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【注目点・感想】仮想通貨とWeb3.0革命:千野剛司(著)

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米大手暗号資産取引所の日本代表の視点から、既存金融の問題は何か?仮想通貨とWeb3の魅力は何か?米国と日本の隔たりは何か?日本が世界に追いつくためにはどうすればいいのか?を解説している本です。

ほかのWeb3本には書かれていないことが満載なので、インターネット業界の人、金融業界の人などWeb3に興味がある人に一読をおすすめします。

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介します。

本の概要

書誌情報

千野 剛司(著)日経BP(出版社)2022/6/16(発売日) 296P(ページ数)

著者紹介

千野 剛司

Payward Asia株式会社 代表取締役社長/Kraken Japan 代表

2006年に東京証券取引所に入社。2016年よりPwC JapanのCEO Office。2018年に仮想通貨取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.入社。2030年3月より現職。

一般社団法人日本暗号資産取引業協会 副会長。一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会 理事。

著者が伝えたいこと

インターネット業界に携わる人に対して、「現状でWeb3を最も体感できる場所は金融業界です。本書がWeb3の本質について考える機会になれば幸いです。」と著者は述べています。

既存の金融業界の人に対して、「本書を通じて金融業界こそWeb3革命の最初の震源地であるということをお伝えできたらと思います。(中略)仮想通貨業界に来る前の私が何を考えていたのか、なぜ仮想通貨業界に来ようと思ったのか、個人的なエピソードもお話しします。」と著者は述べています。

本の目次

この本の目次を引用して紹介します。

  • プロローグ
  • 第1章 世界を変えたWeb3
  • 第2章 革命の震源地「金融業界」
  • 第3章 2021年、世界は大きく変わった
  • 第4章 NFTと仮想通貨の新勢力
  • 終章 文化×技術で描く日本の可能性 新しい資本主義へ
  • エピローグ
  • 参考文献

もっとくわしく見たい場合は、本の目次(詳細版)が記事の最後にあります。

注目点

この本を読んで注目した点を3つ紹介します。

仮想通貨市場の魅力と実現したい想い

1つ目の注目点は「第2章 革命の震源地『金融業界』」の「3. 仮想通貨市場の魅力が際立つようになった理由」に書かれている「仮想通貨市場の魅力と実現したいこと」です。

著者は「ゲームストップ騒動」が既存金融の問題の多くが分かりやすく現れた事例であり、既存金融への疑問を投げかけています。

  • 疑問1:金融はお金を融通するという本来の機能を果たしているのか?
  • 疑問2:金融はなぜ儲かるのか?
  • 疑問3:金融は時代遅れになっていないか?

こうした既存金融の制約によって、仮想通貨市場の魅力が際立つようになったと、著者は表を使って説明しています。

既存金融市場仮想通貨市場
営業時間週5日、1日5時間(土日祝は休み)24時間365日
決済完了約定後1〜3日約1時間
情報公開決められた範囲での公表情報開示に積極的。ブロックチェーンによる透明性
既存金融市場の制約と仮想通貨市場の魅力〈引用:千野剛司(著)仮想通貨とWeb3.0革命〉

著者は、Web3・仮想通貨の本質的な部分、考え方、実現したいことを以下のように述べています。

私は、DAOをサポートするために仮想通貨に資金を投じる、というのが仮想通貨の本質的な部分だと考えています。(中略)

多くの人は、私のように既存の金融に対して疑問を抱き、ブロックチェーンと仮想通貨に可能性を感じているのです。我々に共通するのは「金融のデモクラタイゼーション(民主化)」を実現したいという考え方です。(中略)

証券市場をはじめとする既存金融の制度的な問題点を踏まえ、より民主的で誰もが自由に等しく参加できるオープンな金融を実現したいのです。

千野剛司. 仮想通貨とWeb3.0革命 (Japanese Edition) (p.91). Kindle 版.

第2章の前半でリーマン・ショックを現場で経験した著者の苦労や葛藤が語られていたので、金融のプロが考えている既存金融の問題点、仮想通貨市場の魅力、そしてWeb3で実現したい想いが、より一層伝わってきてとても印象に残りました。

BAYCのDAO意思決定プロセス

2つ目の注目点は「第1章 世界を変えたWeb3」の 「3.DAOは世界をどう変えるのか」に書かれている「BAYCのDAO意思決定プロセス」です。

世界一のNFTコレクションであるBAYC(Bored Ape Yacht Club)はエイプコイン(APE)というガバナンス・トークンを発行して、DAOとして運営しています。

エイプコインDAOへの意思決定がどのようなプロセスを経て提案が可決されるのかを、著者は説明しています。(本文から一部引用・改変して紹介します。)

AIP(APE Improvement Proposal):エイプ改善提案

  • AIPのアイデア出し
    • ディスカッション用プラットフォーム「ディスコース(Discourse)」に投稿します。
  • AIPの草案(ドラフト)
    • 7日後、モデレーターがアイデア発起人に提案作成の雛形とその後の手順を送ります。
  • AIP分析レポート
    • 草案はAPE財団が関与するプロジェクトマネジメントチームが精査し分析結果をまとめます。
  • AIPモデレーション
    • モデレーターはAIP草案とAIP分析レポートを総合的に見て、承認するかどうかを決めます。
  • モデレーション後の割り振り
    • フェーズ4を通過したら、AIPは「すぐ投票」か「さらなる調査」に振り分けられます。
  • 管理部による調査
    • AIPがフェーズ7に移行する前に何をすれば良いかを管理委員会が指摘します。
  • AIP投票へ
    • AIPがスナップショットと呼ばれる投票用のプラットフォームに掲載されます。
  • AIPの最終化
    • もしAIPが1票も獲得できなかったり、賛成と反対が同数だったりしたら、「保留」となり再提出の機会が与えられます。
  • 実施
    • プロジェクトマネジメントチームが、AIPが実施に向けて動いているかを確認する責任を持ちます。

DAO(分散型自律組織)の運用について、BAYCの意思決定プロセスが具体的に説明されていて、他のWeb3本には書かれていなかったので、印象に残りました。

ステーキングとシャーディング

3つ目の注目点は「第4章 NFTと仮想通貨の新勢力」の「2. イーサリアム2.0で何が変わるのか」に書かれている「ステーキングとシャーディング」です。

注)「イーサリアム2.0」という呼称は、最近「コンセンサス・レイヤー」という名称に変更されましたが、この本の中では便宜上「イーサリアム2.0」を使っています。

著者はイーサリアム2.0の目玉となるのが、イーサリアムの「ステーキング」と「シャーディング」であると述べ、以下のように説明しています。(本文から一部引用・改変して紹介します。)

PoW(プルーフ・オブ・ワーク)、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)

ステーキング

  • ステーキングとは、一定の仮想通貨をネットワークに保管して取引記録の検証に貢献することで報酬をもらう行為
  • イーサリアム財団は、PoSに移行したらPoWで使う電力消費量の99.95%を削減できるという資産を発表
  • PoSは、高性能のコンピュータを必要とせずスマートフォンからの参加が可能
  • PoSにはマイナーが存在しておらず、代わりにバリデーターと呼ばれる存在が取引記録の検証を行う
  • 一定の仮想通貨をPoSのネットワークで長期保有(ロック)することで、バリデーターとしてブロックを検証・承認するタスクがランダムに割り当てられる
  • ステーキングは2020年12月からビーコンチェーンを使って既に一部で開始されており、これをイーサリアムのブロックチェーンと統合することでPoSへの完全移行が実現する
  • イーサリアムのPoSへの移行は「統合(The Merge)」と呼ばれており、2022年中に実施される予定

シャーディング

  • シャーディングとは、データベースを分割することで負荷を分散させる技術を指します
  • ネットワーク全体が多数のシャードに分割される
  • バリデーターは割り当てられた範囲のシャードを検証すればよい
  • バリデーターになるハードルが下がる
  • バリデーターが結託して悪さをしないように、各シャードのバリデーターは抽選で選ばれる
  • ネットワークが分散化することで安全かつより速い検証が期待できる
  • イーサリアム財団によると、シャードチェーンの導入は2023年と推定されている

この本では「シャーディングの仕組み」が図解もされていて、イーサリアムのスケーラビリティの問題を解消するためのアップグレードの方法である「ステーキング」と「シャーディング」について、より理解を深めることができました。

感想・口コミ・書評記事

感想

プロローグの中で著者は「米国アイビーリーグのエリート学生がインターン先に選ぶのは、GAFAではなくて仮想通貨取引所という時代になった」という同僚から聞いた言葉を紹介しています。

米国では2020年後半から2021年を通して比較的短期間で、Web3基礎編としてビットコインなど仮想通貨を一気に学び、いまではWeb3応用編であるNFTという分野に挑戦している、と著者は述べています。

これらを読んで、2022年6月20日に世界最大のNFTイベント「NFT.NYC 2022」(ニュース記事)が、シリコンバレーではなくニューヨークで開催されている意味がよく分かりました。

著者はこの本を通じて、米国の現状に対して、かつて日本が世界に先駆けて仮想通貨を定義する法律を作るなど仮想通貨の先進国であったのにもかかわらず、相次ぐハッキング事件の発生によって仮想通貨の後進国になってしまっている現状に危機感を感じ、そこから変えるための提案を章を重ねて述べています。

「第2章 革命の震源地『金融業界』」には、金融のプロがリーマン・ショックなどを現場で経験し感じている既存の金融市場の問題点と、それに対する仮想通貨市場の魅力が書かれており、金融のプロの視点が分かりとても興味深く読むことができました。

「第3章 2021年、世界は大きく変わった」では、米国の事情に詳しい著者ならでは記述があり、ウォール街で米国の機関投資家や大手企業による仮想通貨業界への参入が一気に加速した話や、価格が大きく変動する仮想通貨のデメリットを解決する手段としてのステーブルコインの重要性の話から、ステーブルコインについて日本が遅れていることなどの理解が進みました。

最後の2つのインタビューもとても興味を惹かれて読みました。特に渡辺創太氏の取り組んでいる「Aster Network」というインターオペラビリティを目指すパブリックブロックチェーンが13カ国の国籍メンバーで開発されている話や、これまでの経験、日本人の強みの活かし方の話は、とても興味深く、多くの人に読んで欲しい内容だと感じました。

口コミ

Twitter口コミを見つけ次第、紹介していきます。

書評記事

「ビットコイン」が生まれた2つの理由【仮想通貨とWeb3.0革命】

東洋経済ONLINEにこの本から一部抜粋、再構成した記事が掲載されていますので紹介します。
「Web3.0と仮想通貨」今さら聞けない基本中の基本 | インターネット | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

参考文献

映画

映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」

「第2章 革命の震源地『金融業界』」の「1. リーマン・ショックと金融危機の余韻」の中で、映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」が引用されています。

著者はこの映画を「サプライムローン問題を中心に、金融機関や格付会社の行動がいかにして危機を招いたのか、その一端が(多少誇張はされているが)分かりやすく描かれています。」と述べています。

アマゾンPrimeビデオチャンネルに登録して見れます。(無料体験あり)

アダム・マッケイ(監督)クリスチャン ベイル, スティーヴ カレル, ライアン ゴズリング, ブラッド ピット(出演)

映画「ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち」

「第2章 革命の震源地『金融業界』」の「2. ゲームストップ騒動に見る時代の変化」の中で、高速取引(HFT)の仕組みが図解で説明されています。

この高速取引(HFT)を題材にした映画が、「ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち」です。

アマゾンPrimeビデオチャンネルに登録して見れます。(無料体験あり)

キム・グエン(監督)ジェシー・アイゼンバーグ, アレクサンダー・スカルスガルド, サルマ・ハエック(出演)

書籍

Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」:亀井 聡彦, 鈴木 雄大, 赤澤 直樹(著)

Web3というインターネットの転換点と、その背景にあるDAOという新しいコミュニティについて、概要・本質・哲学を、インターネットの歴史を振り返りながら解説している本です。

この本の注目点や感想、本の目次などをブログ記事で紹介しています。

亀井 聡彦, 鈴木 雄大, 赤澤 直樹(著)けんぞう, 田所 未雪(ナレーション)かんき出版(出版社)2022/7/6(発売日)240P(ページ数)

暗号資産がわかる本おすすめ

Web3がわかる本おすすめ

まとめ

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介しました。

米大手暗号資産取引所の日本代表の視点から、既存金融の問題は何か?仮想通貨とWeb3の魅力は何か?米国と日本の隔たりは何か?日本が世界に追いつくためにはどうすればいいのか?を解説している本です。

ほかのWeb3本には書かれていないことが満載なので、インターネット業界の人、金融業界の人などWeb3に興味がある人に一読をおすすめします。

千野 剛司(著)日経BP(出版社)2022/6/16(発売日) 296P(ページ数)

本の目次(詳細版)

この本の目次をくわしく引用して紹介します。

  • プロローグ
  • 第1章 世界を変えたWeb3
    1. 個人に権利を取り戻せ
      • Web2の申し子だったGAFA
      • 改めて問われる「保有」の概念
    2. 中央集権をやめたビットコイン
      • ビットコインはブロックチェーンの歴史
      • イーサリアムで「ブラックスワン」は起きるのか
      • NFTとデジタル所有権の確立
      • コピペや手数料とクリエーターの戦い
      • 来歴証明で変わる中古市場
    3. DAOは世界をどう変えるのか
      • Web3の本質「DAO」
      • 変わる資本主義のあり方
      • U型組織とM型組織
      • ギグエコノミーとは何が違うのか
      • DAOの運営はどのように行われているのか
      • 民主的な組織で世の中を変えよう
      • 世界一のNFT、BAYCのDAO
    4. 知識と専門性が貧富の格差を大きなものにする
      • DAOに残る課題
      • column01 仮想通貨とブロックチェーンのエコシステム解説
        • ブロックチェーンの利点はセキュリティの高さ
        • 「良い仮想通貨」とは何か
      • column02 パブリック・ブロックチェーンとプライベート・ブロックチェーン
        • ポイントは中央の管理者の存在
  • 第2章 革命の震源地「金融業界」
    1. リーマン・ショックと金融危機の余韻
      • Too big to fall(大きすぎて潰せない)
      • 避けられなかったチャプターイレブンの申請
      • 複雑化する金融の先にあるもの
      • 「金融の民主化」時代の幕開け
    2. ゲームストップ騒動に見る時代の変化
      • 「小人」たちが「巨人」を倒した
      • 既存の金融市場における不平等
      • 金融市場の何が原因なのか
    3. 仮想通貨市場の魅力が際立つようになった理由
      • 既存金融の反省点を踏まえて作られた新市場
      • 沈黙する日本の仮想通貨業界
      • 2017年まで日本は仮想通貨の中心地だった
    4. なぜ日本は世界から取り残されたのか
      • ルールによって提供できなくなったサービス
      • 仮想通貨の「定義」にまどわされる
      • ”原則ベース”の米国
      • 競争にも参加できない日本の投資家
    5. 仮想通貨は「怪しい投資商材」なのか
      • 新しい技術やサービスの本質をどう見抜くか
      • 相次ぐハッキング事件で失った信頼
      • 日本は「冬の時代」からいつ目覚めるのか
    6. 実は犯罪を追跡しやすい仮想通貨
      • マネーロンダリング・テロ組織との関わり
      • 再びガラパゴス化する日本企業
      • オープンシーの対抗馬として登場したルックスレア
      • column03 プライバシーを個人が取り戻す
        • 「正しさ」は個人が判断すべき
  • 第3章 2021年、世界は大きく変わった
    1. 2021年、動きが加速したウォール街
      • コロナの裏で何が起きていたのか
      • 「デジタルゴールド」としてのビットコイン
      • 金は「神のマネー」、ビットコインは「民のマネー」
    2. 米中覇権争いの舞台
      • マイニングで国や企業に左右されない基盤を作る
      • 図らずともなくなったビットコインの「地政学リスク」
      • 価格が大きく変動する仮想通貨のデメリットをどう乗り越えるか
      • 日本にはステーブルコインを扱う取引所が一つもない
      • ステーブルコインはなぜ重要なのか
    3. ステーブルコインに「銀行並み」の規制
      • 規制はイノベーションを阻害する?
      • DeFiをめぐる戦い
      • column04 ウクライナ侵攻で注目を集める仮想通貨
        • 仮想通貨で集まった寄付
        • 仮想通貨を使う理由は制裁回避?
        • 流動性が低いロシアの仮想通貨市場
        • ルーブル急落でビットコインに注目が集まる?
      • column05 ビットコイン、ステーブルコイン、CBDCの違い
        • キーワードは「資産」と「決済手段」
        • 先進国での決済手段の広がり
        • ステーブルコインの役割
  • 第4章 NFTと仮想通貨の新勢力
    1. 受け皿としてのブロックチェーン
      • なぜイーサリアムキラーが台頭しているのか
      • ブロックチェーンのトリレンマ
      • 取引の「渋滞」をどう防ぐか
      • 代表的なイーサリアムキラー
    2. 「イーサリアム2.0」で何が変わるのか
      • 注目すべきは「ステーキング」と「シャーディング」
      • 取引記録に関する合意形成で重要な2つのアルゴリズム
      • 世界中の企業が巨額の資金を投じるマイニング設備
      • 取引処理能力はどこまで改善されるのか
    3. 悩めるイーサリアムの「救世主」とは
      • PoSの「デカコーン」かイーサリアム連合軍か
      • ビットコインはジョーカーか?
      • column06 ガス代とデータの大きさ
        • VISAとイーサリアムの処理速度の違い
  • 終章 文化×技術で描く日本の可能性 新しい資本主義へ
    1. いつまで失われた30年を続けるのか
      • 日本から出ていく若い頭脳
      • 米英は舵を切った
      • 日本は世界の憧れ?
      • プラットフォーム競争の二の舞になってはいけない
      • interview Web3の実現に挑む26歳の起業家・渡辺創太
      • interview 「国ガチャ」の日本はWeb3の波に乗れるのか・佐藤茂
  • エピローグ
  • 参考文献

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