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【注目点・感想】マスター・オブ・スケール 世界を制したリーダーが初めて明かす 事業拡大の最強ルール:リード・ホフマンほか(著)大浦千鶴子(翻訳)

2023年3月14日

本「マスター・オブ・スケール」アイキャッチ画像

グローバル企業を興した創業者やリーダーたちをゲストに迎えたポッドキャスト『マスターズ・オブ・スケール』で話された、創業秘話や事業拡大時のエピソードとともに、著者がエピソードを分析した内容と、そこから導いた理論を解説している本です。

これから起業を目指す人、すでにスタートアップを起業している創業者や社員、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタリストなど、スタートアップに関わりある人に一読をおすすめします。

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介します。

本の概要

書籍情報

日本語版

リード・ホフマン, ジューン・コーエン, デロン・トリフ(著)大浦 千鶴子(翻訳)マガジンハウス(出版社)2022/10/6(発売日)352P(ページ数)
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原著(英語版)

Reid Hoffman(著)Currency(出版社)2021/9/7(発売日)271P(ページ数)
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著者紹介

この本の著者紹介より、著者3名の略歴を引用して紹介します。

Reid Hoffman(リード・ホフマン)

起業家・経営者。ベンチャー投資会社「グレイロック・パートナーズ」のパートナー。

彼が提唱する「ブリッツスケーリング」は、総力を挙げてスタートアップを急成長させる手法として認知されており、世界中の起業家たちから尊崇を得ているシリコンバレーの最重要人物の一人である。

本書の元になったポッドキャスト『マスターズ・オブ・スケール』の司会を務める。

June Cohen(ジューン・コーエン)

ポッドキャスト『マスターズ・オブ・スケール』を運営する「ウェイトワット」共同創業者。

2006年には「TEDトーク」の経ち上げに参加し、ネット上でのメディアの構築に尽力。

Deron Triff(デロン・トリフ)

ポッドキャスト『マスターズ・オブ・スケール』を運営する「ウェイトワット」共同創業者。

以前は、コーエンとともに「TEDトーク」のエグゼクティブ・チームの一員として活躍。

著者が伝えたいこと

著者はこの本を通じて伝えたいことを以下のように述べています。

本書では、「事業を拡大すること」は単なるデータの蓄積ではなく、心や意識の問題でもあると考えている。欠かせないのは確たる信念であり、それと同量の、失敗を厭わない情熱である。

実のところ、本書で紹介する企業の多くが5000ドル(約65万円)足らずで開業している。何より重要なのは知識と洞察力とインスピレーションなのだ。

さあ、リーダーたちの出番だ。彼らのストーリーを思いきり楽しみ、アドバイスを心に焼き付けてほしい。そして、読者のみなさん自身の旅を始めてほしいのだ。

本の目次

本の目次を引用して紹介します。

  • はじめに
  • 第1章 「ノー」から学べ
  • 第2章 最初から拡大を狙わない
  • 第3章 ビックアイデアをつかみとる
  • 第4章 企業文化を構築する
  • 第5章 成長は時に早く、時にゆっくり
  • 第6章 これまでの知識を捨て去る
  • 第7章 ユーザーの行動に目を向けよ
  • 第8章 路線変更を恐れない
  • 第9章 変化に対応しつつリードせよ
  • 第10章 社会的なミッションを打ち出す

もっとくわしく見たい場合は記事の最後に、本の目次(詳細版)があります。

注目点

この本はどのようなことが書かれているのか?読んでみて注目した点を3つ紹介します。

両極端な反応と「煮えきらないノー」を探せ

1つ目に注目した点は「第1章 『ノー』から学べ」に書かれている「ホフマンの分析|両極端な反応と『煮えきらないノー』を探せ」です。

著者は、アイデアを投資パートナーたちに提起した時に一番いいのは、何人かに「頭がおかしいぞ」と言われ、別の何人かに「なるほどね」と言われることで、つまり、両極端な反応である、と述べています。

たとえば、この両極端な反応は、著者がエアビーアンドビー(Airbnb)に投資しようと決めたときに起きた、と説明しています。

他にも、特大のアイデアがある時に探すものがあり、それは投資家たちにアイデアを持ちかけるとき、少なくとも何人かは煮えきらない態度をとってくれないかと期待する「煮えきらないノー」で、「ノー」の結論に進みながらも、その理由を説明する言葉の端々から何かを感じ取る、と述べています。

この「煮えきらないノー」──「ノー」と「イエス」のはざま──は、アイデアに大きな可能性があることを暗示するものだ。

なぜなら、最高のアイデアに対して、人はついつい「イエス」と「ノー」の両方を言いたくなるものだ。

最高のアイデアには、あらゆる人の気分を激しく揺さぶる力がある

リード・ホフマン,ジューン・コーエン,デロン・トリフ. マスター・オブ・スケール 世界を制したリーダーが初めて明かす 事業拡大の最強ルール (Japanese Edition) (p.34). Kindle 版.

スタート地点で何をすべきか

2つ目に注目した点は「第2章 最初から拡大を狙わない」に書かれている「スタート地点で何をすべきか」です。

2009年、ビックアイデアを思いついた若き起業家、ブライアン・チェスキーのエアビーアンドビー(Airbnb)が開業したばかりの頃、スタートアップ・アクセラレーターであるYコンビネーター(Y Combinator)の共同創業者ポール・グレアムとミーティングした会話を、著者は紹介しています。

  • ポール「利用者のところに行かなきゃだめだろ。知り合いになるんだよ。ひとりずつ」
  • ブライアン「そんなことしていたら事業拡大できません。顧客が増えてきたら、ひとりひとりに会うなんて無理です」
  • ポール「だからこそ、今それをやるべきなんだ」

ポールが指摘したポイントは、コアユーザーの気にいるものをつくり出すには、彼らに会いにーー彼らの住んでいるところまで行く必要があるということだった、と解説しています。

著者は、ビジネスの将来を左右するほどに重大な、設立直後の時期、スケール前の短い期間について、以下のように述べています。

顧客から直接受け取るフィードバックに基づいて、製品を定義し、丹精込めて、顧客に愛されるものに仕上げるまで──製品に改良を加える好機が、この時期なのだ。

ブライアンを含めて、世界でもっとも成功した創業者たちの何人かは、こうした製品やサービス開発の初期段階を黄金期として振り返る

もちろん、当時はまだそのように思えていなかったろうが。

リード・ホフマン,ジューン・コーエン,デロン・トリフ. マスター・オブ・スケール 世界を制したリーダーが初めて明かす 事業拡大の最強ルール (Japanese Edition) (p.49). Kindle 版.

危険をかえりみず未知の領域に踏み込む

3つ目に注目した点は「第6章 これまでの知識を捨て去る」に書かれている「危険をかえりみず未知の領域に踏み込む」です。

著者は、創設されたばかりのフォックス放送(Fox Television Network)のCEOに就任したバリー・ディラーが、テレビ史上もっとも成功したシリーズとなる『ザ・シンプソンズ』に惹かれたのは、新分野を切り拓くプロジェクトに自分自身の気持ちが弾むからだった、と述べています。

そして、「自身を未知の領域に放り込めば、否応なく学び、適応し、試行錯誤しなければならなくなる」と解説し、「何も知らないときが、一番いい仕事ができるものだって」とバリー・ディラーの言葉を紹介しています。

ホフマンの提起した「自分自身を永遠のベータ版(未完成品)と見なす」というコンセプトを、バリーほど体現している人はいないかもしれない。

すべてのことに新たな考え方をもってアプローチせよ。新たな挑戦、新たな学びの機会を求め続けよ

決して「この新しいゲームはもう知っている」などと思ってはならない。

リード・ホフマン,ジューン・コーエン,デロン・トリフ. マスター・オブ・スケール 世界を制したリーダーが初めて明かす 事業拡大の最強ルール (Japanese Edition) (p.168). Kindle 版.

感想・口コミ・書評記事

感想

この本は、50以上のスタートアップ企業から大企業で起きたエピソードや起業家の言葉を紹介し、それぞれの事例について著者の分析や理論を解説しており、読みやすく、読み応えがある内容になっています。

Airbnb、Netflix、Instagram、Facebookといった有名なスタートアップ企業の創業時のエピソードだけでなく、初めて名前を聞くIT以外の企業や、バーバリーとアップルストアを改革したアンジェラ・アーレンツやビル・ゲイツ財団など、著者の幅広い人脈を活かした多様な企業のエピソードが含まれているのが特徴です。

全部で10章ある中で半分ぐらいは、創業の早期段階において、起業家や社員が知っておくべき教訓が書かれており、その時期の大切さが分かりました。

本を読む時間があまり確保できない場合や、この本を振り返る際には、自分が興味ある章の中にある「ホフマンの分析」「ホフマンの理論」を読むだけでも、自分自身がおかれている状況での問題に対する解決のヒントが得られるようになっています。

紹介されているエピソードは、成功談だけでなく、失敗談や詳細な状況(GoogleのYouTube買収交渉の場所はリークされないようにデニーズだった)も書かれているので、そこからも学ぶことができます。

著者の分析や教訓だけでなく、投資家やコンサルタントのアドバイスも紹介されています。たとえば、組織を乱す人物を見分ける質問として、「自分を助けてくれた人の名をひとりも挙げられないような人たちを雇うのはやめたほうがいい」といった言葉がありました。

これから起業を目指す人、すでにスタートアップを起業している人、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタリストなど、スタートアップに関わりや興味がある人にとって、自分自身の考え方を見つめ直すために有益な内容だと感じました。

リード・ホフマン, ジューン・コーエン, デロン・トリフ(著)大浦 千鶴子(翻訳)マガジンハウス(出版社)2022/10/6(発売日)352P(ページ数)
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口コミ

書評記事

書評『マスター・オブ・スケール』~悩めるリーダー必読の書:日経ビジネス電子版

参考文献

この本の参考文献に記載されている本や関連する本を紹介します。

PRINCIPLES(プリンシプルズ) 人生と仕事の原則:レイ・ダリオ(著)

「第9章 変化に対応しつつリードせよ」の「どんな声にも真摯に受け止める」で、ブリッジウォーター・アソシエイツ(Bridgewater Associates)の創業者、レイ・ダリオの物語が書かれており、このベストセラー書籍が生まれたと紹介されています。

レイ・ダリオ(著)斎藤 聖美(翻訳)日経BP(出版社)2019/3/20(発売日)631P(ページ数)
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ブリッツスケーリング:リード・ホフマン, クリス・イェ(著)

リード・ホフマンが、急速に成長しながら企業を運営する戦略とテクニックのセット「ブリッツスケーリング」を解説している本です。

この本の注目点や感想、目次などをブログ記事で紹介しています。

リード・ホフマン, クリス・イェ(著)滑川 海彦, 高橋 信夫(翻訳)日経BP(出版社)2020/2/14(発売日)408P(ページ数)
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スタートアップにおすすめの本

まとめ

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介しました。

グローバル企業を興した創業者やリーダーたちをゲストに迎えたポッドキャスト『マスターズ・オブ・スケール』で話された、創業秘話や事業拡大時のエピソードとともに、著者がエピソードを分析した内容と、そこから導いた理論を解説している本です。

これから起業を目指す人、すでにスタートアップを起業している創業者や社員、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタリストなど、スタートアップに関わりある人に一読をおすすめします。

リード・ホフマン, ジューン・コーエン, デロン・トリフ(著)大浦 千鶴子(翻訳)マガジンハウス(出版社)2022/10/6(発売日)352P(ページ数)
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本の目次(詳細版)

この本の目次(詳細版)を引用して紹介します。

  • はじめに 世界的リーダーたちに真の起業家精神を学べ
  • 第1章 「ノー」から学べ
    • 148回の「ノー」をバネに
    • 的外れの「ノー」
    • ホフマンの分析|既成概念にとらわれない発想からビックアイデアは生まれる
    • 煮えきらない「ノー」
    • ホフマンの分析|両極端な反応と「煮えきらないノー」を探せ
    • 真実を探す「ノー」
    • 正直な「ノー」
    • ホフマンの分析|「イエス」と言うべきときに「ノー」と言ってしまった経験
    • 余計なお節介の「ノー」
    • ホフマンの理論|「ノー」をとことん活用する
  • 第2章 最初から拡大を狙わない
    • スタート地点で何をすべきか
    • なぜ100が100万に勝てるのか
    • 画期的なブレインストームの秘訣
    • ホフマンの分析|熱烈なフィードバックはスケールの基礎となる
    • 初心忘るべからず
    • 「手を動かす」ことの大切さ
    • 味方につけるべきは誰か?
    • ホフマンの分析|信頼をより早く得るための3つの方法
    • ホフマンの理論|最初から拡大を狙わない
  • 第3章 ビックアイデアをつかみとる
    • まずは正しいマインドセットを
    • ホフマンの分析|”電撃的なひらめき”は神話にすぎない
    • 決め手となるパズルのピースとは?
    • ホフマンの分析|「ダメなところはどこか?」と問いかける
    • 煩わしさから生まれたアイデア
    • ホフマンの分析|パターンを見抜き、ビジネスをつくり上げる
    • 苦境から生まれたアイデア
    • 追求すべきバットアイデア
    • ホフマンの分析|アイデアのほうが自分を見つけてくれる場所へ
    • ホフマンの理論|ビックアイデアをつかみとるために
  • 第4章 企業文化を構築する
    • 創業者によくある間違い
    • 「イージーな対策」が「イージーな文化」につながる
    • ホフマンの分析|文化とは常に構築中のものである
    • オフィス空間をデザインする
    • 絶妙なブレンドを追求する
    • 「組織を乱す人物」を見分ける質問
    • ホフマンの分析|創業スタッフは「企業文化の共同創設者」である
    • 組織の視野を広げる
    • ホフマンの理論|前向きで柔軟な文化を構築する
  • 第5章 成長は時に早く、時にゆっくり
    • スピードが重要なとき
    • 競争から抜け出すこと
    • 決断、決断、決断!
    • 一夜にして成功を収めた、その翌朝
    • ホフマンの分析|ビジネスを成長させる分配方式とは
    • 火消しに奔走するなかれ
    • ホフマンの分析|どの火事なら放置してもよいのか?
    • 会社の基本理念を守り抜く
    • ホフマンの分析|必要以上の資金調達をーーだだし誰からでも良いわけではない
    • ホフマンの理論|成長を止めるな
  • 第6章 これまでの知識を捨て去る
    • 「経験」を捨て去る覚悟があるか
    • 危険をかえりみず未知の領域に踏み込む
    • 遠大なビジョンのなかで
    • ホフマンの分析|「知ったかぶり」ではなく「好学の士」であれ
    • 実験と学びの相乗効果
    • ホフマンの分析|不完全を恐れず、フィードバック・ループをつくる
    • 足りない部分は読書で補強する
    • ホフマンの理論|ビジネスを学び続けるために
  • 第7章 ユーザーの行動に目を向けよ
    • 「ユーザーの意見」は常に正しいか?
    • 当てにならない未来予想
    • 口うるさい顧客のフォロワーであれ
    • ホフマンの分析|顧客を偵察要員と見なし、その行動から手がかりを得よ
    • 顧客が何をして、何をしないかを観察する
    • ホフマンの分析|重大な方向転換のときに群集心理をいかに避けるか
    • データと共感を結合せよ
    • 顧客に傾聴すべきとき
    • ホフマンの分析|スケールのためにユーザーを無視すべきとき
    • ホフマンの理論|顧客について学び、顧客から学べ
  • 第8章 路線変更を恐れない
    • 次にすべきことは何か
    • 再び信頼できる仲間と
    • ホフマンの分析|ピボットするときはチーム決定のように思わせよ
    • より良い道を求めよ
    • ホフマンの分析|いつピボットすべきかそのタイミングをしる方法
    • 危機のさなかにピボットすること
    • ホフマンの分析|危機下では、まず人間的であれ
    • ホフマンの理論|「プランB」を200%活用する
  • 第9章 変化に対応しつつリードせよ
    • 求められるリーダーシップとは?
    • ステージごとに新しい挑戦を
    • ホフマンの分析|一定の声を維持し、コミュニケーションを強化せよ
    • どんな声も真摯に受け止める
    • ホフマンの分析|建設的な論争を効果的な戦略に活用せよ
    • 優秀な人材を育成する
    • ホフマンの分析|なぜ、海賊さえも進化する必要があるのか
    • ホフマンの理論|スタートアップにおけるリーダーとは何か
  • 第10章 社会的なミッションを打ち出す
    • 従業員ファーストを貫く
    • 「いいことをする」と「いい経営をする」は相反しない
    • ホフマンの分析|何を会社のミッションとするのか
    • 善意に基づくミッション
    • ホフマンの分析|ミッションを共有し、クラウドのパワーを生かせ
    • 追加機能としての社会貢献
    • ホフマンの理論|「社会にとっていいこと」をビジネスにする

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