メタバースは今後どのように進化し、私たちのビジネスや生活とかかわってくるのか、先行する各企業の具体的な戦略から、来るべき「メタバース経済圏」の姿を解説している本です。
メタバースについて個人でもビジネスでも、すでに興味・関心がある人や今後取り組もうと考えている人にとって、最新動向と今後の予測を一冊で一通り把握できる本として一読をおすすめします。
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介します。
本の概要
書誌情報
著者紹介
新 清士(しん・きよし)
デジタルハリウッド大学大学院教授。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRゲーム開発会社のよむネコ(現Thirdverse)を設立。VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。(本書著者紹介より一部引用)
著者が伝えたいこと
著者はこの本を通じて伝えたいことを以下のように述べています。
「メタバースは、次世代インターネットになるとも言われ、その経済規模は今後8兆〜13兆ドルに到達するという予測もあります。そのため、メタバースビジネスのプラットフォーマーの座をめぐって、すでに激しい覇権争いが始まっています。」
「果たしてメタバースは、今後どのように進化し、私たちのビジネスや生活とかかわってくるのでしょうか。」
「本書では、先行する各企業の具体的な戦略から、来るべき「メタバース経済圏」の姿を描き出したいと考えています。」
「本書がみなさんのメタバースについての理解を深め、そこから広がる新しいビジネス市場の可能性について知るための一助になれば幸いです。」
本の目次
本の目次を引用して紹介します。
- はじめに
- 第1章 誰が覇権を握るのか
- 第2章 先駆者としてのゲーム企業ーーエピック・ゲームズ、ロブロックス
- 第3章 メタ・プラットフォームズの野望
- 第4章 猛追するマイクロソフトと、その他のGAFA
- 第5章 新興企業に勝ち目はあるかーーナイアンティック、ザ・サンドボックス、VRチャット
- 第6章 2026年のメタバースビジネス
- おわりに
もっとくわしく見たい場合は、本の目次(詳細版)が記事の最後にあります。
注目点
この本を読んで注目した点を3つ紹介します。
ロブロックスがビジネス界から注目を集める理由
1つ目に注目した点は「第1章 誰が覇権を握るのか」に書かれている「ロブロックスがビジネス界から注目を集める理由」です。
著者は、ロブロックスは「体験型広告」と呼ばれる、ブランド体験に主軸をおいた広告を展開していることにも特徴があり、ナイキ、ユニバーサルスタジオ、ディズニー、レゴといった有名企業からグッチなどの高級ブランドまで、さまざまな企業が自社エリアを持ち、アバターグッズを販売している、と述べています。
著者は、ロブロックス社のデイヴィッド・バズッキCEOが、2021年1月に米ニュースメディア、ワイアードに「メタバースが近づいている」というコラムを寄稿した内容を以下のように紹介しています。
「2021年にかけて、メタバースは広く利用され、人間の共同体験のユーティリティとなり始めるでしょう。人々はゲームをするためだけでなく、新しい映画の予告編をチェックしたり、ユーザーが作成した動画を見て笑ったりするために、仮想世界に集まるようになるのです。教育は、オンラインでのプログラミングの学習から、物理学や生物学のシミュレーションによるコアサイエンスの学習へと移行し、最終的にはそのなかで教室が構成される没入型環境となるでしょう。大学のキャンパスや企業の本社など、見慣れた物理的な場所を再現して、遠隔で働く同僚と会うのも楽しいかもしれません」
新 清士. メタバースビジネス覇権戦争 (Japanese Edition) (pp.68-69). Kindle 版.
ホライズンワークルーム、驚きの没入感
2つ目に注目した点は、「第3章 メタ・プラットフォームズの野望」に書かれている「ホライズンワークルーム、驚きの没入感」です。
著者は、ビデオ会議システムであるホライゾンワークルームを実際に使ってみた感想として、「アバターが違和感なく動作する」「実在の人と対面している感覚が得られる」「誰がどの方向にいるかを奥行き感とともに感じさせる」などと述べ、実際に会議で使った印象を以下のように述べています。
ここから、視線や瞬きだったり、聞こえてくる音の向きや立体感であったりの積み重ねこそが、「そこに本当の人間がいる」という認識をつくり出すうえでとても重要なのだということがよくわかります。(中略)
実際に筆者が所属していた会社では、日米間のスタッフが参加する毎週定例のミーティングで使っていました。言葉に加えてボディーランゲージを組み合わせることができ、その動きを見ていると、仮想空間上でも人となりが感じられます。そのため、Zoomなどに比べて伝えられる情報が多く、コミュニケーションの円滑化が進む印象があります。
新 清士. メタバースビジネス覇権戦争 (Japanese Edition) (pp.93-94). Kindle 版.
アマゾンとメタの最強タッグ
2つ目に注目した点は「第4章 猛追するマイクロソフトと、その他のGAFA」に書かれている「アマゾンとメタの最強タッグ」です。
著者は、あまり即時かつ緻密なレスポンスが求められないメタバースの場合には、クラウドゲーミングの仕組みが向いている可能性があり、実際、クラウドゲーミングがメタバースの主戦場になる兆候は出始めている、と述べています。
著者は、一体型のVR・ARのハードの性能を高めていくことには限界があり、薄く、軽くというVR・ARデバイスがメガネと同じぐらい軽量化されるためには、クラウドゲーミングを避けては通れない、と述べ、メタとアマゾンの協力関係について、以下のように紹介しています。
2021年12月、メタはアマゾンを「長期戦略的クラウドプロバイダー」に選定したと発表しています。(中略)今後は、特にメタが開発したAIの基盤をAWSで動かせるようにするといった研究開発用途や、買収した企業がAWSを使っていた場合にそのまま利用できるようにするということが想定されています。(中略)この2社の提携は、今後、クラウドゲーミングへのシフトが始まったときに、大きな意味を持ち始める可能性があります。
新 清士. メタバースビジネス覇権戦争 (Japanese Edition) (p.141). Kindle 版.
(参考)Meta、AWS を戦略的クラウドプロバイダーに選定 | AWS
感想・口コミ・書評記事
感想
世界のメタバース関連企業である、ゲーム企業(フォートナイト、ロブロックス)、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、グーグル、アップル、アマゾン、ソニー、新興企業(ナイアンティック、ザ・サンドボックス、VRチャット、日本企業など)について、現在までの動向と今後の方向性を各社の製品・サービスやCEOの発表・発言から読み解きながら著者の意見を交えて解説しており、読み終えてみてメタバース関連企業の全体像と個々の企業の戦略の違いが見えるようになり、ますます今後のメタバースに興味を湧くようになった。
新興企業の中に、フランスのクラウドゲーミングサービスを展開するシャドウVR(Shadow VR)、最高品質のVRとパススルーARを実現しているフィンランドのヴァルヨ(Varjo)、ソーシャルVRを提供するチェコのネオスVR(NeosVR)、といったヨーロッパの企業が多く、これまでのIT業界と違って興味深く思った。
読んでいて一番アンダーラインを引いたのは「第6章 2026年のメタバースビジネス」です。著者が約5年後のメタバースを、企業の開発状況やアナリスト予測に加えて、映画や著者の経験を踏まえて考察していて興味深く、驚き?のメタバースの最終目的も述べている。
掲載されている写真の出展元URLや引用している映画や人物などについて、まだ見ていないのがあったので情報を参照してから、もう一度この本を読んでみたいと思う。
メタバースについて個人でもビジネスでも、すでに興味・関心がある人や今後取り組もうと考えている人にとって、最新動向と今後の予測を一冊で一通り把握できる本としておすすめします。
口コミ
Twitterの口コミを紹介します。
書評記事
「メタバースビジネス覇権戦争」を読んで。|adjmt|note
参考文献
この本に参考文献として記載されている本はありませんでした。
著者に関する書籍、Webサイトなどを紹介します。
オウンドメディア「Thirdverse Ready」
著者が関心を持つメタバースに関する領域を中心に、取材したものを発信していく場。
AppleのVR・ARデバイスの狙いを検証する | Thirdverse Ready
Metaの新型Project Cambria(Quest Pro)はノートPCの代わりとなるか | Thirdverse Ready
マイクロソフトの考えるメタバースを読む:ゲームとエンタープライズ(前) | Thirdverse Ready
マイクロソフトの考えるメタバースを読む:ゲームとエンタープライズ(後) | Thirdverse Ready
レディ・メタバース セミナー
メタバース時代のテーマを中核においた勉強会
レディ・メタバース セミナーのアーカイブ公開を開始しました | Thirdverse Ready
レディ・メタバース セミナー06「GDC報告会」と07「メタバースとWeb3」のアーカイブ公開を開始しました | Thirdverse Ready
レディ・メタバース セミナー08「『メタバース進化論』をバーチャル美少女ねむさんと読む」のアーカイブ公開を開始しました | Thirdverse Ready
VRビジネスの衝撃 「仮想世界」が巨大マネーを生む :新 清士(著)
メタバースがわかる本おすすめ
VRがわかる本おすすめ
まとめ
本の概要、注目点、感想・口コミ・書評記事、参考文献、を紹介しました。
メタバースは今後どのように進化し、私たちのビジネスや生活とかかわってくるのか、先行する各企業の具体的な戦略から、来るべき「メタバース経済圏」の姿を解説している本です。
メタバースについて個人でもビジネスでも、すでに興味・関心がある人や今後取り組もうと考えている人にとって、最新動向と今後の予測を一冊で一通り把握できる本として一読をおすすめします。
本の目次(詳細版)
この本の目次をくわしく引用して紹介します。
- はじめに
- 第1章 誰が覇権を握るのか
- コミュニケーションが大きく変わる
- 先んじるメタ・プラットフォームズ
- メタバースは次世代のインターネット
- 仁義なきM&Aの動き
- メタバースとゲームエンジン
- メタバースに押し寄せる非VRの大企業
- ビジネスチャンスはどこにあるのか
- メタバースの発展を見極める
- 第2章 先駆者としてのゲーム企業ーーエピック・ゲームズ、ロブロックス
- 「メタバースで暮らす」という理念
- セカンドライフは何が画期的だったのか
- 経済活動ができる仮想空間の実現
- セカンドライフが示したメタバースの課題
- ゲームの世界がコミュニケーションの場に
- 「ゲームのサービス化」を体現するフォートナイト
- エピックゲームズの二つの戦略
- 若年層から爆発的な支持を受けるロブロックス
- なぜ優れたコンテンツが次々に生まれるのか
- ロブロックスがビジネス界から注目を集める理由
- 第3章 メタ・プラットフォームズの野望
- 八つのキーワード
- 中心にあるのはXRのイノベーション
- メタバースによって雇用を生み出す
- 独自のサービス「ホライズンワールド」
- メタとアップルの因縁
- なぜオキュラスを買収したのか
- バーチャル会議室アプリの変遷
- ホライズンワークルーム、驚きの没入感
- ARは働き方をどう変えるのか
- VRデバイスによってARを実現する
- 新しい経済圏を生み出せるか
- 第4章 猛追するマイクロソフトと、その他のGAFA
- マイクロソフトの反撃
- マイクロソフトvsソニー
- 二つの対ソニー戦略
- なぜ有力なゲーム会社を買収するのか
- ゲームを作ることは、メタバースをつくること
- MRプラットフォーム・メッシュとホロレンズ2
- マイクロソフトはエンタープライズ市場を制するか
- 新型ハードウェアの開発状況
- グーグルが再び動き始めた
- 単発の技術やアプリをどうまとめ上げるか
- グーグルの活路はスマホのARにあり
- アップルは現実空間の3D化で抜きん出る
- 新しいハードの登場は迫っている
- ハード中心のしたたかな戦略
- 基盤環境の整備に失敗したアマゾン
- クラウドゲーミングに可能性を探る
- アマゾンとメタの最強タッグ
- ソニーはメタバースを活かすことができるか
- 第5章 新興企業に勝ち目はあるかーーナイアンティック、ザ・サンドボックス、VRチャット
- VRメタバースはディストピアか
- リアルワールドメタバースの可能性
- ハードウェアの開発に乗り出したナイアンティック
- メタバースとブロックチェーン
- 「Play-to-Earn」というコンセプトの登場
- ザ・サンドボックスの評価はバブルなのか
- 有名ブランドの参入と日本企業の動き
- 「非中央集権的なメタバース」は実現できるか
- RMT化することで生まれる法的な課題
- VRでメタバースが楽しめるVRチャット
- 経済圏の中心はアバター販売サービス
- なぜ日本でクリエイター経済が成長しているのか
- 盛り上がるメタバース展示会
- VRチャットが乗り越えなければならない課題
- 第6章 2026年のメタバースビジネス
- メタバースは心の避難所になる
- VRデバイスがなければ伝わらない情報
- メタバースで過ごす時間は増えていく
- ユーザー最大の関心事項はアバター
- 短期的な主戦場はスマートフォン
- VRデバイスの一強状態は当面変わらない
- 相互運用性は実現するのか
- メタバースビジネスの進化
- 大きな技術トレンドから見たメタバース
- メタバースという「現実」
- おわりに