識人との対話
- ネット技術が「公共圏」へ与えた影響
- ノーベル賞作家が問う「哲学」の役割
- AIは「歴史」の敵か味方か
- マクルーハンによる時代を超えた「メディア」論
- 「集団行動問題」へのAIの可能性
- AIは優れた「公案」をつくれるのか
- ガリレオとチューリングによる「対話」論
- 第10章 ホモ・テクネーー技術を生み出し使える人間
- 進化するテクノロジーとどう向き合うか
- 「想像する未来」に私たちは進む
- ホモ・テクネに必要な「決断力」と「人間らしさ」
- まとめ 21世紀の分岐点
- ユートピアへの道は失敗と損失でできている
- 「進化の道」を進もう