「何か新しいことを考えなければ」「どうすれば新しいアイデアが浮かぶのだろう」と悩んでいませんか?
新しいことを考えようとしても、現在の延長でしか考えられないことはありませんか?
この本では、妄想によって新しいことを生み出すための思考の方法や発想のコツなどを、著者の経験を踏まえながら具体的に紹介しています。
研究職の人に限らず、ビジネス・パーソンや学生など、あらゆる分野でイノベーションや変革にたずさわっている人に一読をおすすめします。
本の概要、注目点と感想、口コミ・書評記事、参考文献、を紹介します。
本の概要
書籍情報
著者紹介
暦本純一(れきもと・じゅんいち)
東京大学大学院情報学環教授、ソニーコンピュータサイエンス研究所フェロー・副所長、ソニーCSL京都ディレクター。
ヒューマンコンピュータインタラクション、特に実世界指向インタフェース、拡張現実感、テクノロジーによる人間の拡張に興味を持つ。
著者が伝えたいこと
著者はこの本を通じて伝えたいことを以下のように述べています。
「アイデアの源泉は、いつも『自分』だ。誰に頼まれたわけでもなく、むりやり絞り出したわけでもなく、自分の中から勝手に生まれてくるのだ。そう、それは『妄想』である。妄想から始まるのだ。」
「妄想によって『新しいことを生み出す』には、思考のフレームを意識して外したり、新しいアイデアを形にし、伝えたりするためのちょっとしたコツが必要だ。頭の中の妄想を、手で思考するのだ。」
「この本では、そういった思考の方法や発想のコツなどを、自分の経験を踏まえながら具体的に紹介する。」
本の目次
本の目次を引用して紹介します。
- はじめに
- 序章 妄想とは何か
- 第1章 妄想から始まる
- 第2章 言語化は最強の思考ツールである
- 第3章 アイデアは「既知×既知」
- 第4章 試行錯誤は神との対話
- 第5章 ピボットが生む意外性
- 第6章 「人間拡張」という妄想
- 終章 イノベーションの源泉を枯らさない社会へ
- あとがき
もっとくわしく見たい場合は、本の目次(詳細版)が記事の最後にあります。
注目点と感想
この本を読んで注目した点と感想を紹介します。
妄想を言語化してやりたいことの仮説を立てる
1つ目に注目した点は「第2章 言語化は最強の思考ツールである」に書かれている「妄想を言語化してやりたいことの仮説を立てる」です。
著者は「自分が抱いた妄想をどうやって形にしていくのか」について、大事にしている思考ツールは「言語化」であると述べています。
著者は、研究者が自分たちの研究対象のことを「クレーム」という言葉で表していて、「私はこの研究ではここを主張します」という言明のことをクレームという、と述べています。
クレームの考え方や書き方について、要点を引用して紹介します。
- 自分にも他者にもわかるように整理したのがクレーム(やりたいこと)
- クレームは一行で書き切るのがベスト
- モヤモヤの中からクレームとして切り出せるのは何だろうかと考えることそのものがアイデアを洗練させていく
- 同じモヤモヤに対して複数のクレームを作ってみて、比較するのもいい
- どうにもモノにならないと思ったら、切り替えて別のことを考えてもいい
- 別のことを考えているうちに、そのアイデアが活きるクレームを思いつくこともある
- クレームは、あくまでも「仮説」でしかない
- 仮説は最終的な答えではなく、検証を受けるために出すもの
- クレームは、検証ができる、どうしたら決着がつくかが想定できるような形で書かなければいけない
そして著者は良いクレームの例を挙げています。
良いクレームとは1行で言い切れて、仮説として成立するもの
例1: 「あと65日で死ぬ男」黒澤明監督『生きる』のクレーム
例2: 「DNAは二重螺旋構造をしている」生物学者のクレーム
暦本純一(2021).妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方 祥伝社 第2章言語化は最強の思考ツールである
【感想】このクレームの考え方や書き方は、研究テーマの言語化に限らず、研究者ではなくても、人生の目標や自分がやりたいこと、ビジネスのアイデア、社会の課題解決など、自分にも他者にもわかるように言語化する方法として、誰しも試行錯誤しながらでも身につけておくと良いと感じた。
妄想の幅を広げるためにインプットを増やす
2つ目に注目した点は「第3章アイデアは『既知X既知』」に書かれている「妄想の幅を広げるためにインプットを増やす」です。
著者は「人が思いつかないアイデアを生むためには、どうしたらいいのだろう」について、「オリジナリティのある面白いアイデアは、どこかに『その人らしさ』が垣間見えるものだ。」と述べています。
妄想やアイデアを考える方法について、要点を引用して紹介します。
- アイデアの源である妄想は、自分の「やりたいこと」
- 新しいアイデアは「既知」のことがらの組み合わせが新しいから、「未知」のアイデアになる
- 新しいアイデアだと、みんなが「こういうものだ」と思っていた常識が、あるアイデアの出現によって突如としてひっくり返る
- 集団で「未知」の情報をインプットし合って「既知」の引き出しを広げておけば、考えの幅は広がる
- 外部の人たちからの刺激も必要。「解決策X課題」も「既知X既知」の一種で、両方が揃えば「未知の組み合わせ」になる
- 専門分野の外にもアンテナを広げて、さまざまな世界の「未知」を自分の「既知」としてインプットする
- 「未知」への感度を磨いておき、それらを組み合わせて、妄想を広げる
アイデアは掛け合わせ
「好き」X「好き」X「好き」
「既知」X「誰かの既知」
暦本純一(2021).妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方 祥伝社 第3章アイデアは「既知X既知」
【感想】この思考法を実践するためには、幅広いジャンルの本を読んだり、いろいろなプロフィールのTwitterアカウントをフォローしたり、行ったことがない場所を訪れて知らない人と会話したりといったことを、普段から少しずつでも意識して行動していくことが重要だなと感じた。
【感想】注目点にあげた思考法以外にも、アップル社がiPhoneで「マルチタッチ」を商品化する前に著者が研究していた「スマートスキン」のきっかけから、研究の途中でピボットしたことや特許侵害騒動の逸話も書かれていて、初めて知ったことだったのでとても興味深く読みました。
口コミ・書評記事
Twitter口コミと書評記事を紹介します。
口コミ
書評記事
『妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方』(祥伝社) - 著者:暦本 純一 - 暦本 純一による前書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
妄想=「やりたいこと」を実現できる人の思考整理の進め方 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
【書評】妄想する頭 思考する手(暦本純一) 【想像を超えるアイデアの作り方】|あ、いいね!
参考文献
この本で引用されている本を紹介します。
好奇心が未来をつくる ソニーCSL研究員が妄想する人類のこれから:ソニーコンピュータサイエンス研究所(著)
「あとがき」の中で著者は、「本書の執筆についてお声がけいただけたのは、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)のメンバーで執筆した『好奇心が未来をつくる─ソニーCSL研究員が妄想する人類のこれから』(祥伝社)の私の章に興味を持っていただいたのがきっかけだったと記憶している。」と引用しています。
イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」:安宅 和人(著)
「第2章 言語化は最強の思考ツールである」の「『やりたいこと=クレーム』は一行で言い切る」についての注釈で、著者は論文や特許を書く機会が多いので「クレーム」と呼んでいるが、ビジネスやコンサルティングの領域では「イシュー」と呼ばれる場合があり、本質的には同じであると述べています。
独創はひらめかない―「素人発想、玄人実行」の法則:金出 武雄(著)
「第1章 妄想から始まる」の「素人のように発想し、玄人のように実行する」の中で、著者が好きな言葉のひとつとして、ロボット工学やコンピュータビジョンの世界的な権威として知られるカーネギーメロン大学の金出武雄さんの言葉(そのままタイトルになっている)を引用しています。
「非まじめ」のすすめ:森 政弘(著)
「序章 妄想とは何か」の「真面目と非真面目」の中で、著者は「ちょうどそのウォークマンが誕生したころ、『非真面目』という言葉が流行ったことがある。ロボット工学の先駆的な研究者として知られる森政弘さん(東京工業大学名誉教授)の著書『「非まじめ」のすすめ』から生まれた言葉だ。ウォークマンは、まさに『非真面目』なイノベーションだったような気がする。」と引用しています。
まとめ
本の概要、注目点と感想、口コミ・書評記事、参考文献、を紹介しました。
この本では、妄想によって新しいことを生み出すための思考の方法や発想のコツなどを、著者の経験を踏まえながら具体的に紹介しています。
研究職の人に限らず、ビジネス・パーソンや学生など、あらゆる分野でイノベーションや変革にたずさわっている人に一読をおすすめします。
本の目次(詳細版)
この本の目次をくわしく引用して紹介します。
- はじめに
- 序章 妄想とは何か
- スマホ登場を予測せずに開発したスマートスキン
- 真面目と非真面目
- 想像と妄想
- 第1章 妄想から始まる
- 笑わないと開かない冷蔵庫
- 新しくても面白いものは「ふつう」ではない
- アポロ計画を実現させたヤバい妄想
- 妄想の先に何があるのか
- 高名で年配の科学者ができないと言うときはたいてい間違い
- 素人のように発想し、玄人のように実行する
- 「天使度」と「悪魔度」のバランス
- 第2章 言語化は最強の思考ツールである
- モヤモヤした妄想は「言語化」で整理する
- 「やりたいこと=クレーム」は一行で言い切る
- クレームは「答え」ではなく「仮説」で
- 「やりたいジャンル」はクレームではない
- 今やりたいことは、今やる
- 発明は必要の母
- 始める前にあらすじを書く
- 決着をつけるための「最短パス」を考える
- 早く決着がつけられれば、多数のアイデアを試せる
- 第3章 アイデアは「既知×既知」
- 「好きなもの」が三つあれば妄想の幅が広がる
- ブレストはワークしない
- 多数決ではジャッジできない
- アイデアには孤独なプロセスが不可欠
- インプットを増やす暦本研の会議
- 日本代表の卓球選手からもらったVRのヒント
- 他者との出会いで「課題と解決策」のマッチング
- 「未知」への好奇心が天使度を鍛える
- 第4章 試行錯誤は神との対話
- 一回やってみて失敗するくらいがいい
- 失敗は課題の構造を明らかにしてくれる
- 他人のダメ出しから貴重なアドバイスを得る
- 見る前に跳べーー「GAN」考案者の1パーセントの汗
- 「眼高手低」の二つの意味
- 手を動かし続けられるのも才能
- 試行錯誤とは「神との対話」である
- 自分の「やりたいこと」とは、自分の手が動くこと
- 第5章 ピボットが生む意外性
- 自分のアイデアはかわいく見えるという認知バイアス
- 「コンコルドの誤謬」に学ぶ勇気ある撤退
- 環境が整わない場合は、いったん眠らせておく
- スマートスキンの研究は「通信」から始まった
- 論文〆切の三ヶ月前の方向転換
- ピボットで天使度を上げる
- ジョブズとの特許侵害騒動
- 実験中の不思議な現象から生まれた「Traxion」
- プリンターの技術から生まれた光学マウス
- トレードオフのバランスを崩す
- 医学の知見からトレードオフをした広視野角HMD
- ニューラルネットを使った「エクストビジョン」のアイデア
- 「そもそもの目的」に立ち返る
- イナーシャ(慣性)が無駄な「こだわり」を生む
- 第6章 「人間拡張」という妄想
- 技術が人間を拡張させる
- SF作家とエンジニアの妄想は一体化している
- 大きな影響を受けたSFの数々
- 「超能力」をテクノロジーで実現する
- アラン・ケイの論文を読んで「マウス」を想像
- 人間拡張の妄想は歌舞伎座のイヤホンガイドから始まった
- 人間に「ジャックイン」するインターフェース
- 研究開発には、妄想を現実的な形にするフェーズがある
- 世界初のARゲーム
- 喉の動きから言葉を推測する「サイレントボイス」
- ソフトウェアをダウンロードして使う人工内耳
- 入試ではAIを含めた「矯正学力」を
- 「時差」を解消したいという妄想
- 終章 イノベーションの源泉を枯らさない社会へ
- 妄想で「キョトン」とする空気をつくれるか?
- 「光速エスパー」から妄想したテレプレゼンス・システム
- 哲学的な問題まで生んだ「人間ウーバー」
- 「選択と集中」だけでは未来に対応できない
- ディープラーニングというブレイクスルーは誰が起こしたか
- テクノロジーは使われて改良される
- ルールを絶対視して妄想を潰す日本社会
- 日本は「妄想大国」だったはず
- 妄想を抱いていない人はいない
- あとがき