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【注目点・感想】WIRED(ワイアード)VOL.46 拡張するゲームと世界

2022年9月29日

雑誌「WIRED VOL.46」アイキャッチ画像

ゲームのこれまでの変遷、インディーゲームクリエイターなど新しい潮流、ゲームの産業や社会への応用などを当事者へのインタビューや写真もまじえて、ゲームの歴史、現在地、将来がわかるWIRED日本語版10年ぶりのゲーム特集です。

ゲーム分野でつちかわれた思考や技術が、娯楽としてのゲームにとどまらず産業や社会にどのように活かされていくのかがわかるので、ゲームに関心がある人はもちろん、いままでゲームに関心がなかった人にもおすすめする雑誌です。

雑誌の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介します。

雑誌の概要

書誌情報

コンデナスト・ジャパン(著)WIRED編集部(編集)プレジデント社(出版社)2022/9/14(発売日)156P(ページ数)

編集者が伝えたいこと

編集者はこの雑誌で伝えたいことを以下のように述べています。

GAMING THE MULTIVERSE
拡張するゲームと世界

『WIRED』日本版、10年ぶりのゲーム特集──。

この世界では今日も30億人のプレイヤーたちがゲームパッドやVRコントローラーを夢中で握りしめている。

AIという“知性”を獲得したゲーム内世界は「リアルとは何か」の再考を迫り、XRが3次元の制約を超えた没入体験を実現し、オープンワールドを埋め尽くす無限のストーリーがわたしたちの人生を紡いでいるのだ。

いまやゲームエンジンによって物理社会をもその領域に取り込み、マルチバース(多次元世界)へと拡張していくゲームのすべてを総力特集!

amazon.co.jp書籍情報より引用

雑誌の目次

雑誌の目次を引用して紹介します。

  • ゲームが世界をのみ込む
    • 『WIRED』日本語版 編集長 松島倫明
  • ゲームは四角いスクリーンを飛び出し いよいよ空間に溶けていく
    • 水口哲也に再び訊く、次の10年に起こること
  • わたしたちがゲームを作る理由
    • 中村育美/三宅俊輔/生高橋/溝部拓郎/外山圭一郎/npckc/Daigo/アン・フェレロ
  • 「プレイして稼ぐ」の経済圏
    • 但木一真
  • かくしてゲーム音楽はポピュラーミュージックになった
    • 田中“hally”治久/戸田誠司/中村弘二
  • ゲームをつくらないゲームエンジン
  • ヴィデオゲームの物語論
    • Jini
  • 「一緒に遊ぶ」の現代史
    • 中川大地
  • 娯楽の進化とゲームの深化 任天堂と5つの視点
    • 山内万丈/玉樹真一郎/樹ひかり/伊藤明日香/クリス・コーラー
  • ゲームAIが都市(≒環境)に溶け出すとき
    • 三宅陽一郎/豊田啓介
  • AS A TOOL GAMING STUFF
  • 天駆せよ法勝寺 for PrayStation VR3、ただしメタバース死にゲー
    • 八島游舷
  • eスポーツコーチの孤独と挑戦
    • 辺境の地の「若者たち」と「社会」の接点としてのゲーム
  • 水野祐が考える新しい社会契約
    • 第11回 アヴァターと相互運用性
  • すすめ‼︎ VIRTUAL CITIES Inc.(仮)
    • 豊田啓介 × 倉田哲郎
    • 第9回 ルールを制定するのは誰?
  • 川田十夢の「とっくの未来」
    • 第23回 プロンプトエンジニアリングと『智恵子抄』

注目点

この雑誌の中身はどのような感じなのか、注目した点を3つ紹介します。

社会性をもったゲームが登場する

1つ目に注目した点は「ゲームは四角いスクリーンを飛び出し いよいよ空間に溶けていく」に書かれている「社会性をもったゲームが登場する」です。

寄稿者は次の10年の展望について、以下の10個をあげています。

  1. メタヴァース(?)
  2. ミラーワールドが新たなプラットフォームに
  3. XRの登場によって、ゲームは空間に溶けていく
  4. ゲームとアートの融合が加速する
  5. 体験映画や体験音楽が登場する
  6. リモート開発がさらに進化・加速する
  7. ゲームエンジンは「エクスペリエンス・エンジン」となる
  8. コンテンツがプラットフォーム化する
  9. ゲームもサブスクリプション時代へ
  10. 社会性をもったゲームが登場する

この中で「10. 社会性をもったゲームが登場する」について以下のように述べています。

かつては大手のゲーム会社しかゲームをパブリッシュできませんでしたが、この10年で独立系でもゲームをパブリッシュできるようになったことは、とても大きな変化です。

そうした状況から飛び出してきた独立系クリエイターの手によって、メッセージ性の強いゲームやアート性をもったゲームがもっとたくさん出てくると思います。

コンデナスト・ジャパン(2022)WIRED VOL.46 拡張するゲームと世界:P.22

社会のミドルウェアとしての「Unity」

2つ目に注目した点は「ゲームをつくらないゲームエンジン」に書かれている「社会のミドルウェアとしての『Unity』」です。

長くヴィデオゲーム文化に貢献してきた「Unity」は、活躍の場をインフラや医療、製造業など、わたしたちの生活を支える場に拡げています。

ユニティ・テクノロジーズではゲームエンジンを「リアルタイム3D開発プラットフォーム」と定義し直しました。

Unityの産業利用で特に注目されているのが、百年に一度とも言われる変革期にある自動車産業であるとして、以下のような事例を紹介しています。

世界最大手の自動車安全制御装置メーカー・オートリブは、Unityでクルマの衝突実験やエアバックの動作のシミュレーションを実施している。

ボルボは設計段階における消費者のUXを検討するために、Unityを使ってヴァーチャル車両に試乗できるデモを開発している。

日本のスタートアップであるティアフォーが、Unityを使って世界初のオープンソース自動運転ソフトウェア「Autoware」を開発した。

コンデナスト・ジャパン(2022)WIRED VOL.46 拡張するゲームと世界:P.61

メタAI、キャラクターAI、スパーシャルAI

3つ目に注目した点は「ゲームAIが都市(≒環境)に溶け出すとき」に書かれている、「メタAI、キャラクターAI、スパーシャルAI」です。

ゲームから発達したAIがわたしたちの未来に何をもたらすのか、についてゲームAI研究の三宅陽一郎と、建築家/研究者の豊田啓介にその可能性を訊いています。

三宅陽一郎はゲームAIの理論的体系を「MCS-AI動的連携モデル」(Meta-Character-Spatial AI dynamic cooperative model)としてまとめています。

「メタAI、キャラクターAI、スパーシャルAIは、それぞれ自律型人工知能として発展しつつ連携することでゲームを制御する。特にメタAIはプレイヤーの感情をリアルタイムに推定しながら、よりエモーショナルなゲーム体験ができるようにほかのAIに支持を出す。」と述べ、以下のように解説しています。

メタAIエージェントを動的に配置
レヴェル状況を監視
キャラクターに指示
ゲームの流れを作る
キャラクターAI自律的な判断
仲間同士の協調
時にチームAIとなる
スパーシャルAIメタAI、キャラクターAIの為にレヴェルの認識のためのデータを準備
オブジェクト表現を管理
ナヴィゲーション・データの管理
パス検索/位置解析
コンデナスト・ジャパン(2022)WIRED VOL.46 拡張するゲームと世界:P.91

このモデルを実社会に適用した場合に可能になるのは、行政のサポートであるとして以下のように説明しています。

具体的には各自治体の首長の意思決定を補助することで、その際に最も重要なのが予測能力となります。

つまりメタAIが集めた情報から都市の未来を予測してシミュレーションすることで、例えば知事が災害対応などで迅速かつ的確な判断をすることをサポートするのです。

コンデナスト・ジャパン(2022)WIRED VOL.46 拡張するゲームと世界:P.92

感想・口コミ・書評記事

感想

普段ゲームをしないが、「WIRED日本語版では10年ぶりのゲーム特集」という言葉が目に止まって、目次を見てみたところ「ゲームをつくらないゲームエンジン」などゲームを多角的に語っている内容が書かれているのだと思って購入することにした。

読み終えてみての全体の感想は、普段ゲームをしない人でも興味深く楽しく読むことができ、将来は単にゲーム領域にとどまることなく、ゲーム領域で培われた技術や人材が産業や社会に拡がっていくことがわかる内容だった。

「『一緒に遊ぶ』の現代史」では、1770年から現在までのゲーム変遷を外観しており、知っているゲームと知らないゲームがあって、懐かしかったり新しい発見があって面白かった。

「かくしてゲーム音楽はポピュラーミュージックになった」では、任天堂最初期のゲームサウンドを担当した人の話や、日本と米国のゲーム音楽の捉え方の違い、ゲームにおける音楽の位置付けなど、どのような変遷をたどってきたのががわかり、ゲーム音楽により興味を感じた。

「わたしたちがゲームを作る理由」では、インディー・ゲームクリエイター7名やコミュニティ運営者について、現場の写真やゲーム開発者になったきっかけなどが掲載されており、今度のゲーム業界で活躍していく人の姿が垣間見えて、彼ら彼女らが創るゲームが楽しみだ。

ゲーム分野でつちかわれた思考や技術が、娯楽としてのゲームにとどまらず産業や社会にどのように活かされていくのかがわかるので、ゲームに関心がある人はもちろん、いままでゲームに関心がなかった人にもおすすめする雑誌です。

コンデナスト・ジャパン(著)WIRED編集部(編集)プレジデント社(出版社)2022/9/14(発売日)156P(ページ数)

口コミ

書評記事

WIREDのゲーム特集(vol.46)を読んだ感想 - 川並大樹のLIFELOG

参考文献

編集後記のポッドキャストや、寄稿者が書いた本を紹介します。

WIRED JAPAN ポッドキャスト

編集担当者による編集後記をSpotifyポッドキャストで聴くことができます。

WIREDらしいゲーム特集をどのように考えたのかといった話が聞けて面白かったです。

現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から:中川 大地(著)

「『一緒に遊ぶ』の現代史」を寄稿している、中川大地さんが執筆した本です。

中川 大地(著)早川書房(出版社)2016/8/24(発売日)576P(ページ数)

戦略ゲームAI 解体新書 ストラテジー&シミュレーションゲームから学ぶ最先端アルゴリズム:三宅 陽一郎(著)

「ゲームAIが都市(≒環境)に溶け出すとき」を寄稿している、三宅陽一郎さんが執筆した本です。

法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する:水野 祐(著)

「水野祐が考える新しい社会契約」を寄稿している、水野祐さんが執筆した本です。

水野 祐(著)フィルムアート社(出版社)2017/2/24(発売日)344P(ページ数)

メタバースがわかる本おすすめ

まとめ

雑誌の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介しました。

ゲームのこれまでの変遷、インディーゲームクリエイターなど新しい潮流、ゲームの産業や社会への応用などを当事者へのインタビューや写真もまじえて、ゲームの歴史、現在地、将来がわかるWIRED日本語版10年ぶりのゲーム特集です。

ゲーム分野でつちかわれた思考や技術が、娯楽としてのゲームにとどまらず産業や社会にどのように活かされていくのかがわかるので、ゲームに関心がある人はもちろん、いままでゲームに関心がなかった人にもおすすめする雑誌です。

コンデナスト・ジャパン(著)WIRED編集部(編集)プレジデント社(出版社)2022/9/14(発売日)156P(ページ数)