あなたは、「トークンエコノミー」という言葉を聞いたことがありますか?
テレビやWeb, SNSを見る時、あらゆるところに「広告」が表示されることに違和感を感じませんか?
現在の企業から消費者に対して広告を一方的に送りつけるマーケティングの構図は以前の時代と大きく変化していません。
「トークンエコノミー」は、これまでの企業を主体とした一方的なマーケティングを脱却し、企業と消費者が相互に共存し合う、新たなデジタル経済圏を構築することを目的にしています。
この本では、トークンエコノミーの定義と仕組み、経済活動、先駆者、成功法、未来の姿、日本のニーズについて解説しており、本のタイトルにあるように「教科書」として一通り学ぶことができます。
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介します。
本の概要
書誌情報
著者紹介
高 榮郁(こう・よんう)
ロケットスタッフ株式会社代表取締役
著者が所属するロケットスタッフ株式会社は漫画配信サービス「漫画KING」を運営しており、日本マイクロソフトと協業で、独自の「MANGAトークン」を開発・発行し、作家と読者の新しい関係を築くためのトークンエコノミーの構築を目指しています。
本の目次
この本の目次を引用して紹介します。
- はじめに
- 第1章 ブロックチェーンがもたらすトークンエコノミー
- 第2章 トークンエコノミーで、私たちの経済活動はどう変わるのか?
- 第3章 トークンエコノミーの先駆者たち
- 第4章 トークンエコノミーのビジネスは、こうすれば成功する
- 第5章 トークンエコノミーがつくり出す「未来」とは?
- 第6章 日本人にこそ、トークンエコノミーは必要だ
- おわりに
- 巻末/特別インタビュー(1) 暗号資産ウォレットサービス「CoinUs」
- 巻末/特別インタビュー(2) 患者さん中心の個人医療情報プラットフォーム「MediBloc」
- 巻末/トークン作成マニュアルのダウンロード方法
もっとくわしく見たい場合は、本の目次(詳細版)が記事の最後にあります。
注目点
この本を読んで注目した点を紹介します。
トークンエコノミーの定義と仕組み
トークンエコノミーはどのような定義なのか?どのような仕組みになっているのか?について、第1章「ブロックチェーンがもたらすトークンエコノミー」から、ポイントを引用して紹介します。
「トークンエコノミー」とは、一言でいうと「デジタル通貨による新しい経済圏」のことです。
心理学の世界には、望ましい行動をとった場合に「トークン」を付与し、付与したトークンを有形無形の価値と交換できるようにすることで、特定の人やグループに対して望ましい行動を推奨する、という手法があり、これを「トークンエコノミー法」と呼んでいます。
ビジネスや経済における「トークンエコノミー」では、特定の範囲や対象でのみ使用できる「トークン」を介して、言ってみれば「閉じた経済圏」を構築し、その中で配布者が意図した経済活動を期待することができる。
トークンエコノミーでは、そのトークンが配布される特定のモノやサービスに対して価値を認めた人たちのみが参加し、トークンがサービス内で循環するような仕組みができあがります。
イーサリアムでは、ブロックチェーンを活用して、「カスタム・トークン」と呼ばれる独自の仮想通貨を作ることができます。この仕組みを活用することで、誰でも比較的容易に仮想通貨を設計し、それを独自のビジネスに活用できるようになるのです。
「スマート・コントラクト」と「カスタム・トークンの作成」というイーサリアムが持つ2つの特徴を活用することで、数多くのサービスやアプリの構想などが世界各地で生まれているのです。
イーサリアムでは、トークンの標準仕様として「ERC(Ethereum Request for Comments)」という基準が設けられており、これに準拠することで比較的容易にトークンの発行や送受信機能の活用ができるのです。
さらに、ERC20の基準では実現できない多機能のスマート・コントラクトを可能とする「ERC223」や「ERC621」などの基準を満たすカスタム・トークンも数多く存在しています。
ただ、この原稿を執筆している2019年2月現在、日本国内において、スティーミットのようなトークンエコノミーを展開していくのはまだ難しいのが現状です。それは、日本の場合、「資金決済法」というハードルが存在しているからです。
トークンエコノミーの経済活動
トークンエコノミーでのトークンにはどのようなものがあるのか?どのような経済活動になるのか?について、第2章「トークンエコノミーで、私たちの経済活動はどう変わるのか?」からポイントを引用して紹介します。
【ユーティリティ・トークン】企業等が、自分たちのブロックチェーン・サービスを開発するために、その資金調達手段としてICO(Initial Coin Offeringの略。仮想通貨を用いて行う資金調達の方法)を行った際に、その証明として配布されるトークンのことです。
【セキュリティ・トークン】ブロックチェーンによって記録される「株式」のことを指し、それを保有することで、いわゆる「株主」となることができるのです。
【ステーブル・トークン】ステーブル(Stable)とは、「安定」の意味で、その名前の通り、価値が一定に保たれているトークンのことです。
バウンティプログラムとは、トークンエコノミー内において、「メリットのある行動」をすることによって、そこで流通するトークンがもらえる、という仕組みのことです。
「参加型消費」が普及するトークンエコノミーの経済圏では、通常のユーザー(消費者)が既存のユーザーの枠を超え、「サービスを提供する側の一員」として活躍できるのです。
たとえ法定通貨の価値が下がっても、トークンエコノミーで流通するトークンを保有していれば、その経済圏では法定通貨の価値に左右されずに、経済活動を続けることができるのです。
トークンエコノミー化された小さな経済圏では、「生産者」と「消費者」が中間業者を経由せずに直接的につながることができます。そのためお互いが評価されやすい環境を作ることができます。
感想・口コミ・書評記事
感想
これまでブロックチェーン、ビットコイン、イーサリアムを学ぶ中でスマート・コントラクトやトークンについて断片的に理解していましたが、トークンエコノミー(デジタル通貨による新しい経済圏)という観点から基礎から応用まで体系的に学ぶことができて理解が深まりました。
トークンエコノミーがもともとはトークンエコノミー法という心理学の世界で生まれた手法だということを知り、考え方としては昔からあるけれども今までは実現する技術がなかったということなので、今後ブロックチェーンによるトークンエコノミーはこれから普及する可能性が高いと感じました。
この本のおわりにで「トークンエコノミーでは、そこに参加する人それぞれが互いの価値を評価し合い、それに対する対価を循環させる、『共生の経済圏』を確立することができます。」とありました。経済圏と聞くと現在の企業と消費者の枠組みで考えてしまいがちですが、この本を最後まで読むと、トークンエコノミーは行政や学校なども含めた社会全体に関わる新しい考え方になるようです。
トークンエコノミーはWeb3と共にこれから数十年に渡って重要な考え方になると感じました。この本を何度か読み返したり、トークンエコノミーに関連することを他にも(心理学トークンエコノミー法など)調べて学んでいきたいと思います。
口コミ
書評記事
【書評】トークンエコノミービジネスの教科書 | Aburasobalog
【書評】『トークンエコノミービジネスの教科書』(高榮郁)|本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ
『トークンエコノミービジネスの教科書』を読んだ感想 │ キヨシの命題
参考文献
Web記事
トークンエコノミー・ブロックチェーンなどをテーマにしたWebメディア「あたらしい経済」のトークンエコノミー連載記事
連載予告:トークンエコノミーがブロックチェーンにもたらす真の恩恵 | あたらしい経済
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Web3というインターネットの転換点と、その背景にあるDAOという新しいコミュニティについて、概要・本質・哲学を、インターネットの歴史を振り返りながら解説している本です。
この本の注目点や感想、本の目次などをブログ記事で紹介しています。
Web3がわかる本おすすめ
まとめ
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介しました。
「トークンエコノミー」は、これまでの企業を主体とした一方的なマーケティングを脱却し、企業と消費者が相互に共存し合う、新たなデジタル経済圏を構築することを目的にしています。
この本では、トークンエコノミーの定義と仕組み、経済活動、先駆者、成功法、未来の姿、日本のニーズについて解説しており、本のタイトルにあるように「教科書」として一通り学ぶことができます。
本の目次(詳細版)
この本の目次をくわしく引用して紹介します。
- はじめに
- 第1章 ブロックチェーンがもたらすトークンエコノミー
- トークンエコノミーとは何か?
- トークンエコノミーのモデルケース
- 「次世代トークンエコノミー」を生んだビットコインとは?
- イーサリアムの「スマート・コントラクト」が広げたビジネスの可能性
- 中間業者から「データ所有権」を取り戻す
- トークンエコノミーはスタートアップにとって強力なツール
- 第2章 トークンエコノミーで、私たちの経済活動はどう変わるのか?
- トークンエコノミーで実現できる「世界」を見てみよう
- 「トークン」にはいくつかの種類がある
- トークンエコノミーで「消費者」のポジションも変わる
- トークン保有者がアンバサダーになる社会
- 法定通貨ではなくブロックチェーン・トークンだからできること
- トークンエコノミーで独自の経済圏をつくる
- 第3章 トークンエコノミーの先駆者たち
- Bitcoin〜「決済」に特化したトークンエコノミー
- Ethereum〜「決済+取引」の機能を持つトークンエコノミー
- CryptoKitties〜ブロックチェーン・ゲーム開発の先駆的な存在
- Lucidity/ACA Network〜ウェブ広告の透明性・信頼性アップにブロックチェーン技術を活用
- ALIS〜シンプルなつくりで人気投稿にはトークンで還元
- 取引所トークン〜仮想通貨取引所が発行する自社の利用を促すトークン
- PoliPoli〜健全な政治議論の場を提供するトークンエコノミー
- 第4章 トークンエコノミーのビジネスは、こうすれば成功する
- トークンエコノミーを成り立たせる「3つの条件」とは?
- ステークホルダー同士の関わり方が変わってくる
- 「ユーザ目線」を最優先に設計する
- 成功を左右する「トークン流動性」を安定させる方法とは?
- 第5章 トークンエコノミーがつくり出す「未来」とは?
- トークンエコノミーは「社会の仕組み」を大きく変える
- トークンエコノミーで「究極の共存社会」が構築できる
- 「共通の関心」を持つ人が集うからこそ、できること
- 「価値が付きにくかったこと」にも価値が付けやすくなる
- スマート・コントラクトで自治体の仕事も活性化する
- 第6章 日本人にこそ、トークンエコノミーは必要だ
- 成熟した日本社会だからこそトークンエコノミーのニーズがある
- 必要なのはブルー・オーシャンを狙い、かつ独占状態をつくること
- おわりに
- 巻末/特別インタビュー(1) 暗号資産ウォレットサービス「CoinUs」
- 巻末/特別インタビュー(2) 患者さん中心の個人医療情報プラットフォーム「MediBloc」
- 巻末/トークン作成マニュアルのダウンロード方法