【広告】本ページはプロモーションが含まれています

【注目点・感想】メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界:バーチャル美少女ねむ(著)

2022年3月22日

本「メタバース進化論」アイキャッチ画像

メタバースについて、実際にメタバースに生きる原住民の考え方と実態調査から、現在のメタバースの真の姿と未来の可能性について書いている本を紹介します。

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介します。

本の概要

書誌情報

バーチャル美少女ねむ(著)技術評論社(出版社)2022/3/19(発売日)320P(ページ数)
\最大12%ポイントアップ!/
Amazonでみる

著者紹介

著者は自己紹介欄で「メタバース原住民にしてメタバース文化エバンジェリスト。『バーチャルでなりたい自分になる』をテーマに2017年から美少女アイドルとして活動している自称・世界最古の個人系VTuber。」と述べています。

著者が伝えたいこと

この本は2021年8月に著者とスイスの人類学者リュドラ・ブレディキナが「ソーシャルVR国勢調査2021」と題して、全世界のソーシャルVRユーザーを対象に大規模なアンケート調査を実施し、回答1200件を分析したデータを有識者と議論して得た考察や知見を交えた調査結果を紹介しています。

著者は本書の目的と内容について「メタバースについて興味を持った幅広い読者の方を対象に、現在のメタバースの真の姿、そして未来の可能性を伝えることを目的にしています。技術評論家や投資コンサルタントには絶対書けない、実際にメタバースに生きる原住民ならではのリアリティ溢れる内容を、データの裏付けと共にお届けします。」と述べています。

本の目次

本の目次を引用して紹介します。

  • はじめに
  • 第1章 メタバースとは何か
  • 第2章 ソーシャルVRの世界
  • 第3章 メタバースを支える技術
  • 第4章 アイデンティティのコスプレ
  • 第5章 コミュニケーションのコスプレ
  • 第6章 経済のコスプレ
  • 第7章 身体からの解放
  • おわりに
  • COLUMN

もっとくわしく見たい場合は、本の目次(詳細版)が記事の最後にあります。

注目点

この本を読んで注目した点を引用しながら紹介します。

メタバースの定義

1つ目の注目点は、「メタバースの定義」です。

この本ではメタバースをどのように定義しているのでしょうか?引用して紹介します。

1)空間性:三次元の空間の広がりある世界

2)自己同一性:自分のアイデンティティを投影した唯一無二の自由なアバターの姿で存在できる世界

3)大規模同時接続性:大量のユーザーがリアルタイムに同じ場所に集まることのできる世界

4)創造性:プラットフォームによりコンテンツが提供されるだけでなく、ユーザー自身が自由にコンテンツを持ち込んだり想像できる世界

5)経済性:ユーザー同士でコンテンツ・サービス・お金を交換でき、現実と同じように経済活動をして暮らしていける世界

6)アクセス性:スマートフォン・PC・AR/VRなど、目的に応じて最適なアクセス手段を選ぶことができ、物理現実と仮想現実が垣根なくつながる世界

7)没入性:アクセス手段の一つとしてAR/VRなどの没入手段が用意されており、まるで実際にその世界にいるかのような没入感のある充実した体験ができる世界

バーチャル美少女ねむ. メタバース進化論仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.543). Kindle 版.

著者は「これらの要件はそれぞれがゼロかイチかと言ったものではなく強弱の幅がある概念で、当然ですが現時点で全ての要素を百点満点で満たす『完全なメタバース(Perfect Metaverse)』は存在しません。ただし、全ての要素を最小限満たす『必要最小限のメタバース(Minimum Viable Metaverse)』は存在します。」と述べています。

Meta Horizon Worldsのアバターに対する懸念

2つ目の注目点は、「第2章 ソーシャルVRの世界」に書かれていた、「Meta Horizon Worldのアバターに対する懸念」です。

まず目を引くのが、ディズニーアニメのキャラクターを思わせる、カジュアルな服装の人物をデフォルメした統一されたデザインのアバターの世界観「Meta Avatars」です。上半身だけがふわふわと浮いているのも特徴的です。確かに会話やジェスチャーでコミュニケーションをするだけならば下半身は不要な気もするのですが、既存のソーシャルVRで全身の動きで繊細な感情表現を日々行っている身としては、どことなく欧米的な大胆な割り切りに思えます。

世界観を強制されない完全に自由なデザインのアバターを利用する権利が保障されていなければ、必要最低限の「自己同一性」があるメタバースとは言えないのではないでしょうか。

バーチャル美少女ねむ. メタバース進化論仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1298-1302). Kindle 版.

私がMeta Horizon Worldsのアバターを見た第一印象は、「上半身だけなんだな」「ニンテンドーWiiのMiiみたいだな」といったことだけでした。

この本を読み終えて、メタバース原住民の著者がメタバースの定義の一つである「自己同一性」について重視していることが分かり、現在のMeta Horizon Worldsのアバターに対してこのような懸念を指摘していることが理解できました。

分人経済

3つ目の注目点は、「第6章 経済のコスプレ」に書かれていた、「分人経済」です。

分人経済、超空間経済、ともにメタバースでの経済現象を説明するために著者が考案した造語ですが、「今後のメタバース経済を語る上で必須となる概念だと考えています。」と著者は述べています。

ミクロ経済学のこれまでの常識は「個人(Individual)」を経済の最小単位とみなす「個人経済(Individual Economy)」でしたが、4章で論じたように、メタバースでは人間の心のさまざまな側面「分人」が姿かたちを得て自由に活動を始めます。メタバースでは経済の最小単位が「分人(Dividual)」に移行し、多面的な経済参加が可能な全く新しい経済「分人経済(Dividual Economy)」が生まれます。

バーチャル美少女ねむ. メタバース進化論仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3086-3092). Kindle 版.

私はこの本を読むまでは、現実の自分がアバターの姿でメタバースの世界に入るという個人経済のイメージしか持っていなかったので、この「分人経済」という考え方はとても印象に残りました。

この考え方によると、現実の生活スタイルとメタバースでの生活スタイルを変えて、一人で同時に複数の生き方ができる、ということに気づき驚きました。

心象イメージによる超空間デザイン

4つ目の注目点は、「第6章 経済のコスプレ」に書かれていた、「心象イメージによる超空間デザイン」です。

自由に空間を創造できるメタバースで、なぜわざわざ実在の都市を再現する必要があるのでしょうか?(中略)

先ほどの「秋葉原」のように、誰でも町並みがぱっとイメージしやすい、人々の心の中にはっきりとした心象風景がある都市は、ある種の人格をもった存在とみなすことができ、「人と都市とのコミュニケーション」とも言うべき現象が頭の中で起こります。(中略)

メタバースでの空間デザインというと、なにもない空間に必要なものを効率的に配置するだけの無機質なものに思われがちですが、このように、人々が共通認識として持っている心象イメージを利用したり、時には裏切ったりして、物理現実を超えた感動を演出することが「超空間デザイン」の基本なのです。

バーチャル美少女ねむ. メタバース進化論仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3345-3357). Kindle 版.

私はこの本を読むまでまさに、メタバースでなぜ実在の都市を再現する必要があるのだろうか?と疑問に感じていましたが、「人々が共通認識として持っている心象イメージを利用したり、時には裏切ったりして、物理現実を超えた感動を演出する」という文を読んで、メタバースの超空間デザインの基本を理解することができました。

この超空間デザインの基本を知ってメタバースならではのイメージが湧いてきました。例えば、自分が普段生活している街の課題を発見するために、メタバース上で比較したい街を隣に並べて配置して相互に歩いて行き来してみると、比較することによって良い点・悪い点が見つけやすくなるでしょう。

ファントムセンス

5つ目の注目点は、「第7章 身体からの解放」に書かれていた、「ファントムセンス」です。

ファントムセンス(VR感覚)」とは、「視覚」「聴覚」しか再現されない現在一般的なVR体験中に、本来感じるはずのないそれ以外のさまざまな感覚を擬似的に感じる現象のことです。感じる感覚の種類や強さには個人差が大きいものの、現在メタバースの数多くの住人から、さまざまなファントムセンスを感じたという例が報告されています。人間の感じる感覚機能のうち代表的なものを「五感」と言いますが、その残り三つである「触覚」「嗅覚」「味覚」はもちろんのこと、「落下感覚」「風の感覚」「温度感覚」などもよく挙げられます。メタバース内で生活する住人を対象とした体系的な研究が行われるのはこれからの分野ですが、後述するとおり、原理的には脳がアバターの身体を実際の身体と「誤認識」することなどによって起こると考えられます。

バーチャル美少女ねむ. メタバース進化論仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3604-3612). Kindle 版.

私はこれまでテーマパークでVRゴーグルを装着してジェットコースターに乗った時に落下感覚は感じたことがありますが、その他の感覚はまだ体験したことがなく、体系的な研究がまだ行われていないということが、印象に残りました。

個人差やプレイ時間によって感じる人と感じない人がいるようですが、感じる人の比率が多い「風の感覚」や「触覚」はいつか体験してみたいです。

感想・口コミ・書評記事

感想

「第2章 ソーシャルVRの世界」では、私はこれまでソーシャルVRを使ったことがないので、有名な4つのソーシャルVR(VRChat、Neos VR、cluster、バーチャルキャスト)について利用者調査結果を含んだ説明や、メタバースの7要件に照らし合わせた評価が書かれていて、それぞれの特徴や用途を理解することができた。今後イベント運営など実用を想定するとQuest 2やスマホに対応していて大規模接続性が高いclusterに関心を抱いたが、トラッキングが充実し没入性が高く重力が自在なNeos VRは未来を先取りしていて興味を惹かれた。

「第4章 アイデンティティのコスプレ」と「第5章 コミュニケーションのコスプレ」では、メタバース原住民の著者や利用者調査結果に基づいて、現在のソーシャルVRでのアイデンティティやコミュニケーションの実態と考え方が分かった。特に「女性アバターが選ばれる理由」や「メタバースでの距離感」はこれまで知らなかったので興味深かった。

この本は著者が述べる通り、全体を通じて「技術評論家や投資コンサルタントには絶対書けない、実際にメタバースに生きる原住民ならではのリアリティ溢れる内容を、データの裏付けと共にお届けします。」という内容になっており、最初から最後まで具体性を感じながら興味深く読むことができた。また折に触れて日本の文化との関連を述べている点が理解を促進できた点だと感じた。

口コミ

Twitterの口コミを紹介します。

書評記事

【読書感想文】「メタバース進化論」肉体から解放された世界を学ぶチェ・ブンブンのティーマ

『メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』感想 - グリーンおじさん雑記帳

参考文献

YouTube ねむちゃんねる

著者が動画で本の紹介をしています。

『メタバース進化論』発売開始!原住民が語るメタバース解説書の決定版

ホモ・デウス(上)(下)テクノロジーとサピエンスの未来:ユヴァル・ノア・ハラリ(著)

著者は「はじめに」の中で、「ハラリに習って、私はその世界にいち早く適応し、全く新たな生活様式や文化を示しつつある『メタバース原住民』のことを新たな人類種『ホモ・メタバース(Homo Metaverse)』と呼びたいと思います。」と引用して述べています。

ユヴァル・ノア・ハラリ(著)柴田裕之(翻訳)岩見 聖次(ナレーション)河出書房新社(出版社)2018/9/6(発売日)
\最大12%ポイントアップ!/
Amazonでみる
ユヴァル・ノア・ハラリ(著)柴田裕之(翻訳)岩見 聖次(ナレーション)河出書房新社(出版社)2018/9/6(発売日)
\最大12%ポイントアップ!/
Amazonでみる

私とは何か「個人」から「分人」へ:平野啓一郎(著)

第4章 アイデンティティのコスプレ」で「分人主義」の説明で引用しています。ブログ記事を参照。

平野啓一郎(著)講談社(出版社)2012/9/14(発売日)
\最大12%ポイントアップ!/
Amazonでみる

メタバースがわかる本おすすめ

VRがわかる本おすすめ

まとめ

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介しました。

メタバースについて、実際にメタバースに生きる原住民の考え方と実態調査から、現在のメタバースの真の姿と未来の可能性について書いている本です。

バーチャル美少女ねむ(著)技術評論社(出版社)2022/3/19(発売日)320P(ページ数)
\最大12%ポイントアップ!/
Amazonでみる

本の目次(詳細版)

この本の目次をくわしく引用して紹介します。

  • メタバースとは何か
    • メタバース前史
    • メタバースの定義:実現に必要な七要件
    • メタバースは世界と世界を結びつける
    • メタバースではないもの
    • メタバースがもたらす三つの革命
  • ソーシャルVRの世界
    • ソーシャルVR:既にある「必要最小限のメタバース」
    • VRChat:ソーシャルVRの概念を確立した存在
    • Neos VR:メタバースを体現するソーシャルVR
    • cluster:メタバース時代のイベントホール
    • バーチャルキャスト:仮想空間の超高性能撮影スタジオ
    • 比較からわかる四大ソーシャルVRの個性
    • ソーシャルVRユーザーのプロファイル
    • Horizon Worlds:Metaの新サービスは何をもたらすのか
  • メタバースを支える技術
    • メタバースのために積み重なれた人類の技術
    • 「バーチャルリアリティ」とは何か
    • VRゴーグル:VR体験の核
    • トラッキング技術:仮想空間で自在に動く
    • アバター技術:仮想世界でなりたい自分になれる
  • アイデンティティのコスプレ
    • 魂にアイデンティティを「纏う」革命
    • 名前:言霊世界のアイデンティティ
    • アバター:視覚世界のアイデンティティ
    • 声:音響世界のアイデンティティ
    • 魂の新しいかたち
  • コミュニケーションのコスプレ
    • 本当のコミュニケーションが「加速する」革命
    • メタバースでの距離感
    • メタバースでのスキンシップ
    • メタバース恋愛
    • バーチャルセックス
    • 社会の新しいかたち
  • 経済のコスプレ
    • メタバース経済前夜:十年以内に百兆円の経済規模?
    • ミクロ・マクロ両面で経済を「拡張する」革命
    • 分人経済:多面性が生むクリエイターエコノミーの究極形
    • 超空間経済:経済が地球の空間の限界から解放される
    • メタバースで生まれる職業
    • 経済の新しいかたち
  • 身体からの解放
    • 生まれ持った肉体を「脱ぎ捨てる」
    • ファントムセンス概論
    • ファントムセンス実態調査
    • 触覚スーツ
    • BMIによる「フルダイブVR」
    • 私たちの新しい身体
    • おわりに

「本の概要」にもどる