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【注目点・感想】ストーリーが世界を滅ぼすー物語があなたの脳を操作する:ジョナサン・ゴットシャル(著)月谷真紀(翻訳)

2023年5月19日

本「ストーリーが世界を滅ぼす」アイキャッチ画像

ストーリーテリングを人類に「必要不可欠な毒」だと考え、古くから人類にとって恵みであり災いでもあり、破滅も救済ももたらす「物語のパラドックス」を取り上げ、「どうすれば物語から世界を救えるか」を考察していく「物語の科学」を解説している本です。

物語(ストーリー、ストーリーテリング)、共感、多様性、歴史、メディア、ジャーナリズム、コミュニケーションなどに興味ある人に一読をおすすめします。

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介します。

本の概要

書籍情報

日本語版

ジョナサン・ゴットシャル(著)月谷 真紀(翻訳)東洋経済新報社(出版社)2022/7/29(発売日)320P(ページ数)
タイトルストーリーが世界を滅ぼすー物語があなたの脳を操作する
著者ジョナサン・ゴットシャル
翻訳月谷 真紀
出版社東洋経済新報社
発売日2022/7/29
単行本ページ数320

原著(英語版)

Jonathan Gottschall(著)Basic Books(出版社)2021/11/23(発売日)272P(ページ数)

著者紹介

Jonathan Gottschall(ジョナサン・ゴットシャル)

ワシントン&ジェファーソン大学英語学科特別研究員。

著者が伝えたいこと

著者はこの本を通じて伝えたいことを以下のように述べています。

私はストーリーテリングを人類に「必要不可欠な毒」だと考えている。必要不可欠な毒とは、人間が生きるために必須だが、死にもつながる物質をいう。例えば酸素だ。

本書が取り上げるのは物語パラドックスである。物語は古くから人類にとって恵みであり、災いでもあった。物語は私たちの病であり、癒しでもある。破滅も救済も物語がもたらす。

私たちが互いを悪魔に仕立て上げるのは無知や悪意のせいではなく、善人が悪と戦う単純化された物語を倦(あぐ)むことなくしゃぶり続ける、生まれながらに誇大妄想的で勧善懲悪的なナラティブ心理のせいだ。

本の目次

本の目次を引用して紹介します。

  • 序章 物語の語り手を絶対に信用するな。だが私たちは信用してしまう
  • 第1章 「ストーリーテラーが世界を支配する」
  • 第2章 ストーリーテリングという闇の芸術
  • 第3章 ストーリーランド大戦
  • 第4章 「ニュース」などない。あるのは「ドラマ」のみである
  • 第5章 悪魔は「他者」ではない。悪魔は「私たち」だ
  • 第6章 「現実」対「虚構」
  • 終章 私たちを分断する物語の中で生き抜く

もっとくわしく見たい場合は記事の最後に、本の目次(詳細版)があります。

注目点

この本はどのようなことが書かれているのか?読んでみて注目した点を3つ紹介します。

物語の語り手(ストーリーテラー)

1つ目に注目した点は「第1章 『ストーリーテラーが世界を支配する』」に書かれている「物語の語り手(ストーリーテラー)」です。

著者は、1947年にナット・ファーブマンが、カラハリ砂漠の狩猟採取民である、コイサン族の長老が物語を語る様子を撮った写真に、『語り部(ストーリーテラー)』というタイトルがつけられていることをあげて、以下のように述べています。

人間は物語を浴びながら生きている。私たちは日がな一日、物語の中で暮らしている。夜に見る夢も物語だ。

私たちは物語を通してコミュニケーションを行い、物語から学習する。

経験を編集した自分なりのライフストーリーがなければ、人生は脈絡がなくぼやけたものになってしまうだろう。

私たちは物語を語る動物なのだ。

でも、なぜなのだろう?

心は物語に適するように進化した。だから物語によって形成されうる。

宗教や道徳の規範から狩りや結婚に関する具体的なアドバイスまで、あらゆる情報を保存し伝承する手段として、物語は生まれた。

ジョナサン・ゴットシャル. ストーリーが世界を滅ぼす物語があなたの脳を操作する (Japanese Edition) (p.41). Kindle 版.

私たちの心の機能を奪う「陰謀物語」

2つ目に注目した点は「第3章 ストーリーランド大戦」に書かれている「私たちの心の機能を奪う『陰謀物語』」です。

著者は、アメリカ人の半数近くがエリア51(宇宙人とUFOを収容しているとされる軍事施設)をめぐる陰謀論を信じている理由を説明しています。

まず著者は、「陰謀論」という言葉自体が誤った名称であり、このような誇大妄想的なファンタジーは「陰謀物語」と呼ぶべきたと述べています。

陰謀物語が流行る最も単純な理由は、気持ちをわくわくさせる虚構のスリラーだからであり、それに対して、陰謀物語の嘘を暴く検証記事のほとんどは公共放送のまあ悪くないドキュメンタリーにしかならないだろう、と著者は述べています。

そして著者は、月面着陸のような真実の物語は受け手に称賛以外何も求めないのに対して、陰謀物語の特徴を以下のように述べています。

この陰謀論をはじめ世の中で流行った陰謀論は、突き詰めればすべて悪の存在を主張している。

陰謀物語は道徳上のホラーストーリーなのだ。そしてほとんどが現在形で書かれている

月面着陸やJFK暗殺の陰謀が起きたのははるか昔かもしれないが、それらを画策した闇の勢力は今も壮大な悪に関わっている。

そして、すべての陰謀物語が、信者に最大の道徳的義務としてなんらかの行動を起こせと呼びかけている

ジョナサン・ゴットシャル. ストーリーが世界を滅ぼす物語があなたの脳を操作する (Japanese Edition) (p.124). Kindle 版.

歴史的ナラティブをめぐる権力闘争

3つ目に注目した点は「第5章 悪魔は『他者』ではない。悪魔は『私たち』だ」に書かれている「歴史的ナラティブをめぐる権力闘争」です。

著者は、「ストーリーテリングの重要ジャンルである歴史は、物語全般に見られる構造パターンを有益な効果も有害な効果も含めすべて受け継いでいる。」と述べています。

そして、「最も成功し、ベストセラーランキング入りし、私たちの社会的記憶のスペース争いに勝利するのは、無秩序な過去に普遍的な物語の文法、つまり悪人との生死をかけた戦いに巻き込まれた善人の図を当てはめた歴史だ。」と説明しています。

著者は、歴史的ナラティブについて以下のように述べています。

歴史的ナラティブは過去という無防備な死体に現在の想像を押し付けたものと定義できる、と私は提案したい。

歴史とは、現在のニーズに合うきれいに整えた物語を創るために、御しにくい過去を成形し編集し改竄することだ。

したがって歴史とはおそらく「彼ら」の肖像である以上に「私たち」──私たちの懸念、強迫観念、不満、権力闘争──の自画像なのだ。

ジョナサン・ゴットシャル. ストーリーが世界を滅ぼす物語があなたの脳を操作する (Japanese Edition) (p.190). Kindle 版.

感想・口コミ・書評記事

感想

この本は、Amazonで「おすすめ」に表示されて、さらに「Kindle本ポイントキャンペーン」でポイントが50%還元だったので購入して読みました。

購入したあと実際に読むまでに時間が経ちましたが、いざ序章を読みはじめてからはとても面白い内容の連続で、最後まで引き込まれて読み終えました。

序章の中で、人は毎日、朝から晩まで、自分や他人が発した言葉の中で過ごしており、対面で人と話す以外にも、テレビで他人の話を聞いたり、本を読んだり、ポッドキャストを聞いたり、独り言だったり、夢をみたりしている、という話を読んで、なるほどその通りだと驚きました。(自分や他人が発した言葉以外で過ごしている時間が思い浮かびませんでした)

また読み終えて序章を振り返ると、「私たちが一生の間たえまなく行うコミュニケーションには、何より重要な主目的がある。それは、他人の心に影響を与えることーー考え方、感じ方、ひいては行動を自分になびかせることだ。」という言葉が印象的で、自分が見るもの聞くものの選択に注意を払うことの重要性を感じました。

この本では、「物語」の題材として、世界中の歴史から、映画、国家、戦争、宗教、民主主義、テクノロジーまで、様々な出来事を取り上げ、研究結果も引用しながら書かれているのが、私にとっては最初から最後まで飽きずに興味深く読むことができた理由だと、振り返ってみて思いました。

過去・現在・未来について発信している人・メディアに対する考え方や接し方が変わるきっかけになるような、とても興味深い本です。

ジョナサン・ゴットシャル(著)月谷 真紀(翻訳)東洋経済新報社(出版社)2022/7/29(発売日)320P(ページ数)

口コミ

書評記事

<書評>『ストーリーが世界を滅ぼす 物語があなたの脳を操作する』ジョナサン・ゴットシャル 著:東京新聞 TOKYO Web

書評 「ストーリーが世界を滅ぼす」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

『ストーリーが世界を滅ぼす』書評 - 内田樹の研究室

参考文献

この本の参考文献には数多くの文献が記載されています。

その中から、私が読んでみたいと思った本を紹介します。

反共感論―社会はいかに判断を誤るか:ポール・ブルーム(著)

ポール・ブルーム(著)高橋 洋(翻訳)白揚社(出版社)2018/2/2(発売日)318P(ページ数)

ビジネスと人を動かす 驚異のストーリープレゼン:カーマイン・ガロ(著)

カーマイン・ガロ(著)井口 耕二(翻訳)日経BP(出版社)2016/11/17(発売日)428P(ページ数)

事実はなぜ人の意見を変えられないのか:ターリ・シャーロット(著)

ターリ・シャーロット(著)上原 直子(翻訳)白揚社(出版社)2019/8/30(発売日)280P(ページ数)

まとめ

本の概要注目点感想・口コミ・書評記事参考文献、を紹介しました。

ストーリーテリングを人類に「必要不可欠な毒」だと考え、古くから人類にとって恵みであり災いでもあり、破滅も救済ももたらす「物語のパラドックス」を取り上げ、「どうすれば物語から世界を救えるか」を考察していく「物語の科学」を解説している本です。

物語(ストーリー、ストーリーテリング)、共感、多様性、歴史、メディア、ジャーナリズム、コミュニケーションなどに興味ある人に一読をおすすめします。

ジョナサン・ゴットシャル(著)月谷 真紀(翻訳)東洋経済新報社(出版社)2022/7/29(発売日)320P(ページ数)

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本の目次(詳細版)

この本の目次(詳細版)を引用して紹介します。

  • 序章 物語の語り手を絶対に信用するな。だが私たちは信用してしまう
    • なびかせる:「物語」という他人の心に影響を与える唯一にして最強の方法
    • 悪夢のようなLARPファンタジー
    • 必要不可欠な毒
  • 第1章 「ストーリーテラーが世界を支配する」
    • ストーリーランドでの人生
    • あなたは主人公の少女だ
    • 物語の語り手(ストーリーテラー)
    • メディアの等式
    • ゲイ、黒人、イスラム教徒のバーチャルな友達
    • 大いなる饒舌
  • 第2章 ストーリーテリングという闇の芸術
    • 「物語ほど罪深いものはない」
    • 隠れた説得
    • 史上最低の映画と誰もが認める理由
    • 「語らず、示せ」の科学
    • 「ひそかなプロパガンディスト」
    • ネットフリックスが取り組むストーリーテリングの「永遠の」問題
    • 新しい戦争プロパガンダ「ストーリーネット」
    • デジタル版「新パノプティコン」
    • ロシアによるナラティブの電撃戦
    • プラトンは2400年前に見抜いていた
  • 第3章 ストーリーランド大戦
    • 芸術は感染症である
    • ストーリーテラー王の王
    • 私たちの心の機能を奪う「陰謀物語」
    • アメリカで600万人が信じる「地球平面説」
    • 「陰謀物語」という疑似宗教の力と危険性
    • 「物語としてよくできているかどうか」
    • ネガティビティ・バイアス
  • 第4章 「ニュース」などない。あるのは「ドラマ」のみである
    • ハッピーエンドの苦しみ
    • 対立や騒動を扱わなければ商売にならない
    • お姫様とトラの終わりなき戦争
    • ご都合主義の装置に乗って現れる神
    • ほとんどの物語が「善人と悪人」の力関係を描く理由
    • 道徳主義的な物語とゴシップへの依存症
    • 物語の「道徳」という強い重力
  • 第5章 悪魔は「他者」ではない。悪魔は「私たち」だ
    • 強い憎しみ、強い愛
    • 物語が助長する集団内の有効と集団外への敵意
    • 歴史的ナラティブをめぐる権力闘争
    • 高貴な嘘と下賤な真実
    • ナラティブの戦争
    • 報復ファンタジー
    • ファシスト版『トゥルーマン・ショー』
  • 第6章 「現実」対「虚構」
    • あなたがナラティブを所有しているのではない。ナラティブがあなたを所有している
    • 不自由意思
    • ストーリーバース:個人仕様版の現実
    • 啓蒙主義から閉蒙主義へ
    • アメリカ初の「虚構」の大統領
    • ナラティブを操る不安定な特殊能力者
    • 「現実」の終わり
    • 学術界とジャーナリズムの「弱点」と「虎の尾」
    • 民主主義の終焉(デモカリプス)
    • プラトンの『国家』を実現する中国
  • 終章 私たちを分断する物語の中で生き抜く
    • 物語から毒を抜き出す不可能性
    • 汝自身を知れ
    • プラトンの警告
  • 謝辞
  • 参考文献

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